正義・ジェンダー・家族

主流の政治理論・社会理論を根底から問い,家族における正義を実現する道を切り拓いた,フェミニズム理論の古典.

正義・ジェンダー・家族
著者 スーザン・M.オーキン , 山根 純佳 , 内藤 準 , 久保田 裕之
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
刊行日 2013/05/30
ISBN 9784000258739
Cコード 0010
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 364頁
定価 4,840円
在庫 在庫あり
人は家族のなかで正義の感覚を学ぶ.しかし,家族のあり方は正義に適っているのか.公的領域における正義を追求した主流の政治理論・社会理論は,私的領域である家族の中までも射程に入れることはなかった.著者オーキンは本書でこうした理論を根底から問い,家族における正義を実現する道を切り拓いた.現代フェミニズム理論の古典,待望の翻訳.

■訳者からのメッセージ

 本書はスーザン・モラー・オーキン(Susan Moller Okin)のJustice, Gender, and the Family (Basic Books, 1989) の全訳である.本書が刊行された1989年からのほぼ四半世紀の時間を考えれば,「ジェンダーをめぐる正義はいかに可能か」という本書の問いがすでに時代遅れになっていることが望ましい.もっとも,この間にアメリカでは女性最高裁判事は1名から3名に増え,男女の賃金格差も縮小,公的領域における男女平等が進んでいるようにみえる.しかし,女性の非正規雇用の割合やひとり親世帯の貧困など,「やってのけた」女性たち以外の脆弱性は変わることはない.日本においては,共稼ぎ家庭の割合が増えても男性の家事育児時間はわずかにしか増えず,非正規雇用の低賃金,母子世帯の貧困,高齢期の貧困など,女性の生の脆弱性は深刻になっている.ジェンダーと正義をめぐる問いは,時代遅れになるばかりか,ますます重要性を増している.女性を包摂する正義のあり方を問うた本書は,現代フェミニズム理論の古典と言えよう.
――訳者解説より


第1章 正義とジェンダー
第2章 正義は家族に届かないのか?
第3章 コミュニタリアニズム――伝統と共通理解
第4章 リバタリアニズム――母系制・奴隷制・ディストピア
第5章 公正としての正義――誰にとっての正義か?
第6章 越境する正義――公私二元論への挑戦
第7章 結婚と女性の脆弱性
第8章 結論――人間性を備えた正義に向かって

訳者解説
文献
原注
索引
著者
スーザン・M. オーキン(Susan Moller Okin)
1946年ニュージーランド,オークランド生まれ.ハーヴァード大学で博士号を取得.同大学等で教鞭を執り,1990年スタンフォード大学教授に就任.2004年急逝.優れた政治哲学者であり,フェミニズム理論の第一人者であった.
訳者
山根 純佳(やまね すみか)
1976年生まれ.山形大学人文学部准教授.ジェンダー理論,ケア・再生産労働論.『産む産まないは女の権利か――フェミニズムとリベラリズム』(勁草書房,2004年),『なぜ女性はケア労働をするのか――性別分業の再生産を超えて』(勁草書房,2010年)ほか.
内藤 準(ないとう じゅん)
1976年生まれ.首都大学東京大学院人文科学研究科助教.理論社会学,計量社会学.「自由と責任の制度――パレート派リベラルの不可能性と契約自由解の可能性」(『理論と方法』第20巻第2号,2005年.第7回数理社会学会論文賞受賞),「自由の規定要因とジェンダー不平等――階層測定の単位に関する論争から」(武川正吾・白波瀬佐和子編『格差社会の福祉と意識』東京大学出版会,2012年)ほか.
久保田 裕之(くぼた ひろゆき)
1976年生まれ.日本大学文理学部准教授.家族社会学,福祉社会学.「若者の自立/自律と共同性の創造――シェアハウジング」(牟田和恵編『家族を超える社会学――新たな生の基盤を求めて』新曜社,2009年),エヴァ・F. キテイ『愛の労働あるいは依存とケアの正義論』(共訳,白澤社,2010年)ほか.

書評情報

日本教育政策学会年報 第22号(2015年)
理論と方法 Vol.29 No.1(2014年)
ふぇみん 2013年9月15日号
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