加藤周一自選集 全10巻

刊行にあたって/全巻構成

推薦文/特色


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加藤周一自選集 全10巻 鷲巣 力 編 「私とは誰か,を決定するのは,私ではなくて,他者である」

刊行にあたって
 『加藤周一自選集』は,山口昭男岩波書店社長の提案に始まり,当初の編集会議にはまだ体調を崩していなかった加藤氏も加わった.70年余の著作活動の軌跡を表し,加藤周一を定義する選集となることを加藤氏は望み,これを編集の基本方針に据えた.収録著作の選定には編者が当たったが,病が進んでいたにもかかわらず,加藤氏は選定された著作を自ら確認した.
 加藤氏の著作は,美しくかつ精確にして明晰な文で表されている.詩人の魂と科学者の方法を兼ね備えた作家だった.加藤氏を支えたのは,人間の自由を求める烈しい情熱と,ものごとの意味を究めようとする冷徹な知性である.そして,少数者としての矜持を保って発言し続けた.
 この自選集が,「加藤周一の精神」を理解し,これを継承することに役立ち,読者諸賢の生きる力となり得れば,加藤氏にとっても大きな喜びであるに違いない.
 2009年5月
鷲 巣 力
[編者]鷲巣力(わしず・つとむ)
1944年生まれ.ジャーナリスト.現在跡見学園女子大学非常勤講師.平凡社に勤務し『加藤周一著作集』(第 I 期・全15巻)を編集する.退社後も『加藤周一著作集』(第II期・全9巻)や『加藤周一セレクション』(全5巻)の編集などに携わる.


