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![]() 本書は『ナルニア国年代記物語』の作者として世にあまねく知られるようになったC.S.ルイスの多彩な著作のうち,想像力を駆使した物語――本邦未訳のアレゴリー『天路逆程』,SF三部作(『沈黙の惑星を離れて』『ペレランドラ』『かの忌わしき砦』),神学的ファンタジー(『悪魔の手紙』と『天国と地獄の離婚』),『ナルニア国年代記物語』全七作,神話の再話『顔を持つまで』――に焦点を合わせ,キリスト教信仰と想像力の融合が織りなす物語世界の全体像を解き明かそうとする試みです.
(中略)ルイスの文学は,一方で読者に知恵と美を提示し,歓びを喚起するのですが,他方,高慢な思いや利己心に絡め取られた私たちの頑なな自我の放棄を迫ってくるものでもあります.このことこそすぐれた文学の働きです.ルイス文学は,すぐれた芸術のすべてがそうであるように,私たちが考察すべき人間経験を解釈して提示することにより,私たちの経験の領域を広げ,経験に形を与え,ものの見方を鍛え,人生への関わり方を強め,他者への人間らしい共感と同情を深めて,私たちがこの世に生きることの意味について物語全体を通して語りかけてくるのです.
(本書「あとがき」より)
2013年に没後50年を迎えるC.S.ルイスは,『ナルニア国物語』をはじめとするファンタジー作品のみならず,中世・ルネサンス文学研究から神学的著作,SF小説,文明批評まで,きわめて多彩な文筆活動を展開した人でした.
本書は,長年C.S.ルイスの文学世界を研究してきた著者が,とくにルイスの「別世界物語」と呼ばれる作品群に焦点を合わせ,キリスト教信仰と豊かな想像力の融合が生んだ,霊的ヴィジョンに満ちた物語世界の全体像を解き明かし,ルイス文学の魅力の核心に迫る試みです.
竹野 一雄(たけの・かずお)
1946年生まれ.青山学院大学大学院文学研究科英米文学専攻修士課程修了,同博士課程単位修得満期退学.博士(文学)(青山学院大学).Wheaton Collage大学院神学研究科にて研究(1982-83).女子聖学院短期大学教授,恵泉女学園大学教授を経て,現在,日本大学大学院総合社会情報研究科教授.
主な著書に,『C.S.ルイスの世界――永遠の知恵と美』(彩流社),『想像力の巨匠たち』(彩流社),『C.S.ルイス《ナルニア国年代記》読本』(共編著,国研出版),訳書に,C.S.ルイス『神と人間との対話』(新教出版社),ラルフ・C.ウッド『トールキンによる福音書』(日本キリスト教団出版局),ウォルター・フーパー『C.S.ルイス文学案内事典』(共訳,彩流社)などがある.
プロローグ――「別世界物語」へのいざない
第1章 C.S.ルイス文学の特質
1 C.S.ルイスの創作方法
2 文学形式の選択
3 ルイス文学の主要なテーマ
4 ルイスによるファンタジーの擁護
5 文学および文化活動に関するルイスの見解
6 ルイスの芸術家論
第2章 〈憧れ〉に導かれて――『天路逆程』
1 自伝的要素に彩られた『天路逆程』
2 『天路逆程』第三版の序文
3 『天路逆程』全章の要約
4 ルイス文学の源泉としての『天路逆程』
第3章 〈深い天界〉の神話――『沈黙の惑星を離れて』
『ペレランドラ』『かの忌わしき砦』 1 『沈黙の惑星を離れて』
2 『ペレランドラ』
3 『かの忌わしき砦』
第4章 地獄からの使者と亡霊たち――『悪魔の手紙』と
『天国と地獄の離婚』 1 ルイスの地獄観と悪魔観
2 『悪魔の手紙』
3 『天国と地獄の離婚』
第5章 C.S.ルイスによる福音書――『ナルニア国年代記物語』
1 『ナルニア国年代記物語』の誕生と展開
2 『ナルニア国年代記物語』と聖書
3 アスランという存在
4 物語の中心的テーマ――〈死と再生〉と〈憧れ〉
5 『ナルニア国年代記物語』の受容をめぐって
第6章 愛の錯誤――『顔を持つまで』
1 『顔をもつまで』の概要――物語構成,時代と舞台
2 『顔をもつまで』全章の要約
3 プロット構造
4 物語の技法
5 真実の愛へ
エピローグ――文学とキリスト教
あとがき
引用・参考文献
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