ゆたかなる季語 こまやかな日本
生活に根ざした心にひびく172の季節のことばを掘り起こし,例句を掲げながら解説した季語集.
「もってのほか」という面白い名前の食用菊がある.山形県の特産で,10月下旬に収穫され,花弁を膾などにする.名前の由来については,格別おいしいので食べないのはもってのほかなど諸説があるという.このようなその土地の生活に根ざした心にひびく172の季節のことば(地貌季語)を,例句を掲げながら解説した季語集.
■著者からのメッセージ
ことばこそ文化である.「地貌季語」と称し日本各地の季語に関わることばを探索して十年あまり経つ.その第一弾として,二年前に出した『語りかける 季語 ゆるやかな日本』が好評で,読売文学賞(随筆・紀行賞)をもらった.本書はその第二弾である.
千葉県の安房地方に「逆さ寒」という地貌季語がある.この地方は寒中温暖ですごしやすいが,春先になって寒さがぶり返す.寒がひっくり返ったよう だというところに由来することばである.表現がなんとも楽しい.
沖縄には「風車祝」(カジマヤ―)と呼ばれる長寿祝いの行事がある.旧暦の九月七日に九十七歳になった年寄りに風車を持たせ,村をパレードして墓地 へ行く.そしてそこで死の儀式をおこなう.生まれ変わってもらうためだ.沖縄では死は生まれ変わるために用意された儀式である.
長野県の諏訪地方に「明けの海」といわれる現象がある.諏訪湖が結氷しないで御神渡(おみわた)りが見られないことを指していうのである.平成に入ってからでも今までに十四回あるという.暖冬傾向が著しいことがこんなことからも知られる.
「地貌季語」は地域のことばの良心のようなものだ.地域の人々の愛情に支えられて,辛うじて今日まで生きてきたのである.「逆さ寒」「風車祝」「明けの海」のように,いま採集し明らかにしておかないと消えてしまうことばが多い.
そのようなことばを前著に178語,本書に172語採集し,それを用いた俳句を紹介しながら,地貌季語の解説をした.次世代へのだいじな贈物として さらに探索をすすめていきたい.
■著者からのメッセージ
ことばこそ文化である.「地貌季語」と称し日本各地の季語に関わることばを探索して十年あまり経つ.その第一弾として,二年前に出した『語りかける 季語 ゆるやかな日本』が好評で,読売文学賞(随筆・紀行賞)をもらった.本書はその第二弾である.
千葉県の安房地方に「逆さ寒」という地貌季語がある.この地方は寒中温暖ですごしやすいが,春先になって寒さがぶり返す.寒がひっくり返ったよう だというところに由来することばである.表現がなんとも楽しい.
沖縄には「風車祝」(カジマヤ―)と呼ばれる長寿祝いの行事がある.旧暦の九月七日に九十七歳になった年寄りに風車を持たせ,村をパレードして墓地 へ行く.そしてそこで死の儀式をおこなう.生まれ変わってもらうためだ.沖縄では死は生まれ変わるために用意された儀式である.
長野県の諏訪地方に「明けの海」といわれる現象がある.諏訪湖が結氷しないで御神渡(おみわた)りが見られないことを指していうのである.平成に入ってからでも今までに十四回あるという.暖冬傾向が著しいことがこんなことからも知られる.
「地貌季語」は地域のことばの良心のようなものだ.地域の人々の愛情に支えられて,辛うじて今日まで生きてきたのである.「逆さ寒」「風車祝」「明けの海」のように,いま採集し明らかにしておかないと消えてしまうことばが多い.
そのようなことばを前著に178語,本書に172語採集し,それを用いた俳句を紹介しながら,地貌季語の解説をした.次世代へのだいじな贈物として さらに探索をすすめていきたい.
