グーテンベルクの森

進化生物学への道

ドリトル先生から利己的遺伝子へ

動物好きの少女を進化生物学者に進化させたものとは一体何だったのか? 興味津々たる読書の履歴書.

進化生物学への道
著者 長谷川 眞理子
ジャンル 書籍 > 単行本 > 評論・エッセイ
シリーズ グーテンベルクの森
刊行日 2006/01/26
ISBN 9784000269896
Cコード 0095
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 178頁
在庫 品切れ
図鑑とドリトル先生シリーズによって動物の世界に誘われた著者は,いま「人間の本性」に迫るために進化的な視点から探求を進めている.この道に至るには,『ソロモンの指環』や『利己的な遺伝子』などの本や何人かの人との決定的な出会いがあった.動物好きの少女が進化生物学者に進化していった,興味津々たる読書の履歴書.


■著者からのメッセージ
 本書では,このような,私の人生の軌跡において重要な役割を果たした本のいくつかを取り上げて,それについてつれづれに語ってみた.そういうわけで,これらがなにも読者のみなさんにお薦めしたい珠玉の書物,というわけではない.歩む人生が違えば,人生に大きな新しい意味を与えてくれる書物も,おのずと違うものになるだろう.本書は,読書案内のようでもあるが,私の半生記でもある.……
 そして,読書の世界には文字だけしかない.挿絵というものがあったとしても,それが本質ではない.ここが,映画や演劇や漫画と違うところだ.読書は,なにも目の前に実体がないにもかかわらず,言葉だけから一つの大きな世界を自分で想像していくプロセスである.このおもしろさを見いだした人は,もう二度とここから離れることはできないだろう.そういう世界のおもしろさを伝えたい,というのも,本書の目的の一つであった.
(本書「あとがき」より)


■編集部からのメッセージ
 図鑑とドリトル先生シリーズによって動物の世界に誘われた著者は,生物学研究者の道に進み,「人間の本性」に迫るために進化的な視点から探求を進め,いまや文科と理科を融合した新しい総合人間科学をめざししています.動物好きだった少女がここに至るには,決定的な本と人との出会いがあり,その道はまさに悩み多きジグザグのコースをたどりました.マクロな生物学のおもしろさを教えてくれた東大の恩師と『ソロモンの指環』,アフリカでのチンパンジー研究を導いてくれた『森の隣人』とジェイン・グドール,進化における「種の保存」という考え方の誤りを教えてくれたプレマック博士と『利己的な遺伝子』,思索の源泉を与え続けてくれたダーウィンとその著作,理系人間からの脱皮を促してくれた学生たち,…….
 このように本書は一研究者が成長していく劇的なドラマであり,その読書の履歴書です.しかし,それだけではありません.そこで取り上げられている本は,生物や進化に関する面白くて決定的に重要なものぞろいで,生物や「人間の本性」に関心を抱く人には絶対にお奨めです.ユニークで楽しいブックガイドとしてもお読みください.
第一章 図鑑たち――未知の自然へのいざない
第二章 『ドリトル先生航海記』――博物学とイギリス流ユーモア
第三章 『ソロモンの指環』とコンラート・ローレンツ
第四章 『森の隣人』とジェイン・グドール
第五章 利己的遺伝子
第六章 ダーウィン
第七章 科学,人間,文明について
あとがき
書誌データ一覧
書名・著者名索引
長谷川眞理子(はせがわ まりこ)
1952年生まれ.1976年東京大学理学部生物学科卒業.1983年東京大学大学院理学系研究科人類学専攻博士課程単位取得退学.東京大学理学部助手,専修大学助教授・教授,早稲田大学政治経済学部教授を経て,現在総合研究大学院大学教授.理学博士.専門は行動生態学,進化生物学.
著書――『進化とはなんだろうか』(岩波ジュニア新書),『科学の目科学のこころ』(岩波新書),『クジャクの雄はなぜ美しい?』(紀伊國屋書店),『オスとメス=性の不思議』(講談社),『雄と雌の数をめぐる不思議』(中央公論新社)ほか.
訳書――ミラー『恋人選びの心』(岩波書店),ダーウィン『人間の進化と性淘汰』(文一総合出版),クローニン『性選択と利他行動』(工作舎),ジョンストン『人はなぜ感じるのか?』(日経BP社)ほか.

書評情報

しんぶん赤旗 2006年4月3日
読売新聞(朝刊) 2006年3月12日
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