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![]() ネアンデルタール人が滅んだのは,犬を飼っていなかったから? そんな研究があるほど,犬とわれわれとの関係は切っても切れないものです.なぜ犬がそれほど人にとって大切なものなのか,または大切なものになってきたかのすべてが,この本に紹介されています.
しかし,犬や猫といったペット動物と人との関係がこれほどに長く深いわりには,その行動研究はほとんど進まなかったのが実情です.有名なコンラート・ローレンツの『人イヌにあう』が今でも参照されるくらいです.
ところが,犬は,ヒトにいちばん近いとされるチンパンジーなどの霊長類にも優るコミュニケーション能力をもつことが実証的な実験で確認され,にわかに犬の認知科学が注目されるようになりました.犬にかぎらず,人間の認知科学にも,その成果は活かされています.犬と人との絆は,母と子の絆とかなり共通することが明らかになりました.
この本を読んで,愛犬や身のまわりにいる犬が,まったく違った動物に見えてくるかもしれません.
菊水健史(きくすい たけふみ)
1970年鹿児島生まれ.東京大学農学部獣医学科卒.獣医学博士.三共(株),東京大学農学部生命科学研究科助手を経て,2007年麻布大学獣医学部准教授,2009年より同教授.著書に『いきもの散歩道』(文永堂,2011).
永澤美保(ながさわ みほ)
1992年早稲田大学第一文学部卒.ビクター音楽産業(株)などを経て,2008年麻布大学大学院獣医学研究科動物応用科学専攻博士課程修了,学位取得(学術博士).現在は麻布大学獣医学部動物応用科学科伴侶動物学研究室特任助教.
1 犬との生活を始める
古代人も犬を飼っていた/犬との生活をスタートさせるまえに/犬にもみんな個性があります/犬と人に共通する病気の遺伝子/その子犬はどこから来たの?/犬の気持ちを大事に育てよう/犬は自分で身のまわりを選ぶ/子犬に取って大事な三つのこと
《コラム》ローレンツが愛した犬/幼少期における母親の影響/飼い主は犬にとっての“安全基地”
2 犬の感覚を通した世界
驚異の犬の嗅覚/犬はなんの匂いを嗅ぎ分けているのか/犬の聴覚は人に似ている/犬の優れた動体視力/犬の社会性を目の構造から理解する/なぜ人は犬の目に魅せられるのか/黒目と白目があるのは共同生活のたまもの/未だ明らかになっていない不思議な犬の能力/犬は三日の恩を忘れない/実験に見る記憶能力/
《コラム》犬の帰巣本能実験
3 犬の驚くべきコミュニケーション能力
クンクンとキャンキャンの区別/音の大きさと体の大きさ/ことばでつなぐ/犬のボディランゲージ/犬の顔の表情/尻尾の揺れでわかる好き嫌い/殺処分される犬たち/飼い主は特別な存在か/飼い主を見分ける/人の表情をよむ犬/人の視線をよむ/進化過程で獲得した犬の人をよむ能力
《コラム》「群れ」の誤解/犬は空気をよむ?
《やってみよう》中から聞こえてくる声は?/利き手はどっち?/飼い主の姿を思い浮かべる/指差しで正解を教えよう/ボールをどこに持ってくる?
4 犬の「ココロ」の起源を探る
犬はいつから犬だったのか/オオカミに近い柴犬/三万年前から飼われていた犬/犬と共にベーリング海峡を渡る/犬のネオテニーという進化/ギンギツネの実験からわかったこと/犬の自己認知/犬の他者理解/見つめ合うココロ/三項関係(自己―対象―他者)/模倣という知性/犬にもうつるあくび/共感のさまざまなレベル/不平等が嫌い/犬と人との共感は存在するのか
《コラム》鏡を怖がる犬/他者の知識状態の理解「ここほれ,ワンワン」/チンパンジーの協力行動/閉じ込められた仲間を救出!/犬は飼い主の状態に敏感
《やってみよう》マークテスト/Help me!!
5 犬と人を絆ぐ
「収斂進化仮説」/人も家畜化した/ネアンデルタール人はなぜ滅んだか/犬と共生で進化した現代人の能力/遊びごころと脳科学/目と目で繋がり,心が絆がる/共生のなかで芽生えた「生物学的絆」/目と目で繋がり,心が絆がる/オキシトシンというホルモン/オキシトシンと社会性/社会緩衝作用と犬との共同生活/犬はよき人の伴侶
《コラム》笑いについて/視線をつかったコミュニケーション/親子関係を支えるオキシトシン
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