はじめに
新年
懸けの魚/福梅/蛙狩神事/八日堂縁日/ヂンガラ餅神事/粥釣/萬物作/福俵/切り
春
逆さ寒/みなみけ/凍渡/道乾く/水田/田芋植う/しもつかれ/木蜜とり/雪消し/土曳き/阿蘇野焼/芽出し肥/薹菜摘み/杉起す/杉種子蒔く/焼肥/馬づくらい/初堰/苗尺/苗箱/山椒漬/おもっつぁん/ことえぶし/藁馬曳き/ビキニデー/雛飯/田祭/清明祭/地獄入り/送り大師/凧揚祭/そめぐり/のれそれ/たまっけ/しおで/ぴいぴいな/ほんな/猫柳/椰子の花
夏
夏ぐれ/蠍座/筑波かみなり/縞枯/雨やしこ/ぼった蒔/朴葉飯/風穴/衣脱/おかんじゃけ/抹香作り/手柴/つけば/鰹節製す/泥鰌/霧笛/アイスクリームの日/御柱祭/里曳き/道寸祭/百万石祭/沖縄忌/初山/浜降り祭/絵金まつり/撞舞/石の戸/蟇祭/広島忌/だんぶり/泥負虫/恙虫/お夏だこ/みやこたなご/はまぼうの花/猪独活/河内一寸/白雲木の花/幽霊茸
秋
吹っかけ雨/磐梯初雪/稲滓火/藁買/津蟹汁/鯔待櫓/林檎の葉摘/稗島/鰯煮る/汐木拾う/五平/きりたんぽ/酒桶干す/鯉上げ/柿の葉人形/長崎忌/夜念仏/遠州大念仏/ぼんぼん/千人灯籠踊/榊祭/妖怪日/賢治祭/正造忌/風車祝/すすき念仏会/扱箸上げ/泣き相撲/十五夜祭奉納相撲/お櫃納/獅子神事/花馬祭/おくんち/帯祭/ケベス祭/蛤塚忌/庭仕舞/節祭/尾花子/福来魚/銀魚/鳴き兎/てんさぐの花/鈴虫草/もってのほか/狐花/おけさ柿
冬
霜荒れ/上崩雪/雪紐/氷橋/雪池/雪地獄/明けの海/朴葉陰干し/漬柿/鹿食免/茶筅竹干し/のくとばっこ/沖汁/双子編み/凍大根/大根配り/ばたばた茶/どぶ汁/がっくら漬/かいにょ/松明あかし/包丁式/掛魚祭/鬼/オデシコ/山の神/岳神楽/虫供養/だだみ/ごっこ/山叺/旦柑/枯虎杖/松藻/だるま菊/野沢菜/甘蔗の花/杉落葉
地貌季語分類表1・2
俳句索引
新年
懸けの魚/福梅/蛙狩神事/八日堂縁日/ヂンガラ餅神事/粥釣/萬物作/福俵/切り
春
逆さ寒/みなみけ/凍渡/道乾く/水田/田芋植う/しもつかれ/木蜜とり/雪消し/土曳き/阿蘇野焼/芽出し肥/薹菜摘み/杉起す/杉種子蒔く/焼肥/馬づくらい/初堰/苗尺/苗箱/山椒漬/おもっつぁん/ことえぶし/藁馬曳き/ビキニデー/雛飯/田祭/清明祭/地獄入り/送り大師/凧揚祭/そめぐり/のれそれ/たまっけ/しおで/ぴいぴいな/ほんな/猫柳/椰子の花
夏
夏ぐれ/蠍座/筑波かみなり/縞枯/雨やしこ/ぼった蒔/朴葉飯/風穴/衣脱/おかんじゃけ/抹香作り/手柴/つけば/鰹節製す/泥鰌/霧笛/アイスクリームの日/御柱祭/里曳き/道寸祭/百万石祭/沖縄忌/初山/浜降り祭/絵金まつり/撞舞/石の戸/蟇祭/広島忌/だんぶり/泥負虫/恙虫/お夏だこ/みやこたなご/はまぼうの花/猪独活/河内一寸/白雲木の花/幽霊茸
秋
