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詩のなぐさめ

詩はそっけない.でも,いざというときに寄り添う…あなた独りではない,と.詩の沃野への導きとしての一書.

詩のなぐさめ
著者 池澤 夏樹
ジャンル 書籍 > 単行本 > 文学・文学論
刊行日 2015/11/25
ISBN 9784000610834
Cコード 0090
体裁 四六 ・ 上製 ・ 248頁
在庫 在庫あり
詩はそっけない.少し遠い.一度ではわからない.でも,いざというときに寄り添う.留まる…あなた独りではない,と.圧縮された言葉と感情の塊である詩が解凍したときに広がる沃野.広大な詩の花園から一輪を,あなたの部屋に飾ろう.詩が飛翔し再生する有様は,魂の純化と救済の姿.古今東西へと放たれる池澤夏樹の真骨頂,芳醇なエスプリの空間です.


■編集部からのメッセージ
 世界文学,日本文学の導き手として,また社会批評においても注目を集め,折々にその言葉が待たれる文学者,池澤夏樹さん.本書はその池澤さんの『図書』での好評連載「詩のなぐさめ」33回分をまとめるものです.
 連載は,漢詩,俳句・短歌を含め,岩波文庫の詩を端緒に,自由横溢な空間で詩のエスプリを読み解くエッセイです.無尽蔵ともいえる文庫からの庫出しに加え,古今東西の詩という芳醇な花園への冒険――.現在も『図書』での連載は続いていますが,池澤さんご自身こそがこの宇宙に遊んで,連載の限りは地平線遠く,当分見えるものではありません.この悦楽の一端を,書籍で味わっていただこうというのが本書です.

 ときにご自分の父・福永武彦,母・原條あき子の憧憬をまじえながら展開する「詩のなぐさめ」は,著者自身の記憶の深奥にも,ギリシア・ローマの心根にも,漢の時代の愉悦にも,明治に吹いた薫風にも立ち寄りつつ,詩がなぜ人間の営みの原始から現代にいたるまで,立ち消えることなく,さまざまな言葉と形をとりながら表わされ,引き継がれ,立ち戻り,再生されてきたのかをつまびらかにします.
 ――詩はそっけない.少し遠い.冒険小説のように手を引いてどこかへ連れて行ってはくれない.はじめはちょっと努力して,こちらから近づかなければならない.一度ではわからない.少ない言葉に圧縮されたその魂は,なかなか解凍しない.でも,二度,三度読んでみればいい.そうすれば,詩は今いるところであなたの心に作用する.あなたの感情に寄り添う.あなたのところに留まる.あなたは独りではないと伝えてくれる.

 広大な花園から,一輪の花を自分の部屋に持ち帰って飾ってみる――そんなコンセプトの「詩のなぐさめ」.池澤さんのファンのみならず,広く読書家を魅了する一冊です.
I
イェイツの詩と引用の原理
岑参の「胡笳の歌」と憧れの原理
ギリシャの墓碑銘と戦争論
ローマの諷刺詩と女嫌い
ヘレン讃歌,ならびにポーの訳のこと
『玉台新詠集』と漢詩のやわらかい訳
秋の歌と天使の歌
詩から詩へ,あるいは母と父の詩など
唐詩の遠近法とゴシップ的距離
この妻にこの夫,あるいは英雄の不在とT・S・エリオット
楽な時の俳句,辛い時の俳句

II
李賀の奔放と内省
きみを夏の一日にくらべたら
何ひとつ書く事はない
戦闘的な詩人たち
西脇さんのモダニズムとエロス
隣国の詩と偏見と
批評としての翻訳
李白からマーラーまでの二転三転
酒と詩とアッラーの関係について
歓喜から自由へ
詩と散文,あるいはコロッケパンの原理

III
奄美民謡,おもろと琉歌
おずおずと鬼貫へ
ブレイクのリズムと思想
三好達治の音韻のセンス
舞姫たちのなめらかな肌は
倭は国のまほろば
ペルシャをめぐる謎
今すぐに効くマヤコフスキー
天井桟敷のプレヴェール
青春と青年と中原中也
桜児と三重の采女

あとがき
本書で扱った書籍一覧
池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年生まれ.作家,詩人.
翻訳,書評,小説,エッセー,評論など多岐にわたって活躍.『スティル・ライフ』で芥川賞,『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞,『花を運ぶ妹』で毎日出版文化賞などのほか,河出書房新社での個人編集「世界文学全集」では毎日出版文化賞,朝日賞などを受賞.著書に『カデナ』『氷山の南』『セーヌの川辺』『アトミックボックス』など多数.

書評情報

読売新聞(朝刊) 2016年1月19日
ダ・ヴィンチNEWS 2016年1月8日掲載
神戸新聞(夕刊) 2015年12月17日

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