科学をいまどう語るか

啓蒙から批評へ

科学報道の批評性が高かったら科学技術政策も違った? 3.11を契機に過去の科学ジャーナリズムを大胆総括.

科学をいまどう語るか
著者 尾関 章
通し番号 19
ジャンル 書籍 > 岩波現代全書 > 自然科学・科学史
刊行日 2013/12/18
ISBN 9784000291194
Cコード 0340
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 248頁
在庫 品切れ
もしも日本の科学報道は批評性が高かったなら…….「技術」は弱者にもっと寄り添ったものとなり,「科学」にはもっと多くの人びとが関心を寄せ,科学技術政策もいまとは違っていたのでは? 科学記者歴30年.3.11を契機に,戦中・戦後の新聞科学ジャーナリズムを大胆総括.これからの科学と科学ジャーナリズムはどうあるべきか?

■編集部からのメッセージ

もしも日本の科学報道の批評性が高かったならば,「技術」は弱者にもっと寄り添ったものとなり,「科学」にはもっと多くの人びとが関心を寄せ,科学技術政策にも影響を与えたのではないか――元朝日新聞の科学記者が,3・11を契機に戦中・戦後の新聞科学ジャーナリズムを根底から見直します.反省を経て,今後の科学ジャーナリズムと科学のあり方を提案する,著者本人によれば「自省の書」です.
 思い起こせば尾関さんとの出会いは10年ほど前に遡ります.朝日新聞に連載されていた某コラムをまとめて本にしたいと思い,築地まで出かけて行ったことが最初でした.その後,いろいろなパーティなどで顔を合わせ,しばしば言葉を交わしていました.
 この本の直接のきっかけは,「はじめに」で述べられているように朝日新聞社発行の『Journalism』誌2011年5~7月号の連載「原発災害後の科学ジャーナリズム――『脱啓蒙』への進化をめざして」を目にしたことです.しかしそれよりずっと前,3・11以前に,朝日新聞の原発に対するスタンスの変遷を,何かの機会に聞かせていただいていました.それを思い出し,3・11後の新聞報道を見るにつけ,尾関さんはいま,何を考えておられるだろう,と考えていたときでしたので,さっそく連絡を取りました.
 当初の企画の発想は,この連載を軸にするというものでしたが,相談を重ねるに従ってテーマは深化していき,みなさんにお読みいただけるような本になりました.新聞社の科学部は,どういうタイミングで誕生してどのように科学を扱ってきたのか,戦前はどうだったのか,アポロ報道はどうだったのか…….過去の新聞記事を綿密に追いながら,将来を考えます.
 意外性とあまりのおもしろさに一気に読まされるでしょう.わたし自身は原稿や校正を読み返すたびに,目を見開かされたように感じました.読後はぜひご一緒に,科学をわたしたちの手に取り戻す手立てを考えましょう.

■ 関連書

● 『科学にすがるな!――宇宙と死をめぐる特別授業』 佐藤文隆,艸場よしみ
● 『科学者が人間であること【岩波新書】』 中村桂子
● 『原発事故と科学的方法【岩波科学ライブラリー】』 牧野淳一郎
● 『科学者に委ねてはいけないこと――科学から「生」をとりもどす』 尾内隆之,調 麻佐志 編
● 『脳と機械をつないでみたら――BMIから見えてきた【岩波現代全書】』 櫻井芳雄
尾関 章(おぜき あきら)
1951年東京生まれ.早稲田大学大学院修士課程修了(物理学が専門).1977年朝日新聞社に入り,83年から科学記者.ヨーロッパ総局員,大阪,東京両本社の科学医療部長,論説副主幹などを経て2013年退職.主に素粒子物理,宇宙論,量子論,生命倫理など基礎科学とその周辺を取材し,論説時代は環境,原子力問題も担当した.著書に『量子論の宿題は解けるか』(講談社ブルーバックス),共著書に『SF小説がリアルになる 量子の新時代』(朝日新書)などがある.

書評情報

理科教室 2014年4月号
読売新聞(朝刊) 2014年3月16日
プレジデント 2014年3月3日号
朝日新聞(朝刊) 2014年2月23日
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