ひとびとの精神史 3

六〇年安保

1960年前後

戦後一五年目に大きく広がった安保闘争.その時代,各地の受苦の場で「声なき声」が発せられていく.

六〇年安保
著者 栗原 彬 , テッサ・モーリス‐スズキ 編集委員 , 苅谷 剛彦 編集委員 , 吉見 俊哉 編集委員 , 杉田 敦 編集委員
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
書籍 > シリーズ・講座・全集
シリーズ ひとびとの精神史
刊行日 2015/09/25
ISBN 9784000288033
Cコード 0336
体裁 四六 ・ 並製 ・ 354頁
定価 2,530円
在庫 在庫あり
戦後15年目,戦争の記憶がいまだ鮮明だった1960年に,安保闘争は大きな広がりを見せた.また,時代の軋みが日本各地に受苦の場を生み,数多の「声なき声」が発せられていく.美智子妃,樺美智子,小林トミ,丸岡秀子,石牟礼道子,谺雄二,森崎和江,坂本九,松田道雄ほかを取り上げる.


■内容紹介
「60年安保」に欠落していたもの,というよりは,むしろ「平和と民主主義」・経済成長至上主義が植民地化し,抑圧し,収奪してきたところとひとびと,近代市民社会を存立させるために非在とされてきたところとひとびとの精神史が問われねばならない.たとえば水俣,ハンセン病療養所,筑豊の炭坑,沖縄.
――「プロローグ」より


■編集部からのメッセージ
 戦後15年目,戦争の記憶がいまだ鮮明だった1960年に,安保闘争は大きな広がりを見せ,連日,国会議事堂を大群衆が取り囲みました.また,時代の軋みが日本各地に「受苦」の場を生み出し,数多の「声なき声」が発せられていきました.
 この巻では,1960年前後の日本社会を映し出す次の人物を取り上げます.美智子妃,樺美智子,小林トミ,丸岡秀子,石牟礼道子,山下善寛,松尾蕙虹,谺雄二,森崎和江,坂本九,野添憲治,基地で働くひとびと,松田道雄.
プロローグ 一九六〇年前後――政治の季節の市民の存立と人間の非在………栗原 彬

Ⅰ 戦後一五年目の問い
1 美智子妃と樺美智子――転換期の女性像………吉見俊哉
2 小林トミ――「市民」となった主婦たち………天野正子
3 丸岡秀子――女たちの安保闘争………新津新生
4 石牟礼道子――自分を低くして………花﨑皋平

Ⅱ いくつもの「声なき声」
1 山下善寛――チッソ第一組合員として………田中久稔
2 松尾蕙虹――三井三池炭鉱・立ち上がる妻と母たち………熊谷博子
3 谺雄二――「ライ」という長い旅,出発のとき………姜 信子
4 森崎和江――『サークル村』と『無名通信』の間………水溜真由美

Ⅲ 「政治の季節」の日常感覚
1 坂本九――「脱」政治化する大衆文化………鳥羽耕史
2 野添憲治――民衆の戦争責任と高度経済成長………山内明美
3 基地で働くひとびと――占領下沖縄の不条理を生き抜く………鳥山 淳
4 松田道雄――母親たちとともに………河合 蘭
[編者]
栗原 彬(くりはら・あきら)
1936年生まれ.立教大学名誉教授.政治社会学.著書に『「存在の現れ」の政治――水俣病という思想』(以文社),『証言 水俣病』(編,岩波新書)など.

[執筆者]
吉見俊哉(よしみ・しゅんや)
1957年生.東京大学教授.社会学・文化研究・メディア研究.著書に『親米と反米――戦後日本の政治的無意識』『ポスト戦後社会』(以上,岩波新書)など.

天野正子(あまの・まさこ)
1938-2015年.お茶の水女子大学名誉教授.社会学.著書に『「つきあい」の戦後史――サークル・ネットワークの拓く地平』(吉川弘文館),『〈老いがい〉の時代――日本映画に読む』(岩波新書)など.

新津新生(にいつ・あらお)
1940年生.信州現代史研究所代表.現代史・地域史研究.著書に『朝鮮戦争と長野県民』(信州現代史研究所),『青年たちの60年安保――長野県からみる闘争の足跡』(川辺書林)など.

花﨑皋平(はなざき・こうへい)
1931年生.哲学者.著書に『静かな大地――松浦武四郎とアイヌ民族』(岩波書店),『田中正造と民衆思想の継承』(七つ森書館)など.

田中久稔(たなか・ひさとし)
1976年生.朝日新聞記者(西部本社報道センター社会グループ).主な取材テーマは,水俣病,沖縄,安全保障問題.著書に『原田正純の遺言』(朝日新聞西部本社編,岩波書店)など.

熊谷博子(くまがい・ひろこ)
1951年生.ドキュメンタリー映画作家.映像作品に『三池終わらない炭鉱の物語』など,著書に『むかし原発いま炭鉱――炭都[三池]から日本を掘る』(中央公論新社)など.

姜 信子(きょう・のぶこ)
1961年生.作家.著書に『生きとし生ける空白の物語』(港の人),『声千年先に届くほどに』(ぷねうま舎)など.

水溜真由美(みずたまり・まゆみ)
1972年生.北海道大学准教授.日本近現代思想史.著書に『『サークル村』と森崎和江――交流と連帯のヴィジョン』(ナカニシヤ出版),『カルチュラル・ポリティクス 1960/70』(共編,せりか書房)ほか.

鳥羽耕史(とば・こうじ)
1968年生.早稲田大学教授.日本近現代文学.著書に『運動体・安部公房』(一葉社),『1950年代――「記録」の時代』(河出書房新社)ほか.

山内明美(やまうち・あけみ)
1976年生.大正大学准教授.歴史社会学・社会思想史.著書に『こども東北学(よりみちパン!セ)』,『「東北」再生』(共著.以上,イーストプレス)など.

鳥山 淳(とりやま・あつし)
1971年生.沖縄国際大学准教授.沖縄現代史.著書に『沖縄/基地社会の起源と相克 1945-1956』(勁草書房),『「島ぐるみ闘争」はどう準備されたか――沖縄が目指す〈あま世〉への道』(共編,不二出版)など.

河合 蘭(かわい・らん)
1959年生.出産ジャーナリスト.著書に『安全なお産,安心なお産――「つながり」で築く,壊れない医療』(岩波書店),『出生前診断――出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)など.
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