字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記

世界一と言われる日本の映画字幕.その製作をめぐる極意からニホンゴ問題まで,痛快な書下ろしエッセイ.

字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記
著者 太田 直子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
刊行日 2013/04/16
ISBN 9784000258975
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 182頁
定価 1,870円
在庫 在庫あり
世界一の高品質と言われる日本の映画字幕.その製作をめぐる職人的極意から,憂慮すべきニホンゴ問題まで一刀両断,気鋭の字幕翻訳家によるエッセイです.銀幕の裏で呻吟する字幕屋にも,字数制限さえなければ広い渡世があるものを.日々発展の技術のもと,刻々改定の日本語に喘ぎ,されど時代と言葉の伴走者,字幕文化の灯は消すまじ.

■編集部からのメッセージ

外国映画を観にゆけば,おのずと多くの人が恩恵を受けている「字幕」.最近は吹き替え版も増えていますが,日本の映画字幕の品質は世界一と言われています.そんな字幕の世界,いったいどのように翻訳され,作られているか,ご存じでしょうか?
映像のデジタル化,CGや3Dと技術が進むなか,字幕もその姿を変えつつありますが,製作の基本は同じです.「観客に心地いい字幕づくり」.観客は,映画を観に来ているのであって,字幕を読みに来ているのではありません.そんな肩身の狭い字幕ですが,映画の人物たちの息継ぎや話しぶり,場面の転換にあわせ,絶妙なタイミングをはかって,字幕は切り替わっています.その切り替えのスムーズさはまさに職人技とも言うべきもの.
くわえて,翻訳も,ひと目で理解できる内容になっていないといけません.画面を止めて,日本語読解をするわけにはいかないからです.内容だけに限らず,字幕が表示されている時間内に読み切れる分量であることも必須です.
銀幕の裏側は壮絶な字幕製作の現場があるわけですが,その現場が培ってきた日本の字幕文化について,第一線で活躍する字幕翻訳家,太田直子さんがエッセイを書下ろしたのが,本書です.
「字幕翻訳家になるためには」から,字幕づくりの実際,翻訳を通じて感じる日本語の変化などなど,闊達な筆さばきで一刀両断,痛快なエッセイのお原稿をいただきました.字幕翻訳では字数制限という鋼の条件のもと呻吟する著者が,広い原稿用紙を前にのびのびと文章を編み出します.“字幕屋”の奮闘ぶりにうなずいたり,笑ったり,どうぞお楽しみください.
プロローグ――字幕屋のつくり方

I 映画字幕のつくり方
突然,炎のごとく――字幕工程ひととおり/大事な大事なハコ入り台本――「ハコ書き」侮るべからず/謎の黒幕「スポッティング」/ようやく翻訳――字幕は「1秒=4字」/字幕原稿の書き方1 書式編/字幕原稿の書き方2 表記・用語編/推敲遂行!――飛び出すな,字幕は急に送れない/仕上げが肝心(入稿後の工程)――仮ミックス・シミュレーション・初号/字幕文化の守り方――絶滅危惧種か古典芸能か

実録! 字幕屋Nの一週間 その1――ひきこもり酷暑編

II 平均的なニホンゴ
カッコの品格
カタカナ・ダイエット
恥ずかしい言葉
言葉の歯ごたえ
物語の口当たり
君の名は…――その1「長すぎる」
君の名は…――その2「多すぎる」
タナからボキャもち
妄想字幕バー

実録! 字幕屋Nの一週間 その2――厳寒の場外乱闘編

エピローグ――字幕屋Nが出来るまで
 夢破れてもなんかあり/字幕屋誕生前々夜/字幕屋誕生前夜

あとがき
太田直子(おおた なおこ)
映画字幕翻訳者.1959年広島県生まれ.天理大学外国語学部ロシア学科卒業.映画翻訳家協会会員.劇場公開された字幕翻訳の映画作品に『ボディガード』『コンタクト』『ヒトラー――最期の12日間』『ラビット・ホール』『バイオハザード』シリーズなど.著書に『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』(光文社新書).

書評情報

東京新聞(夕刊) 2019年5月23日(評者:太田直子さん)
リビング京都東南 2015年2月14日号
サンデー毎日 2013年7月14日号
なごみ 2013年7月号
東京新聞(朝刊) 2013年6月30日
しんぶん赤旗 2013年6月2日
Catch〔釧路〕 Vol.13(2013年5月30日)
東京新聞(夕刊) 2013年5月28日
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