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岩波科学ライブラリー

かけ算には順序があるのか

「6人に4個ずつミカンを配ると,ミカンは何個必要ですか」という問題に6×4=24と書くとバツになる!

かけ算には順序があるのか
著者 高橋 誠
通し番号 180
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 数学
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2011/05/26
ISBN 9784000295802
Cコード 0341
体裁 B6 ・ 並製 ・ 124頁
在庫 品切れ
いま小学校の算数で「6人に4個ずつミカンを配ると,ミカンは何個必要ですか」という問題に,6×4=24という式を書くとバツにされる.かける順序は本来どちらでもよいはず.算数教育にまつわる問題点をよくよく考えてみると,かけ算や数の数え方には,意外にも深いものを秘め,思いがけない広がりがあることがわかる.


■編集部からのメッセージ

6人に4個ずつミカンを配ります.全部で何個必要ですか?



 この問題に「6×4=24 答え24個」と書くと小学校では×にされることがあります.4×6でないといけないというのです.かけ算は順序を換えても答えは同じはずです.6×4を誤りとすることに対する是非を問う議論が古くからあり,現在でも論争がたたかわされています.
 学校の先生は順序には意味があり大切だと言います.逆に数学専門の研究者は順序にこだわるのは意味がないと主張します.みなさんはどう考えますか? 子どもに質問されて返答に窮するお父さん・お母さんもいらっしゃるかもしれません.
 本書の著者は,この論争から出発し,いったいいつ,なぜ順序にこだわる教育がはじまったのか,算数教育の歴史をさかのぼって検証していきます.
 著者の調査はさらに九九の歴史にも向かいます.すると昔の九九は「九九81」からはじまり「八九72」「七九63」……と「後が九の段」から始まっていた.日本の九九は大正時代までは,順序を換えても答が同じことを利用してどちらか半分だけを唱える「半九九」が主流だった,など意外な事実が見つかりました.
 算数から見えてくる「量」と「数」の世界をさまざまな歴史的エピソードとともに紹介する本書は,算数教育を論じる資料とするもよし,子どもに豆知識を披露して尊敬を勝ち得るためのネタ本とするもよしの1冊です.
まえがき

第一章 4×6と6×4は違うのか
かけ算の式の順序が違うとバツになる/今の「かけ算」の教え方/昔の「かけ算」の教え方/マスコミで最初に話題になったとき/数学者たちはどう考えているか/以前の文部省は,はっきり言っていた/かつては「かけられる数」×「かける数」/「かける/かけられる」はまぎらわしい/量のかけ算では交換法則は成り立たないのか/「1あたり量×いくら分」でも「いくら分×1あたり量」でもどっちでもいい/量の世界の式には意味があるけれど…

第二章 九九の来た道
文科省が九九の表から期待していること/九九の表を見直す/「総九九」と「半九九」/九九表の読み方は全部で何通りか/古代中国型(半九九)/近代中国型(半九九と総九九)/『乳母の草子』のかけ算/西洋型(半九九)/中国に西洋型九九は無かったのか/『塵劫記』の九九は南蛮渡来か?/明治維新で九九は変わらなかった/「割り算九九」という最後の障害

第三章 なぜ2時から5時までは3時間で,2日から5日までは4日間なのか
10の真ん中は5なのか/2時から5時までは3時間,2日から5日までは4日間/時の流れは分離量か連続量か

参考文献
あとがき
高橋 誠(たかはし まこと)
1948年生まれ.算数教育史家,ライター.
東京大学文学部倫理学科卒.
著書:『和算で数に強くなる!』(2009年,ちくま新書),『もう学校では学べない教科書』(共著,2004年,白泉社),『やわらか頭「江戸脳」をつくる和算ドリル』(共著,2006年,講談社+α新書)

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2011年9月25日
信濃毎日新聞(朝刊) 2011年7月24日
朝日新聞(朝刊) 2011年7月10日

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