ゆれる死刑

アメリカと日本

先進国で例外的に死刑の存続する日米で関係者に直接取材,死刑をめぐる各々の思いを丹念にたどる.

ゆれる死刑
著者 小倉 孝保
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2011/12/08
ISBN 9784000254144
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 254頁
在庫 品切れ
主要先進国で例外的に死刑を存続している二大国,アメリカと日本.廃止した州や死刑の方法を本人が選ぶ州もあるアメリカ.裁判員制度によって,誰もが死刑を宣告する立場となりうる日本.はたして死刑とはどういう刑罰なのか.日米両国で関係者に直接取材,死刑をめぐってゆれる,それぞれの思いを丹念にたどる.

■著者からのメッセージ

新聞社の特派員として米国で死刑問題を取材してきた私は2010年春に帰国後、このテーマで日本の関係者を訪ね歩きました。教誨師、被害者遺族、元死刑囚、法曹関係者。執行方法や情報公開の度合いなど日米の死刑制度には大きな差がありますが、被害者遺族や元死刑囚らの悩みや憤りには国籍や人種の差はないとの思いを強くしました。
 死刑を維持すべきか、廃止すべきか。死刑を巡っては日米両国だけでなく、世界各国が静かに揺れています。取材する私自身、逡巡しながらの取材でした。無実の罪を着せられた人たちを取材すると、「反対」の気持ちは強くなり、被害者遺族から苦しい胸のうちを聞くと、簡単に死刑反対を口にできなくなります。
 しかし、取材をすればするほど日本の死刑のあり方への疑問は深まるばかりでした。執行が閉鎖的なため絞首刑の残虐性についての議論も深まりません。死刑囚の家族や弁護士でさえ執行を事前に知らされないため別れの準備ができないなど、問題を数え上げればきりがありません。
 死刑を巡っては最近も、日米で様々な動きが出ています。米国西海岸オレゴン州が死刑執行の一時停止を決めました。日本では、オウム真理教事件の刑事事件がすべて終了し、この事件での死刑囚は十三人となりました。今こそ日本で死刑に関する議論が深まることを期待しながら、この本を書きました。
第一章 執行の現場
第二章 死刑という断絶
第三章 遺された者の思い
第四章 取り返しつかぬ間違い
第五章 市民が裁く死刑
第六章 殺し方を巡る論議
第七章 死刑廃止の動き
最終章 議論のために

参考文献
あとがき
小倉 孝保(おぐら たかやす)
1964年、滋賀県生まれ。関西学院大学社会学部を卒業し88年、毎日新聞社入社。福井支局、阪神支局、大阪本社社会部、東京本社外信部、カイロ、ニューヨーク両支局長を経て2010年4月より外信部副部長。
著書に『初代一条さゆり伝説 釜ヶ崎に散ったバラ』(葉文館出版)、『戦争と民衆 イラクで何が起きたのか』(毎日新聞社)、『大森実伝 アメリカと闘った男』(同)。「女子柔道の母」と呼ばれた米国人女性、ラスティ・カノコギの生涯を描いた『柔の恩人――「女子柔道の母』ラスティ・カノコギが夢見た世界』で第18回小学館ノンフィクション大賞受賞。

書評情報

毎日新聞(朝刊) 2012年3月25日
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