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政界や財界を始めとする日本社会の一部に憲法改定を要求する動きがみられる今日,日本国憲法の命運について,見通しはかなり不透明である.国家の最高法規の命運が不透明であることは,将来の日本が国としてどのような形姿をとり,内政や外交においてどのような方向性をとるのかを予測することもきわめて困難であることを意味している.……現状では政権交代後でも国会議員の約半数が憲法前文と第九条の改定を支持していると思われ,また四割を超える国内世論がそれらの改定に賛意を示している.現代日本の一般民衆の意識における平和主義の後退は,一面,戦争世代の「体験的平和主義」が,省察と思想上の熟成を経た「経験的平和主義」となって次世代以降にうまく継承されなかったという事実を突きつけている.……
20世紀の中葉以降,世界でわれわれが経験してきた民主主義の苦悩は,一面,民主主義が実践と理論の双方において,国家の軍事主権パラダイムから自らを離脱させることができなかった点にある.いわゆる「民主主義国家」も,帝国化し覇権主義路線を進み始める場合には,その軍事主義によって国内の民主主義を破壊せずにはおかない.古代アテナイと現代アメリカはその典型的な事例である.民主主義と平和主義との緊密な結びつきの要請,ここにこそ,将来世界の展望にむけての日本の平和憲法の持続的意義があるといえるであろう.日本国憲法は,21世紀初頭の現在,戦争と内戦,貧困と飢餓に悩まされ続ける現代世界にあって,依然として未完の課題ないし未完の革命としての歴史的意義をいささかも失っていない.『「未完の革命」としての平和憲法』という本書のタイトルは,平和憲法の潜在的可能性が戦後日本の国政や外交において十全に実現されてこなかったという「反省」を意味すると同時に,将来にむけてその潜在力が国政や外交において積極的に具現化されて開化してほしいとの「希望」をこめて付けられた.
――「あとがき」より |
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| 千葉 眞(ちば しん) |
1949年,宮城県に生まれる.早稲田大学大学院修士課程(政治学)をへてプリンストン神学大学で博士号(Ph.D.,政治倫理学)取得.現在,国際基督教大学教養学部教授.専門は西欧政治思想史・政治理論.
著書:『現代プロテスタンティズムの政治思想』(1988年,新教出版社),『ラディカル・デモクラシーの地平』(1995年,新評論),『アーレントと現代』(1996年,岩波書店),『デモクラシー』(2000年,岩波書店),『歴史のなかの政教分離』(共編著,2006年,彩流社),『平和の政治思想史』(編著,2009年,おうふう)ほか.
訳書:H・アーレント『アウグスティヌスの愛の概念』(2002年,みすず書房),W・キムリッカ『新版 現代政治理論』(共訳,2005年,日本経済評論社),S・ウォリン『アメリカ憲法の呪縛』(共訳,2006年,みすず書房)ほか. |
| はじめに |
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| 第 I 部 立憲主義の思想史的展望 |
| 第一章 立憲主義の意味 |
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1 「憲法」の二重の意味――憲法典と国家の基本構造 |
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2 中世立憲主義の一断面――支配権力の制限 |
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3 モンテスキューの貢献 |
| 第二章 「自由の構成」としてのアメリカ憲法制定 |
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1 アメリカ革命と連邦憲法の制定 |
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2 立憲主義と民主主義との葛藤 |
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3 人民の憲法制定権力 |
| 第三章 立憲主義の現代的位相 |
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1 20世紀における立憲的平和主義の登場 |
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2 日本国憲法とその立憲思想史的意義 |
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3 立憲主義と多文化主義 |
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〈付論〉立憲的平和主義をめぐって――長谷部恭男との対論 |
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| 第II部 平和憲法の歴史的意味 |
| 第四章 「八月革命」説の再考 |
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1 宮沢俊義の「八月革命」説 |
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2 憲法革命二段階説にむけて |
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3 日本国憲法モデルの特異性 |
| 第五章 公共哲学として見た平和憲法 |
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1 リップマンと公共哲学 |
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2 戦後日本――緊張のなかの三つの公共哲学 |
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3 公共哲学としての平和憲法 |
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4 平和憲法の持続的意義 |
| 第六章 憲法平和主義の理論的意味 |
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1 社会契約としての憲法制定行為 |
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2 現代世界に見られる四つの平和主義 |
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3 徹底的平和主義の諸類型 |
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4 憲法平和主義とその非戦型安全保障構想 |
| 第七章 平和的生存権と人間の安全保障の再考 |
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1 日本国憲法前文の平和的生存権 |
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2 平和的生存権の射程 |
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3 人間の安全保障とその意義 |
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4 人間の安全保障と平和的生存権 |
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| 注 |
| あとがき |
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