ワーキング・プア

アメリカの下層社会

働いても働いてもなぜ生活できないのか.働く貧困層の実態と心情を赤裸々に描き尽くし告発した話題の書.

ワーキング・プア
著者 デイヴィッド・K.シプラー , 森岡 孝二 , 川人 博 , 肥田 美佐子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2007/01/30
ISBN 9784000257596
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ 418頁
在庫 品切れ
不安定な雇用,のしかかる住宅や教育のローン,DV,アルコール,ドラッグ等など.働いても働いても生活できない,それどころか,因果の連鎖から抜け出せず,生活がますます苦しくなっていく…….新自由主義経済の繁栄の片隅で,貧困にあえぐ低賃金労働者たちの実態と心情.出版されるなり,たちどころにベストセラーになった話題の書.


■訳者からのメッセージ
 2001年5月,私は留学先のニューヨーク5番街の大学前で,ある地域労組のチラシを受け取った.それにはマンハッタンの食料品店の労働条件が出ていて,その劣悪さに驚いた.多くは,最低賃金(5.15ドル)以下/残業手当ナシ/1日12時間~14時間労働/医療保険ナシ/病休ナシ/有給休暇ナシ,というのである.最近では全米で3700万人が貧困ライン以下の生活をしており,医療保険未加入者が4600万人いるという報道も目にする.
 しかし,これらの事実や数字を知るだけでは貧しい労働者の人生の苦悩や悲哀は分からない.本書は一人ひとりに寄り添い,その人たちに語らせて,ワーキング・プアの実態を,各人の心情や息づかいも逃さずに描いている.あるいは本書は,社会に不可欠な財やサービスを作り出していながら,貧困の淵に沈み,社会から打ち捨てられ,見えなくされてきた人々の挫折と誇りを手に取るように再現し,貧困追放の道筋を示している.それだけにページが進むごとに胸を打たれる翻訳の作業であった.
森岡孝二


■編集部からのメッセージ
 全体のページ数の都合により,日本語版では,原書のペーパーバック版で加えられた Epilogue は,割愛しています.訳者によるその日本語版は,下記で閲覧いただけます.是非ご参照ください.

 Epilogue (約270KB)
 日本語版への序文
 序文 Preface

序章 貧困の淵に立って At the Edge of Poverty
アメリカの神話と反神話/豊かな国の貧困/見過ごされている人々

第1章 お金とその対極 Money and Its Opposite
金を手にするには金がかかる/現金を引き剥がす無数のテクニック/テレビは贅沢品?/「われわれ自身のせいです」

第2章 働いてもうまくいかない Work Doesn’t Work
「怠惰.怠惰です」/「福祉から労働へ」/繁栄のなかで忘れ去られた物語/仕事から仕事へ/この子のために……

第3章 第三世界を輸入する Importing the Third World
ロサンゼルスのスウェットショップ/何にコストがかかるのか/「適正」な賃金?/移民たちの夢は……

第4章 恥辱の収穫 Harvest of Shame
奇妙な怒りの欠如/ここではモノとカネがすべて/トップダウン式のアプローチ/あらゆるものから切り離されて/ポール神父の闘い

第5章 やる気をくじく職場 The Daunting Workplace
自分にはできない/必要なのは「ソフトスキル」/仕事をする態勢が整っていないグループ/愛のムチと慈しみの態度/アメリカで労働者でいるということ

第6章 父親たちの罪 Sins of the Fathers
幼年期の性的虐待/過去から抜け出ることができない/人とうまくやっていけない/ただ普通の家庭が欲しかっただけ/どん底から更生の道へ/育児の仕方がわからない/親になるために

第7章 家族の結びつき Kinship
私たち家族は固い絆で結ばれていた/「援助に値する貧しい人々」/病めるときも健やかなるときも/空虚感を抱えて/彼女が選んだ道

