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岩波科学ライブラリー

パンダ

ネコをかぶった珍獣

現役飼育係の著者が,繁殖の舞台裏や最新知見を交えつつ,生きものとしてのパンダの全貌をストレートに語る.

パンダ
著者 倉持 浩
通し番号 230
ジャンル 書籍 > 自然科学書 > 岩波科学ライブラリー
書籍 > 岩波科学ライブラリー > シリーズ〈生きもの〉
日本十進分類 > 自然科学
シリーズ 岩波科学ライブラリー
刊行日 2014/09/25
ISBN 9784000296304
Cコード 0345
体裁 B6 ・ 並製 ・ カバー ・ 126頁
在庫 在庫あり
かぶりもの? いいえ,生きものです! シロとクロの理由,妙に丸い顔,タケで生きている不思議……あなどるなかれ,パンダの謎は奥深い.飼育係に「なってしまって」早10年.雨の日も雪の日もパンダを見続けてきた著者が,最新の研究知見や繁殖の舞台裏,マスコミとの葛藤を交えつつ,生きものとしてのパンダの全貌をストレートに語る.(カラー版)


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著者からのメッセージ

縁あって2004年4月から,上野動物園でジャイアントパンダ(以下「パンダ」)の飼育係をしている.取材に訪れるマスコミの方や来園者から,この仕事をよくうらやましがられるが,実は上野動物園職員の中では,パンダは敬遠されがちだ.なぜなら,とても「気をつかう」動物だからだ.
エサはタケと決まっているのだし,パンダ自体に気をつかうことはほとんどないため,飼育だけならそれほど難しくはない.しかし,パンダの注目度や影響力には計り知れないものがある.それゆえ,飼育すること以外で「気をつかう」ことが多いのだ.
そして,パンダと毎日接していると,彼らが「かわいい」だけの動物ではないことがよくわかってくる.これまで,私は4頭のパンダの飼育をしてきたが,未だにパンダのいる部屋に一緒に入ったことはない.それは,パンダはちょっと変わり者だとはいえ,基本的にはただのクマだからだ.
上野動物園のパンダは,その飼育施設も,動物としての扱いも,基本的にクマと同等である.飼育係をしていると,かわいいと思うよりもむしろ,怖い思いをすることの方が多いかもしれない.これまでにもさまざまな取材や原稿依頼をうけて,そんな恐るべきパンダのエピソードを話したり書いたりしてきたが,パンダのイメージが壊れるという理由から,取り上げてもらえないことが多い.
パンダは怖いだの,ただのクマだの,いったいこの飼育係は何を言っているのか?と思っているあなた!きっと本書を読んだ後には,パンダに対するイメージが変わっていることだろう.もちろん,見た目通りのかわいらしさも兼ね備え,憎めない面もある.本書では,そんなかわいらしさから驚愕の一面まで,これまでの私の経験や知見を余すところなく書き記していこうと思う.
それでは,パンダの本性をひとつずつ暴いていくことにしよう.
(本文「はじめに」より抜粋,一部改変)


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編集部からのメッセージ

なんて「サマになる」動物なのだ――著者の倉持さんから送られてきた写真の数々をみて,思わず唸ってしまったことを思い出します.食べていても,寝ていても,あるいは不遜な笑みを浮かべて観衆を見渡していても……何をしていても絵になる,というかマンガになるという点で,やはりパンダは圧倒的だと,認めざるを得ません.
てんこ盛りの写真をパラ見していただく限りでは,「これは誰かが入っているかぶりものにちがいない」と誤解されて終わってしまいそうですが,やはりそこは生きもの.パンダの知られざるナマの側面を,ぜひ本文でたっぷり味わってください.実際,意外とナマナマしかったりしますが,親しみも倍増すること,うけあいです!


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 はじめに

■1 パンダをよく見てみよう
パンダはどこがクロいのか?/パンダの手はどうなっている?/これがパンダだ!/パンダのくらし・基本のき/パンダの目――人間は見えているのか?/耳と鼻/柔軟性――ネコっぽいカラダ/行動――高いところが好き/そして……カラフルなウンチ
  COFFEE BREAK パンダの顔が丸いのは

■2 珍獣パンダのさらなる秘密
元祖パンダは赤錆色/親戚はだれ/パンダの中の微妙なちがい/パンダのルーツ――アジア発か,ヨーロッパ発か/「パンダの親指」の真相/草食化しきれていない?/腸内細菌の謎/肉の味がわからない?/肉食パンダの衝撃/パンダにも美男美女?/シロとクロの理由/怒ったときは「ワン」と鳴く
  COFFEE BREAK 右利き?左利き?

■3 パンダを飼うということ
パンダの飼育係/運んでくるのに一苦労/北京式から四川式へ/タケの調達/一人ぼっちはかわいそう?/パンダの病気/パンダのトレーニング/報道との戦い
  COFFEE BREAK 甘いものにはうるさい?パンダ

■4 リーリーとシンシン,繁殖の舞台裏
パンダの繁殖はむずかしい!/タイミングと相性/繁殖シーズン2012/そしてまた発情の季節――繁殖シーズン2013/中国人スタッフの功績

■5 パンダの祖国・中国
知られざる野生のパンダ/山手線内に4頭/「絶滅の危機」をめぐって/シンプル・イズ・ベスト/双子入れ替え大作戦/そしてまた野生へ
  COFFEE BREAK 着ぐるみ登場

■6 パンダ・フィーバーの行方
書物のなかのパンダ,らしきもの/「発見」,そして毛皮の時代/パンダ生け捕りの時代/カンカンとランランがやってきた/パンダ争奪戦/国賓扱いの来日/ふたたび,みたびのパンダブーム/微妙な風向きの変化

 あとがき
 付録 パンダに会える!日本の動物園
倉持 浩(くらもち ひろし)
1974年生まれ.神奈川県横浜市出身.東京農業大学農学部畜産学科卒業後,同大学大学院農学研究科畜産学専攻博士前期課程修了.理化学研究所・脳科学総合研究センターのテクニカルスタッフを経て,恩賜上野動物園職員.ハダカデバネズミ,オオアリクイ,アルマジロ,ハリネズミなどの動物を担当した後,2004年よりジャイアントパンダの飼育に携わる.幼い頃は近所で昆虫採集に明け暮れ,大人になった現在でも,相変わらず近所や動物園内で虫を探している.その観察眼と洞察力が,飼育係という仕事に役立っているのかもしれない.著書に『パンダもの知り大図鑑――飼育からわかるパンダの科学』(誠文堂新光社),『まるまるパンダ――リーリー&シンシン』(アスペクト)がある.

書評情報

京都新聞(朝刊) 2014年12月7日
日経サイエンス 2014年12月号
図書館教育ニュース 2014年11月28日号〔附録〕
理科教育ニュース 第930号(2014年11月18日)
朝日新聞(朝刊) 2014年11月16日
日本農業新聞 2014年10月18日

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