全巻構成

1 1937-1954  
1937 映画評『新しき土』
1938 正月/編輯後記(第一高等学校校友会『校友会雑誌』第363号)
1939 戦争と文学とに関する断想
1943 妹に
1944 トリスタンとイズーとマルク王の一幕
1946 天皇制を論ず/天皇制について/新しき星菫派に就いて
1947 ポール・ヴァレリー/金槐集に就いて/オルダス・ハクスリーの回心/象徴主義的風土/四つの四行詩/愛の歌
1948 さくら横ちょう/定家『拾遺愚草』の象徴主義/漱石に於ける現実
1949 木下杢太郎の方法/芥川龍之介小論/木下杢太郎とシナの医学
1950 日本の庭/外と洋学/ジャン・ポール・サルトル/演劇のルネサンス
1951 龍之介と反俗的精神/途絶えざる歌/ヴェルコールについて/「ネギ先生」の想い出/木下杢太郎と吉利支丹研究
1952 火刑台上のジャンヌ・ダルク/ルオーの芸術
1953 解説(吉田秀和『音楽家の世界』)/一枚のボッシュに
1954 現代オペラの問題
2 1955-1959  
1955 日本文化の雑種性/私文学論/石川淳小論/ジャン・ジロドゥー小論/信州旅日記/ヴィーンの想い出
1956 果して「断絶」はあるか/木下順二小論
1957 天皇制について/近代日本の文明史的位置/サルトルと共産主義/映画における古典主義の誕生/ゴットフリート・ベンと現代ドイツの「精神」/グレアム・グリーンとカトリシズムの一面
1958 荷風覚書/カール・バルトとプロテスタンティズムの倫理
1959 ヨーロッパとは何か/石川淳覚書/外とその時代/戦争と知識人/薬師寺雑感
3 1960-1966  
1960 物と人間と社会/安保条約と知識人/余は如何にして基督信徒とならざりしか/親鸞
1961 日本の英語教育/日本人の世界像
1962 現代日本文学の状況/宇津保物語覚書
1963 外と「史伝」の意味/茶の美学
1964 カルル・クラウス/読書の想い出/詩仙堂志
1965 『源氏物語絵巻』について/野村万蔵の芸/狂雲森春雨/西田幾多郎全集への期待/福沢諭吉と『文明論之概略』
1966 日本文学の伝統と「笑い」の要素/サルトルの知識人論/竹内好の批評装置
4 1967-1971  
1967 仏像の様式/日本の美学
1968 宗達私見/世なおし事はじめ/言葉と戦車
1969 アメリカ再訪/日本における芸術思想の展開/芝居についての芝居
1970 ジャコメッティまたは純粋芸術家/丁丑公論私記
1971 小倉朗または音楽の現代/林達夫とその時代/日本文学史の方法論への試み/亡命の問題三つ/「追いつき」過程の構造について/米中接近――感想三つ/感受性への忠実/外全集に寄す/中国または反世界/中国・二つの顔/中国または人民の兵営
5 1972-1976  
1972 音楽の思想/中国の屋根の反り/去年之雪今何処/死の見方・江戸時代と近代/富永仲基と石田梅岩/花の降る夜のなかで/超リアリズムまたは現実の多義性/斎藤茂吉全集賛/歓迎徂徠全集
1973 『日本庶民文化史料集成』を歓迎する/鉄斎覚書/仏教美術の評価に資する/書巻を開き,古賢に逢ふ/論語読み/宗達の世界/福永武彦を論ず
1974 推薦文(中村真一郎『この百年の小説』)/推薦文(筑摩書房版『近代日本思想大系』)/世阿弥の戦術または能楽論/内田義彦の「散策」について
1975 「神は人也」または『古史通』の事/狂気のなかの正気または『リヤ王』の事/形式の発明または『渋江抽斎』の事/大和心または宣長の「遺言」の事/いざ往かん,君にさも似しかの国へ/「本歌取り」または『方丈記』の事/芸談または『夏に技冬に声』の事/批評についてまたは『吉田秀和全集』第1巻の事/ジャポングレまたは「フラングレ」の事/新井白石の世界/「人間性」についてまたは『デカルト流言語学』の事/顔で笑って心で泣いてまたは『随想録』第1巻第38章の事/青春または『ひとりね』の事/大きさの話または『野生の思考』の事/女の解放運動または『正法眼蔵』(「礼拝得髄」)の事/怒る事の大切さまたは『金芝河詩集』の事/自然愛または『奥の細道』の事/柳随筆/亡命または『仕事日記』の事/言論の自由または『平民新聞』の事
1976 小説の愉しみまたは『迷路』の事/天皇について/政権交代または『柳橋新誌』の事/神秘主義または『イスラーム思想史』の事/脱神秘化または『胆大小心録』の事/戦争または『フロイト著作集』の事/転向または『獄中贅語』の事/辞世または『狂文狂歌集』の事/多数専制または『自由論』の事/文学的周辺理論のためにまたは『枕草子』の事/文学の擁護/再びヴェトナム戦争についてまたは『くさびら』の事/方法の問題または『皮膚科学講義』の事/人間学または『状況第九』の事/土着文化または『万葉集』の事/子供の国/徳川治下の詩人たちまたは『詩人の庭』の事/天喪予または『論語』の事/偽善的であることの大切さまたは『ローマ帝国衰亡史』の事/酒は涙か溜息か/短詩
6 1977-1983  
1977 単純な経験と複雑な経験/丸山真男『戦中と戦後の間』/道化にとって座頭市とは何か/光悦覚書/E.H.ノーマン・その一面/堀辰雄愛読の弁/『杜甫詩注』への期待/淀長流解説『愛のコリーダ』/日本人の死生観(抄)/司馬太郎小論/文章副読本/小林秀雄『本居宣長』