第8章 体と心 Body and Mind
栄養失調の子どもたち/みじめな食事時間/栄養失調と脳の発達/極度のストレスがもたらすもの/安全な家を

第9章 夢 Dreams
大いなる夢を抱く子どもたち/基本的なものが欠けている/教育の地域間格差/統一テスト/ほとんどの問題はお金で解決する

第10章 働けばうまくいく Work Works
それぞれの中に光を見つけだす/私は働く生活保護受給者/何もかも神様のおかげです/ある贖罪の物語/アメリカに渡って……

第11章 能力と意志 Skill and Will
収入が低くなるほど投票率は低くなる/「できること」と「やらないこと」/政治は何をすべきなのか

 訳者あとがき
 注
デイヴィッド・K.シプラー(David K.Shipler)
1966年から88年まで,「ニューヨーク・タイムズ」紙の記者として,ニューヨーク,サイゴン,モスクワ,エルサレムなどで取材に当たる.その後も,同紙をはじめ,『ニューヨーカー』誌,「ワシントン・ポスト」「ロサンゼルス・タイムズ」などに寄稿.著書としては他に,『ロシア――崩れた偶像・厳粛な夢』(川崎隆司監訳,時事通信社)(Russia,1983),ピューリッツァー賞を受賞した『アラブ人とユダヤ人――「約束の地」はだれのものか』(千本健一郎訳,朝日新聞社)(Arab and Jew:Wounded Spirits in a Promised Land,1987),およ
び『よそ者の国――アメリカにおける黒人と白人』(未邦訳)(A Country of Strangers:Blacks and Whites in America,1997)などがある.現在は,メリーランド州に在住し,大学,シンクタンクなどを始め,全米各地で講演も行っている.

森岡孝二(もりおか こうじ)
1944年大分県生まれ.関西大学経済学部教授・株主オンブズマン代表.香川大学卒業,京都大学大学院博士課程中退.経済学博士.専門は,企業社会論.主著に,『働きすぎの時代』(岩波新書),『日本経済の選択』(桜井書店)ほか多数.

川人 博(かわひと ひろし)
1949年大阪府生まれ.弁護士.1974年東京大学卒業.78年に弁護士登録.主著に,『過労自殺』(岩波新書),『過労自殺と企業の責任』(旬報社)など.共著に,『サラリーマンの自殺』(岩波ブックレット)ほか多数.

肥田美佐子(ひだ みさこ)
ニューヨーク在住.フリージャーナリスト.明治大学卒業.ニューヨーク大学でジャーナリズムを学ぶ.『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て,1997年に渡米.米系広告代理店,ケーブルテレビ会社などに勤務後,フリーに.

書評情報

読売新聞(朝刊) 2007年12月23日
毎日新聞(朝刊) 2007年12月9日
日本労働研究雑誌 No.564(2007年7月)
神奈川新聞 2007年6月10日
毎日新聞(朝刊) 2007年6月7日
女性のひろば 2007年6月号
毎日新聞(朝刊) 2007年5月27日
しんぶん赤旗 2007年5月6日
ALC 2007年5月号
論座 2007年5月号
中央公論 2007年5月号
週刊ダイヤモンド 2007年4月28日,5月5日号
思想運動 780号(2007年4月15日)
週刊金曜日 2007年4月13日号
週刊エコノミスト 2007年4月10日号
図書新聞 2007年4月7日号
サンデー毎日 2007年4月1日号
西日本新聞(朝刊) 2007年4月1日
Eigo Mimi & Eigo Shita 2007年春号
週刊読書人 2007年3月30日号
日本経済新聞(朝刊) 2007年3月25日
愛媛新聞 2007年3月25日
北海道新聞(朝刊) 2007年3月25日
京都新聞(朝刊) 2007年3月25日
徳島新聞(朝刊) 2007年3月18日
沖縄タイムス(朝刊) 2007年3月17日
日経ビジネス 2007年3月12日号
東京新聞(朝刊) 2007年3月11日
秋田魁新報 2007年3月11日
ジャーナリスト 2007年2月25日号
週刊ダイヤモンド 2007年2月24日号
大阪日日新聞 2007年2月19日
読売新聞(朝刊) 2007年2月18日
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