岩波科学ライブラリー

受験算数

難問の四千年をたどる

算数の問題に人間はずっと悩んできた.鶴亀算など難問の起源を江戸時代から古代エジプトへとさかのぼる.

受験算数
著者 高橋 誠
通し番号 190
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > 数学
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2012/03/15
ISBN 9784000295901
Cコード 0341
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 134頁
在庫 品切れ
教科書にもない応用問題が出題される受験算数.人間は四千年も前からずっとこうした問題に悩まされてきた.「鶴亀算」は1世紀中国にもあり,解き方の原形は古代エジプトにまでさかのぼる.「ニュートン算」は文字通りアイザック・ニュートンの代数講義がはじまりで,明治の数学者が「最モタチノ悪イ」と憤ったほどの難問だった.


■編集部からのメッセージ

 鶴亀算を覚えていますか? 「鶴と亀が合わせて10匹,足の数は合計32本,鶴と亀はそれぞれ何匹か?」という問題です.「もし全部が鶴だったら足の数は……」というように解いていきます.中学受験を経験された方は,他にも植木算,旅人算,濃度算などをそれぞれの独特の解き方とともになつかしく思い出されるかもしれません.
 中学受験が終わるとこういう問題にはほとんどお目にかからなくなります.また方程式を習うと,どれも同じやり方で苦もなく解けてしまうこともわかってしまいます.あの苦労はなんだったのか.
 ところで,こういう受験算数の問題はいつ,だれが考え出したのでしょうか? 著者の探索の旅が始まります.すると,時代や地域を越えて,人間は難しい算数の問題を苦労して解いてきたことがわかってきます.古代のエジプト人も,適当な数をあてはめて解いていたのでした.
 受験算数の難問中の難問として知られているのがニュートン算です.その名の通り,アイザック・ニュートンが考え出した問題です.ケンブリッジ大学で教えられていたものですが,明治期の数学者・藤沢利喜太郎は,この問題を「最もタチが悪い」と憤ったほど難しい.これを勉強するのですから,小学生の皆さんも大変ですね.
 昔も今も人はみな算数に四苦八苦してきました.本書をご覧いただき,歴史をひもとき先人の苦労をわかちあえば,難問も楽しくなるかも?


▼冒頭の問題の答
 10匹全部が鶴だとすると足の合計は20本.これは問題の設定より,12本少ない.1匹の鶴を亀に置き換えると足の数は2本増える.だから12÷2=6で6匹を亀に置き換えないといけない.

 答:亀6匹,鶴4匹

たしかめ:6×4+4×2=32
(かけ算の順序がおかしいと思った人は『かけ算には順序があるのか』へどうぞ.)
第0章 受験算数の起源
「○○算」はいつからあったのか/江戸時代にあった「○○算」となかった「○○算」

第1章 古代の万能算――人類はまず「アテハメ」で解いた
昔も今もヒトはあまり変わらない/エジプトの仮定法/バビロニアの仮定法/旅人算を「盈不足術」で解く/鶴亀算を「盈不足術」で解く/過不足算を「盈不足術」で解く/仮定法と複仮定法/ヨーロッパの複仮定法/現代の教科書の問題を複仮定法で解く

第2章 金貨と食塩水の四千年
小判の金の濃度は「金位」/「てんびん算」とは何か/濃度の問題の起源を求めて――戦後の中学入試では/「てんびん算」の元は「混合算」/「混合法」の元は「和較法」/3種以上を混和する和較法/混合算の起源をヨーロッパに求めて――フィボナッチの『算板書』/探索は中世インドへ/ギリシアのアルキメデスへ/エジプトの混合問題/ニュートンの混合問題と錬金術/中国に混合算はあったのか/張家山漢簡『算数書』の「飲漆」の問題とは/江戸時代の混合問題

第3章 最もタチが悪いニュートン算
ニュートン,ケンブリッジで「算術」を教える/ニュートン自身による「ニュートン算」/明治時代のニュートン算/受験算数の「ニュートン算」とは何か/ニュートンの問題の別解/「行列はいつなくなるのか」――ある中学の入試問題の問題

参考文献
あとがき


コラム「チャレンジ!! 受験算術」
 1 鶴亀算
 2 仕事算
 3 旅人算
 4 分数の割合の問題
 5 流水算
高橋 誠(たかはし まこと)
1948年生まれ.算数教育史家,ライター.
東京大学文学部倫理学科卒.
著書:『かけ算には順序があるのか』(2011年,岩波科学ライブラリー),『和算で数に強くなる!』(2009年,ちくま新書),『やわらか頭「江戸脳」をつくる和算ドリル』(共著,2006年,講談社+α新書)他

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