シリーズ グーテンベルクの森

雑学者の夢

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著者からのメッセージ

読書に効率のよい方法はない.また,最初から狙いを定めて読んでいくものでもない.だれでも自分の好きなように,手にした本を読んでいい.読み手は潜在的にであれ,関心の範囲で本を選んでいる.やがてそのうちのいくつかの本が繋がってくると,そこから自分の中に潜んでいたものが分かってくる.この本の前半で,私は雑然とした文化現象をなんとか理論的に捉える方法はないかと記号論や言語学の領域を渉猟した軌跡の一部を辿っている.ところがそれは,もう少し秘かな深みにおいて,思考は言語がないとできないものか,それとも言葉のない思考というものもあるのか,という探索に動機づけられていたことにあとから気づいた.読書とは,そこからなにを見いだすか,読み手が試される未知の冒険でもある.通説とか専門家の研究は尊重すべきだとしても,それとは無関係ななにかを発見するように読んでいくことがなければ退屈である.とりつきにくい難解な本や,意味の見えない屑のような書き物を読むときこそ,読書の快楽に出会う可能性は大きいのだ.


著者略歴
多木浩二(たき こうじ)
1928年神戸市生まれ.東京大学文学部美学美術史学科卒業.建築,美術,都市,写真などの文化的事象から,哲学・思想,大航海の歴史や戦争論など幅広い執筆活動を行う.
著書――『神話なき世界の芸術家――バーネット・ニューマンの探究』『〈もの〉の詩学』『シジフォスの笑い――アンセルム・キーファーの芸術』(以上,岩波書店),『天皇の肖像』『生きられた家――経験と象徴』『写真論集成』(以上,岩波現代文庫),『戦争論』(岩波新書),『スポーツを考える』(ちくま新書),『20世紀の精神――書物の伝えるもの』(平凡社新書),『もし世界の声が聴こえたら――言葉と身体の想像力』『眼の隠喩――視線の現象学』『欲望の修辞学』(以上,青土社),『思想の舞台』『船がゆく――キャプテン・クック支配の航跡』『船とともに――科学と芸術 クック第二の航海』『最後の航海――キャプテン・クックハワイに死す』(以上,新書館)ほか.


目次

  序章
第1部 記号と構造
第1章 記号論との出会い――ロラン・バルトを読む
  写真のメッセージ/外示的意味と共示的意味/記号論への展望/移動の戦略
第2章 ソシュールの哲学
  言語には差異しかない/言語は本来,社会的である/「構造」の概念を知る/ゼロになりうる記号/言語記号の恣意性/統合関係と連合関係
第3章 言語学者バンヴェニストの役割
  言語の象徴能力/構造とは何か/記号から言説へ/人間は言葉を話すから主体である/フロイトの対話的言語/言語学者による無意識の定義
第4章 初期ベンヤミンの言語論
  事物を名づける/事物の言語と人間の言語/世界に浸透する言語/「翻訳者の使命」

第2部 記憶と歴史
第1章 だれにでも埋もれている記憶――「1900年頃のベルリンの幼年時代」
  生まれ故郷ベルリン/子供はシンボルの宝庫をつくる/時代遅れのもの/迷宮とその入口/記憶と未来/境界――ロッジア/動物園とティーアガルテン
第2章 書物を超えた書物――『パサージュ論』
  案内人ヘッセル/図書館としての都市/「概要」=「パリ――19世紀の首都」の意味/細部への関心/「根源」と経済的な事実/「集団的夢」とは/商品の魔術/ボードレールの都市/ブランキと永劫回帰/『パサージュ論』の形式を考える
第3章 「考えられなかったこと」の重要さ――フーコーの歴史
  「言説」に語らせる歴史/「まなざし,空間,死」/医学と人間科学/死の鏡に映る生命/もっとも具体的なるもの/世界としての散文
終章  

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