麦主義者の小説論

私小説作家による初の小説論集.志賀・川端・太宰論,「私小説」論,三浦哲郎・古井由吉論等を精選.

麦主義者の小説論
著者 佐伯 一麦
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2015/02/24
ISBN 9784000249010
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 282頁
定価 2,530円
在庫 在庫僅少
ありふれた麦畑のように最も親しく見慣れた世界を,自身の生活を通して仔細に描く.そのことに徹するため「麦主義者を自称し,ペンネームに麦の字を使っている」という作家による,初めての小説論集.志賀・川端・太宰等,近代日本の作家の読み直し,「私小説」論,三浦哲郎・古井由吉論など現代日本の作家をめぐる文章を精選.

■編集部からのメッセージ

ありふれた麦畑のごとく,最も親しく見慣れた世界を,自らの生活を通して仔細に描く.そのことに徹するため「麦主義者を自称し,ペンネームに麦の字を使っている」という作家による,初めての小説論集.志賀・川端・太宰等,近代日本の作家の読み直し,「私小説」論,三浦哲郎・古井由吉など現代日本の作家をめぐる文章を精選しています.まさに作家にしか書けない小説論である本書にふれることで,小説を読むという経験が以前とは少し違ったものになることでしょう.
川端再読――序にかえて

1 麦主義者の出発
二十代の自画像
麦主義者から冬主義者へ
スタインベックの『朝めし』
生そのもののリズム――志賀直哉への目覚め
ホーリー・タイム――シモーヌ・ヴェイユ『労働と人生についての省察』を読む
タタキの触感――秋声文学との出会い

2 近代日本の作家たち
或る文章家への手紙
『南小泉村』と『土』
鶯と雲雀と――川端の『春琴抄』評
賢治の光る碍子
私の太宰
百閒の月
小説を書きたかった男,啄木
いい文章というものは――幸田文を読む…

3 私小説論
私小説の背理
私小説という概念――和田芳恵と『暗い流れ』
生命の樹を仰ぐ――野口冨士男の小説
「私」の内なるサイクル――坂上弘
反響の余韻――庄野潤三論

4 三浦哲郎――「私小説」と「私小説家」
身を起こす――『わくらば』
喪うことの豊穣――『おふくろの夜回り』
日常の手強さ――『肉体について』

5 古井由吉――ガイストの芸術
闇を聴く――『聖耳』
古井由吉氏との交点――『招魂としての表現』
命を拾う――『小説家の帰還』
ガイストの芸術――『野川』
未聞の心境小説――『魂の日』
die と dead の間で――『楽天記』
隠遁者への忠告

6 作家の姿形
遠景の人――色川武大『狂人日記』
永遠の現在――大庭みな子『楽しみの日々』
「大庭みな子」を感じるとき…
不屈の諦念――安岡章太郎『夕陽の河岸』
蝸牛の筆跡――八木義德氏遺作集を読む…
成就された円環――田久保英夫『生魄』
作家としての洲之内徹

7 レクイエム
コスモス忌にて――干刈あがたさん追悼
茶色の皮ジャン――中上健次
三浦哲郎さんの思い出
三浦哲郎さんを偲ぶ
スイシャンメン――水上勉さん追悼
裸形の巨樹――八木義德氏追悼
庄野潤三氏を悼む
ロンドンで偲ぶ庄野さん

あとがき
初出一覧

佐伯一麦(さえき かずみ)
1959年,宮城県仙台市に生まれる.仙台第一高校卒業後,週刊誌記者,電気工など様々な職業を経験した後,作家となる.
著書に,『渡良瀬』(岩波書店,伊藤整文学賞),『還れぬ家』(新潮社,毎日芸術賞),『光の闇』(扶桑社),『ノルゲ』(講談社,野間文芸賞),『鉄塔家族』(朝日文庫,大佛次郎賞),『ア・ルース・ボーイ』(新潮文庫,三島由紀夫賞),『日和山――佐伯一麦自選短篇集』,『ショート・サーキット――佐伯一麦初期作品集』(以上,講談社文芸文庫),『とりどりの円を描く』(日本経済新聞出版社),『石の肺』(新潮文庫),『震災と言葉』(岩波ブックレット)他多数.

書評情報

ミセス 2015年7月号
週刊読書人 2015年4月17日号
東京新聞(夕刊) 2015年4月2日
毎日新聞(夕刊) 2015年3月25日
読売新聞(朝刊) 2015年3月24日
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