東京をどうするか

福祉と環境の都市構想

東京はどこへ向かうべきなのか.都市と自治体の可能性をさぐる実践的な都市論.

東京をどうするか
著者 渡辺 治 , 進藤 兵
ジャンル 書籍 > 単行本 > 政治
刊行日 2011/03/03
ISBN 9784000257992
Cコード 0031
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 290頁
在庫 品切れ
数兆円の予算規模を持つ東京の可能性は,「首都再生」のかけ声のもと,大規模再開発や五輪誘致に費消されてきた.新しい都政はどこへ向かうべきなのか.具体的政策とその根拠を,第一線の研究者が幅広い分野にわたって展開する.新自由主義構造改革による貧困・格差の時代を終わらせ,新時代を拓くための実践的都市論.

■編著者からのメッセージ

貧困と生活不安の拡大,環境危機へのとりくみの遅れ,超高層ビルを乱立させる都市再開発,競争と抑圧の教育,道路・開発優先の財政――三期一二年にわたる石原都政は強権的リーダーによる新自由主義的構造改革の都政であった.本書は,これに対抗する東京の都市構想を提起する.憲法二五条に基づいて貧困を縮減し,中間層の生活安定を実現する福祉国家型の生活保障.公害防止と地球環境保全を優先することで雇用と内需の拡大をめざす「緑の経済」.住民手づくりの人間的で防災重視のまちづくり.ノンエリート青年の自立を保障する教育.そして生活保障と環境を優先する税財政構造への大胆な転換.この「福祉と環境の都市構想」は,橋下大阪府知事らが唱える「成長優先の地方政治」とは異なる「自治体版福祉国家」の構想でもある.二〇一一年統一地方選挙に関心をもつ人びとに,そして混迷する二大政党制下の国政の打開を願う人びとに,本書を読んでほしい.

■編集部からのメッセージ

予算規模,実に10兆円を超える東京には,大きな可能性があります.しかし,12年間におよんだ石原都政のもとでは,都政のあらゆる分野で民営化や規制緩和などの新自由主義的な「構造改革」が進められ,都立病院は消え,数多くの福祉施策が切り捨てられるなど,東京は人間に冷たい町になってしまっています.
 余談ですが,編集を担当した私の子も保育園に入れず待機児童です.妻と育児分担をしながら本書の編集作業に取り組みましたが,失敗したオリンピック招致に100億円以上,「闇社会」などに食い荒らされた新銀行東京には1400億円以上の税金が費やされました.それだけの税金を子どもたちのために使えば,待機児童問題などすぐ解決するのに――そんな編集者の憤りも本書には込められています.
 弱肉強食の新自由主義ではなく,東京を人間らしく暮らせる街に.そのための具体的で実践的な政策の数々を,ぜひお読みください.
『世界』編集部:熊谷伸一郎
序章

新しい福祉国家型自治体の構想を 渡辺 治
第1章

福祉と環境の都市・東京へ 進藤 兵
第2章

人間らしく生きられるまちへ――生活保障の構想
後藤道夫・森山 治・高橋紘一・浅井春夫・曽我千春・中島明子・大泉幸二・村田悠輔
第3章

東京の都市ビジョンと環境経済政策 寺西俊一・環境グループ
第4章

東京のまちづくりと防災 福川裕一・中山俊雄
第5章

新自由主義教育「改革」を超えて 世取山洋介・山本由美
第6章

東京都の税財政――現状と新たな構想
醍醐 聡・関 耕平・安達智則・石橋映二
第7章

豊かな自治の都市へ 進藤 兵
あとがき

執筆者一覧
渡辺 治(わたなべ おさむ)
1947年生まれ.憲法学,政治学.東京大学法学部政治学コース卒業,東京大学社会科学研究所助教授を経て一橋大学社会学部教授.2010年4月,一橋大学名誉教授.代表的な著作に『日本国憲法「改正」史』(日本評論社,1987年)『現代日本の支配構造分析』(花伝社,1988年)『戦後政治史の中の天皇制』(青木書店,1990年)『「豊かな社会」日本の構造』(労働旬報社,1990年)『企業支配と国家』(青木書店,1991年)『企業社会・日本はどこへ行くのか』(教育史料出版会,1999年)『日本の大国化とネオ・ナショナリズムの形成』(桜井書店,2001年)『「構造改革」で日本は幸せになるのか?』(萌文社,2001年)『構造改革政治の時代』(花伝社,2005年)ほか多数.
進藤 兵(しんどう ひょう)
都留文科大学文学部教授.1964年生まれ.東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学.東京大学社会科学研究所,名古屋大学を経て,現職.専攻は政治学・地方自治論・都政史.最近の論文に「高度成長期の地方自治――開発主義型支配構造と対抗運動としての革新自治体」(大門正克ほか編『高度成長の時代1』大月書店,収録)ほか.

書評情報

都政新報 2011年3月29日号
しんぶん赤旗 2011年3月24日,25日
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