双書 哲学塾

なぜ意識は実在しないのか

意識や心って何? 常識の底を掘り,世界を成り立たせている言葉の秘密に迫る.ラディカルな,〈私〉の存在論.

なぜ意識は実在しないのか
著者 永井 均
ジャンル 書籍 > 単行本 > 哲学
シリーズ 双書 哲学塾
刊行日 2007/11/06
ISBN 9784000281577
Cコード 0310
体裁 B6変 ・ 上製 ・ カバー ・ 168頁
在庫 品切れ
君にもあるし私にもある,この意識や心っていったい何だろう? 日常の「当たり前さ」の底を掘って,隠れている前提と規則を明るみに出そう.心身問題,主客二元論などの出来合いの考え方を離れ,〈私〉をめぐる言語ゲームから,世界を成り立たせている言葉の驚くべき仕組みを捕らえよう.〈私〉の存在をめぐるラディカルにしてオリジナルな思考.

■著者からのメッセージ

われわれはたいてい,各人に心とか意識とか呼ばれるものがあって,それは主としてその人の脳の働きによって作り出されて,というような世界像を信じています.この後半を信じない人でさえ,前半は信じているでしょう.今回の連続講義では,そういう世界像をまずは打ち壊したい.しかし,ただ打ち壊すのではなく,それがどのようにして成立したのか,どうして成立しなければならなかったのか,その仕組みを明らかにしたいと思います.この世界像は作り物にすぎないということを示す,という意味ではたしかに打ち壊すのですが,その作り物がわれわれにとって不可欠で,かつわれわれにとっての「現実」を作り出している,ということもあわせて示したいのです.
 というわけで,3回の講義内容は,テーゼの集まりという形で要約不可能な,ある種の弁証法的な構造を持つことになります.ここで弁証法的というのは,ある段階では肯定されていたテーゼが後の段階では否定されることになり,ある段階で否定されていたテーゼが後の段階では肯定されることになる,という意味です.しかも議論の展開は真理に向かって発展していくのではなく,むしろ虚構を「現実」として作り出し,しかもループします.それに応じて,使われている言葉の意味自体も変化することになります.
(本書「はじめに」より)
永井 均(ながい ひとし)
1951 年生まれ.専攻,哲学・倫理学.現在,日本大学文理学部教授.
著書:『〈私〉のメタフィジックス』 『〈魂〉に対する態度』『〈私〉の存在の比類なさ』(勁草書房),『ウィトゲンシュタイン入門』(ちくま新書),『翔太と猫のインサイトの夏休み  哲学的諸問題へのいざない』(ちくま学芸文庫),『転校生とブラック・ジャック  独在性をめぐるセミナー』(岩波書店),『これがニーチェだ』 『私・今・そして神  開闢の哲学』(講談社現代新書),『西田幾多郎 〈絶対無〉とは何か』(NHK出版)ほか.
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