ひとびとの精神史 全9巻
刊行にあたって/全巻構成/特色/プロフィール


目次


書誌データへ
ひとびとの精神史 全9巻
ひとびとの精神史 第1巻

■ 刊行にあたって

 本企画は,第二次世界大戦の敗戦以降,現在に至るまでのそれぞれの時代に,この国に暮らすひとびとが,何を感じ考えたか,どのように暮らし行動したかを,その時代に起こった出来事との関係で,精神史的に探究しようとする企てである.
 ここでいう精神史とは,卓越した思想家たちによる思想史でもなければ,大文字の「時代精神」でもない.市井のひとびとが,暮らしの中で感じ考え,振る舞い行動したこと,言い換えれば,生き方の姿勢としての精神の運動を探究すること.自分一個の「体験」でなく,他者との相互関係を含み,広い可能性に開かれた,精神の強度をもつ「経験」を記録すること.それが,「ひとびとの精神史」の課題である.
 2011年3月11日以降に起こった出来事,東日本大震災と福島原発災害は,危機の進行のうちに,この社会がはらむ根元的な矛盾を一挙に噴出させ,あらゆる分野に潜在していた深刻な問題群を露わにした.1945年8月15日という日付がそうであったように,3月11日も「あなたはどのように生きるか」という問いを私たちに突きつけている.3月11日の「経験」は,私たちが今まで「経験」の中に十分に繰り込むことができず,したがって「経験」を精神のあり方に連結することができないでいることへも,探究の視座を広げることを促している.それらは,以下のような問題群として,当企画の構成に組み込まれる.戦後史を一貫して,私たちの暮らしが戦争と深く関わりをもってきたこと.出来事にアメリカの世界支配が影を落としていること.出来事の「経験」にアジアとの深い関わりがあること.経済成長至上主義,「富国強兵」,天皇制,植民地主義,公害,差別と社会的排除など,連続する問題があること.沖縄,東北,九州,水俣,釜ヶ崎,福島など,「受苦」の場所でのひとびとの「経験」と精神のあり方が,「失われたもの」と「いまだ実現しないもの」との間に橋を架ける潜勢力をもつこと.
 時代の底に押し込められてきて,今生まれつつあるものが,眼に見えるものへと形を現わすことに力を添えることをも,当企画の更なる課題としたい.

  2015年春
編集委員一同


全巻構成









第9巻 震災前後―2000年以降 〈最終回/7月26日発売〉


特色


編集委員プロフィール

   
立教大学名誉教授.政治社会学.

   
オーストラリア国立大学教授.日本思想史.

   
オックスフォード大学教授.教育社会学,現代日本社会論.

   
東京大学教授.社会学.

   
法政大学教授.政治学.







Copyright 2016 Iwanami Shoten, Publishers. All rights reserved. 岩波書店