1978 古典の意味について/推薦文(「岩波現代選書」)/白鳥/戊午公論/一休という現象/現代日本作家の諸問題
1979 美しい時間/中国再訪/龍門石窟/ポール・ロワイヤール論理学/山中人話/ねむの木のうた/誄/スポレートの教会/管弦楽/福永武彦の死/小さな花/サルトル論以前/人と方法/ヴェネツィアの冬/石川淳または言葉の力/美しい顔
1980 文学研究のこと/無題/ピカソ回顧/推薦文(平凡社版『日本人の自伝』)/二つの映画/翻訳のこと
1981 映画・東京・「岩波ホール」/二葉亭問題/万作十牛図/桑原武夫私記/意味の大きい日本語訳/桜に鶯・CARICATURA/何故杢太郎全集か/宮本百合子のソ連経験/民主主義のために/フランスから遠く,しかし……/福永武彦の『百花譜』
1982 『源氏物語絵巻』/教科書の検閲と「ユーフェミズム」/随筆についての随筆/クリムトのダナエ/後ろ姿の女たち/大岡昇平・人と作品/女の眼の語ったこと/訳詩偶感/女の描いた女/序(青木信二『狂言――野村万蔵の世界』)/ゴヤの版画の魔女/『アヴィニョンのピエタ』
1983 踊る女/『加藤道夫全集一』読後/働く女/北国再訪/偶像の誕生/ムンクの場合/『日本古典文学大辞典』の効用への期待/美しい衣裳/ドゥガ・問いと答え/戦後文学史上,思想史上の記念碑/ゴルドーニ回想録
7 1984-1986  
1984 永遠の今/『中村真一郎評論集成』の出版を歓ぶ/キリストの孤独/サルトル私見/林達夫を思う/日本社会・文化の基本的特徴/信ずべき者/林達夫 追悼/敦煌所感/聖から俗へ/偉大な時代錯誤/『大百科事典』の編集方針について/推薦文(梅谷文夫・水田紀久『富永仲基研究』)/『イグナティウス・デ・ロヨラ』の余白に
1985 吉満義彦覚書/『中野好夫集』再読/富岡鉄斎/シャガール回顧/解説(『高田博厚著作集』第1巻)/山崎剛太郎の脱出/真夏の夜の(悪)夢/『子午線の祀り』について/現代の女の問題
1986 マラルメとプルースト/梁塵秘抄/『夕鶴』1000回/カトリック教会の役割/仏典読むべし/河野夫妻の想出/歴史の見方/渡辺守章さんのラシーヌ/『コリオレイナス』所見/白井健三郎への手紙
8 1987-1993  
1987 『中村稔詩集』の余白に/歌舞伎雑談/野上弥生子日記私註/もう一人のマティス/『木下順二集』に寄す
1988 西洋文学とは何か/ある自由人の死/宣長・ハイデッガー・ヴァルトハイム/弔辞(石川淳氏へ)/「南京」遡って「旅順」/内田義彦とはどういう人か/嘘の効用/堀辰雄または亡命作家
1989 明治初期の文体/劃期的な出来事/アンディ・ウォーホル回顧展/雪の降る森のなかで/何故原爆を落したか/利休・二つの映画/解説(『湯川秀樹著作集』第7巻)/矢内原伊作の三つの顔/崩れたベルリンの壁/芸術の再発見
1990 松本重治追想/淵明と一休/画家モランディの世界/儒教再考/フランスの松林のなかで/「異端」再論
1991 野間宏または文学の事/「善意」ということ/翻訳古典文学始末/『巨匠』という芝居/明治初期の翻訳/宗教の役割/中原中也の日本語/そのおどろくべき「多様性」/八月革命・その年の終りに
1992 故旧忘れ得べき/推薦文(岩波書店版『荷風全集』)/三匹の蛙の話/作品・方法・感受性および時代/再見『リア王』/春秋無義戦
1993 命短し/護憲の理由/差別の国際化/斎藤茂吉の世界/漱石小論/『釣狐』または言葉と暴力の事/山本安英伝説
9 1994-1998  
1994 堀田善衛私記/中国映画三題/翻訳の勧め/ある少女の眼/詩人経済学者/本多秋五私記/川端康成から大江健三郎へ/1940年の想出
1995 鴎外・茂吉・杢太郎/『鷲の指輪』余聞/フレーゲの「日記」/バッハの作品は人類が残した最も完璧な仕事/戦後50年決議/精神の往復運動/日本の1995年
1996 読書道楽/安保条約の行く末/ヴァレリーの想出/近代の翻訳詩/日本文化における時間と空間について/戦後史のなかの丸山真男/牧谿からピカソへ
1997 「心ならずも」心理について/亡命者たち/思索への招待/中野重治断章/タゴール再見/宣長とバルトーク/老年について
1998 中村真一郎あれこれ/最後の日/「前衛」ということ/富永仲基異聞 消えた版木/サライェヴォと南京/周雖旧邦/ある友人のために/中村真一郎,白井健三郎,そして駒場/ルーマニア再訪/濃い霧の中から/日中快挙 昆劇と狂言との出会い
10 1999-2008  
20世紀の自画像/陳舜臣先生と話さなかった事/邦生の詩と真実/鍋島元子さんの想出/『婦人の友』百年に寄す/文学の役割/狐と義経と野村万作/木下順二の世界/戦争とプルースト/誰でも読む一冊の本について/鶴見俊輔小論/随筆についての随筆/一海知義さんとユーモア/一海知義さんと現代性 ほか


[著者]加藤周一(かとう・しゅういち)
1919年,東京に生まれる.東京帝国大学医学部卒業,医学博士.戦後,留学生として渡仏,医学研究のかたわら西欧各国の文化を吸収し,それが日本文化研究のきっかけとなる.東西文化に通じた旺盛な評論・創作活動を展開.2008年12月,逝去.


加藤周一自選集 1 1937-1954
四六判・上製カバー・平均420頁




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