吹っかけ雨/磐梯初雪/稲滓火/藁買/津蟹汁/鯔待櫓/林檎の葉摘/稗島/鰯煮る/汐木拾う/五平/きりたんぽ/酒桶干す/鯉上げ/柿の葉人形/長崎忌/夜念仏/遠州大念仏/ぼんぼん/千人灯籠踊/榊祭/妖怪日/賢治祭/正造忌/風車祝/すすき念仏会/扱箸上げ/泣き相撲/十五夜祭奉納相撲/お櫃納/獅子神事/花馬祭/おくんち/帯祭/ケベス祭/蛤塚忌/庭仕舞/節祭/尾花子/福来魚/銀魚/鳴き兎/てんさぐの花/鈴虫草/もってのほか/狐花/おけさ柿
冬
霜荒れ/上崩雪/雪紐/氷橋/雪池/雪地獄/明けの海/朴葉陰干し/漬柿/鹿食免/茶筅竹干し/のくとばっこ/沖汁/双子編み/凍大根/大根配り/ばたばた茶/どぶ汁/がっくら漬/かいにょ/松明あかし/包丁式/掛魚祭/鬼/オデシコ/山の神/岳神楽/虫供養/だだみ/ごっこ/山叺/旦柑/枯虎杖/松藻/だるま菊/野沢菜/甘蔗の花/杉落葉
地貌季語分類表1・2
俳句索引
宮坂静生(本名敏夫)
1937年長野県生まれ,俳人,信州大学名誉教授
月刊俳句誌「岳」主宰.季題・季語体系の見直しを提唱し,季語深耕,地貌季語発掘につとめている.第45回現代俳句協会賞.
著書に『子規秀句考』『正岡子規――死生観を見据えて』(以上,明治書院),『俳句原始感覚』『俳句からだ感覚』『俳句地貌論』(以上,本阿弥書店),『虚子以後』『虚子の小諸』『雪そして虚空へ』(以上,花神社),『語りかける季語 ゆるやかな日本』(岩波書店,第58回読売文学賞)など.
句集に『花神俳句館・宮坂静生』『鳥』『全景 宮坂静生』(以上,花神社),『山の牧』(本阿弥書店),『宙』(角川書店)など.
1937年長野県生まれ,俳人,信州大学名誉教授
月刊俳句誌「岳」主宰.季題・季語体系の見直しを提唱し,季語深耕,地貌季語発掘につとめている.第45回現代俳句協会賞.
著書に『子規秀句考』『正岡子規――死生観を見据えて』(以上,明治書院),『俳句原始感覚』『俳句からだ感覚』『俳句地貌論』(以上,本阿弥書店),『虚子以後』『虚子の小諸』『雪そして虚空へ』(以上,花神社),『語りかける季語 ゆるやかな日本』(岩波書店,第58回読売文学賞)など.
句集に『花神俳句館・宮坂静生』『鳥』『全景 宮坂静生』(以上,花神社),『山の牧』(本阿弥書店),『宙』(角川書店)など.
書評情報
週刊読書人 2008年9月12日号
俳句四季 2008年8月号
俳句あるふぁ 2008年8.9月号
信濃毎日新聞(朝刊) 2008年6月29日
毎日新聞(朝刊) 2008年6月22日
奈良新聞 2008年6月22日
産経新聞 2008年6月15日
読売新聞(夕刊) 2008年5月31日
毎日新聞(朝刊) 2008年5月18日
俳句四季 2008年8月号
俳句あるふぁ 2008年8.9月号
信濃毎日新聞(朝刊) 2008年6月29日
毎日新聞(朝刊) 2008年6月22日
奈良新聞 2008年6月22日
産経新聞 2008年6月15日
読売新聞(夕刊) 2008年5月31日
毎日新聞(朝刊) 2008年5月18日