もしもソクラテスに口説かれたら 愛について・自己について

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きみって誰?愛にひそむ哲学の罠――罠にはまる方法・脱出する方法

著者からのメッセージ

土屋賢二

もし「あなたの顔も性格も嫌いですが,あなた自身を愛しています」と言われたら,うれしいと思うだろうか? うれしくないなら,なぜだろうか?

いまから2500年前,ソクラテスはこの挑戦的な口説き文句を考えました.この中には哲学的問題が多数含まれています.とくに問題になるのは,「自分とは何か」という問題と「愛とは何か」という問題です.

この二つの問題は,これまで別々の問題として考えられてきました.別々に考えると,どちらの問題にしても,どこから手をつけたらいいのか見当もつかないと思います.でも,ソクラテスの口説き文句を考えていくと,「自分」についても「愛」についても問題点がどこにあるかがはっきりして,考えやすくなります.

ソクラテスの問題提起に従って考えていくと,ソクラテスが何をどう考えていたのかもしだいに分かってきます.このソクラテスの議論の仕方が,その後の哲学の考え方を決定しました.だから,ソクラテスの議論を理解すれば,哲学はどのようにものを考えるかということも自然に分かってもらえると思います.

わたしは,このソクラテスの考え方を入学したばかりの学生たちにゼミで議論してもらいました.そのゼミを基にしてこの本ができました.ゼミというのは議論主体の授業です.自由に発言できるので,ゼミは戦場みたいなものです.質問や反論が飛びかい,わたしも負傷しながら反撃を試みています.その様子を知ってもらうことも目的の一つです.

ソクラテスの口説き文句を考えていくうちに,哲学的思考の実際を,身をもって体験していただくことを願っています.


著者略歴

土屋賢二(つちや けんじ)
1944年生まれ.専攻,ギリシア哲学・分析哲学.現在,お茶の水女子大学文教育学部教授.
著書:『われ笑う,ゆえにわれあり』(文藝春秋),『哲学者かく笑えり』(講談社),『猫とロボットとモーツァルト』(勁草書房),『汝みずからを笑え』(文藝春秋),『ソクラテスの口説き方』(文藝春秋),『ツチヤ学部長の弁明』(講談社),『簡単に断れない』(文藝春秋),『ツチヤ教授の哲学講義』(岩波書店),『貧相ですが,何か?』(文藝春秋)ほか.


目次

はじめに

第1日 愛と魂
ソクラテスの口説き方は効果があるか?
どうやって魂を認識するのか?
魂と身体はどう関係するか?
心とは何か
同一人物かどうかを見分ける方法

第2日 ソクラテスのどこが間違っているか
心を愛するとは?
脳死になったら
身体も愛するのでは?
何が変化するか
使う・使われるの関係から何が言えるか
身体はわたしの一部か?
「A≠C,B≠C ゆえに A=B」は正しい?
ことばの問題



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