グーテンベルクの森

鬼平とキケロと司馬遷と

歴史と文学の間

ローマ,イスラーム,中国の歴史書の効用,江戸のロマン….歴史家の目で選んだ,古今東西の本の世界.

鬼平とキケロと司馬遷と
著者 山内 昌之
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
シリーズ グーテンベルクの森
刊行日 2005/03/23
ISBN 9784000269889
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ 222頁
在庫 品切れ
学問研究のための読書に追われながら,趣味や気分転換に乱読して出会ったあんな本,こんな本.ローマ,イスラーム,中国の歴史書をひもとく効用,江戸・明治のロマンあふれる本…….文学と交叉させながら歴史の楽しみを味わえる本を多数紹介!

■著者からのメッセージ

『鬼平とキケロと司馬遷と』を書き上げて――本を楽しむ本の喜び
山内昌之
「読書は死にかかった技術だ.もう一世紀あまりもむかし,映画が発明されたときから,読書は落ち目になった」.トマス・ディッシュの短編小説,「本を読んだ男」(浅倉久志訳)の一節です.うまいことを言うと感心してばかりもいられません.だいたい,明治の文芸評論家の内田魯庵は,大学の先生などに限って専門以外の本を読んでいないと痛烈に皮肉ったことがあります.私などにも耳が痛いセリフです.たしかに,専門の研究や教育に追われていると,芝居見物やスポーツの時間がもったいなく,普通の読書さえ時間の浪費に思えてくることがあります.魯庵は読書を享楽と呼びました.私たちも,気分や発想を転換させるために,時には乱読やツンドクという〈享楽〉にひたるのを許されるでしょう.また私の心中では,テレビで欠かさず見る鬼平の時代劇も,キケロの政治哲学や司馬遷の歴史観への興味とそれほど無理なく共存しています.イスラーム史を学ぶ人間が何と無駄な本を読むのか,と呵呵大笑していただければ,「本を楽しむ本」の著者としては望外の喜びなのです.
山内昌之(やまうち まさゆき)
東京大学大学院総合文化研究科教授.
1947(昭和22)年札幌に生れる.1971年北海道大学文学部卒.学術博士(東京大学).カイロ大学客員助教授,東京大学教養学部助教授,トルコ歴史協会研究員,ハーバード大学客員研究員などを経て1993年より現職.国際関係史とイスラーム地域研究を専攻.
1984年に『現代のイスラム』(朝日新聞社)で発展途上国研究奨励賞,1987年に『スルタンガリエフの夢』(東京大学出版会)でサントリー学芸賞,1990年に『瀕死のリヴァイアサン』(TBSブリタニカ)で毎日出版文化賞,1991年に『ラディカル・ヒストリー』(中央公論社)で吉野作造賞,2001年には『納得しなかった男』(岩波書店)などで司馬遼太郎賞,2002年に『岩波イスラーム辞典』(共編著,岩波書店)で毎日出版文化賞をそれぞれ受賞.編集委員として『岩波講座世界歴史』,『岩波講座開発と文化』,『中公・世界の歴史』(中央公論新社)などの企画にあたる.最新著は,『歴史の作法』(文春新書),『帝国と国民』(岩波書店),『嫉妬の世界史』(新潮新書)など.
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