 |
|
 |
|
|
 |
|
 |
| 日本中にはりめぐらされたレールの七四%,約二万キロメートルにわたる動脈は,国有鉄道の管理下にある.全国約五千の停車場から停車場へ白く光るレールの上を,普通列車が走り,貨物列車が走り,急行列車が走り,特急列車が走り,夜も晝も多くの人間と貨物とを運んでいる.……赤,橙,青と点滅する信号機,頻繁に切りかえられるポイント,各停車場の時計の針は一斉に動いて,入れかわり立ちかわる列車の発着時刻を,寸秒も狂わせない.たった一列車でもまごまごすれば,将棋倒しのように全体の統一が破れ,悪くすれば悲惨な事故さえ起こしかねない.この本は日本の動脈を交叉する複雑な列車の流れと,緊密な組織のもとにその動脈を守っている約四八万人の鉄道従業員との物語りである. |
|
|
 |
|
 |
私たちが拠りどころとしているものに常識がある.この常識によって,多くの人々が判断し,行動する.従って,その当否は私たちの社会生活の上にも大きな関連を持ってくる.ところが常識といわれるものの中には,不十分な知識,誤った知識が根を下ろしてしまったものも少なくない. ……「常識」に進歩を与え,正しからざるものを是正するための努力は惜しまれてはならない. 私たちが,斯学の権威,小泉丹博士を煩わして,この文庫に蛔虫を取り上げたのは,蛔虫が日本人に最も多く最もふつうな寄生虫で,しかも,戦後の異常な蔓延状態は重大な問題だからである.また,それにもかかわらずいまなお,多くの誤った常識が通用しているのを憂えた故である. |
|
|
 |
|
 |
| 競馬シーズンになると,すぐれた駿馬でさえ本競馬から草競馬に追いまわされただ人間の賭勝負に追いまわされている.馬といえば競馬と思うほどに,都会人の常識は偏ってしまった.しかし,文化程度の低い日本では馬こそ未だに重要な生活の足である.自動車の間隙を縫って重い荷を運び,泥にまみれて田畑を耕す,この献身的な柔順な動物はやがて機械文明に波に押し流される運命にあるとはいえ,いつまでも我々の心に親しいものを残すだろう. |
|
|
 |
|
 |
| 一塊の石炭――その黒く輝く姿は,地球の歩んできた長い歴史を物語っている.そこに宿っているのは,何億年前かこの地球を照らした太陽のエネルギーである.だがその強大なエネルギーとともに,人間の血と涙の集積も,この一塊にこめられているのを私たちは忘れることができない.……私たちは,遠く父祖たちの代から営々としてその採掘がつづけられ,今なお全日本の石炭生産量のほぼ五五パーセントを出している北九州の炭田をおとずれてみよう.私たちの生活はいかに厖大な機械力とそれを動かす智力と労力に支えられているだろうか. |
|
|
 |
|
 |
写真文庫巻頭第一頁にはその本の内容を象徴するような写真がよく使われます.「自動車の話」と題したこの本の巻頭にもトラックとバスを配してあるのは     の話が中心テーマになるからなのです.運輸省自動車局の調べによると一九五三年五月末現在,日本にはトラックが四三八,五一七台(一般外人,軍人軍属の所有車六五〇台),バスが二六,四五七台(同右台数は九),乗用車は二輪軽自動車(オートバイ)まで含めて三三〇,五四六台(同右台数は二一,二〇三)となっています.……最近乗用車の数が頓に増加してきたようですが,「充分だが質素な」勤労者が収入の六分五厘を自動車購入費に廻せるアメリカでなく,バスも節約して電車で行こうという国では,やはりバスとトラックが主役らしいのです. |
|
|
 |
|
 |
| 千古のなぞを厚い氷と雪とにつつんだ廣さ一五〇〇万平方キロの南極大陸をかこんで,南氷洋はただ一つ残った鯨の宝庫として横たわり,オーロラがもえ,氷山のただよう数千メートルの海底には,おびただしい鯨の耳の骨が沈んでいる.……世界の捕鯨の歴史は,濫獲が捕鯨には命とりであることをくりかえし教えている.またその歴史を南氷洋にくりかえしたくはない.この本にまとめられた捕鯨母船のある船医の体験は,私たちにも深い関心を呼びおこさないではおかないであろう. |
|
|
 |
|
 |
| 私たちはソ連について,さまざまの議論をきく.しかしそれらの議論の基礎になるべき事実については,残念ながら知る機会が少ない.……ここに集められた写真は日ソ親善協会の提供によるもので,統計その他はソ連の公式の発表をもととした.従ってこれはソ連についての全面的な報道であるとはいえないが,日本の読者にとってはこれだけでも新しい知識になるのではないだろうか. |
|
|
 |
|
 |
| 今日この本を出すに当って,私たちの希うことは人々にこれを冷静に見ていただきたいということである.……この本に収められた写真の大部分を撮影した影山正雄氏は,優れた報道写真家であり,戦時中には複雑な体験をした人である.その一家の記録は,戦争によって傷められた人人の生活を代表しているものと考えて良いだろう.今それに,苦心蒐集した歴史的な写真を加えて,日本が歩いてきた姿を如実に描いて見た.掲載された写真の数は少ないが,この背後にあるものを考えていただきたい. |
|
|
 |
|
 |
| まだ何ものにも染まない生き生きとした一年生の姿は見ていて楽しいが,カメラで捉えることは容易でない.それは技術だけの問題ではなく,先生の深い愛情が伴ってなし得ることである.この本はそういう本である. |
|
|
 |
|
 |
| 日本のように写真機の普及している国は少いという.その写真機を持って,いたるところでカメラマンは身辺に起る事象を捉えようとしている.こういう人々の力を結集して何か意義ある仕事をしたい,この考えから生まれたのがこの企画である.激しく動いている世界の出来事はことごとく報道され記録されているように見える.しかし実際にはその報道や記録は完全でも正確でもあるまい.しかしわれわれはそういう大きな問題にいどもうとするのではない.われわれの最も身近なところに起こる一日の記録を,写真という優れた武器を使ってとって見たいと考えただけだ.十月八日を選んだのにも特別の意味はない.……この本は全国の優れたカメラマンと審査員と五十二の新聞社と岩波写真文庫編集部の協同の作品であるといえるだろう.大事件はなかった.しかし日本全国の有様がこのような形で描かれたことははじめてであり,今後この方法は次第に発展するであろうがその第一歩として意義深いものがあると思う. |
|
|
 |
| ■ |
体裁=B6判・並製 |
| ■ |
定価 3,675円(本体 3,500円 + 税5%) |
| ■ |
2007年9月27日 |
| ■ |
ISBN978-4-00-203135-4 C0372 |
|
| ■ |
体裁=B6判・並製 |
| ■ |
定価 3,675円(本体 3,500円 + 税5%) |
| ■ |
2007年9月27日 |
| ■ |
ISBN978-4-00-203136-1 C0372 |
|
|
| |
12月にも復刻版写真文庫が刊行されます。 |
|
| |
|
|
 |
 |
 |
| |
☆川――隅田川 /☆東京 大都会の顔 /☆東京案内 /☆東京湾 空から見た自然と人 /☆東京都 新風土記
|
|
|