事典 日本の多言語社会

様々な外国語,各地の方言,アイヌ語,日本手話など,多様な言語が織り成す日本の社会状況を展望する.

事典 日本の多言語社会
著者 真田 信治 , 庄司 博史
ジャンル 書籍 > 辞典
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2005/10/25
ISBN 9784000803052
Cコード 0536
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 400頁
定価 3,960円
在庫 在庫僅少
近年日本では,外国人住民や観光客の増加によって街角の言語表示や,メディア・情報サービスが大きく様変わりしている.一方,日本固有の言語や方言を見直す動きも強まっている.これら多様な日本語と外国語が織り成す現代日本の社会状況を,151のキーワードを通して浮き彫りにし,豊かな多文化共生社会への道筋を展望する.

■編者からのメッセージ

 現代社会ではグローバル化によって言語の淘汰が進む一方,ネット上では様々な言語が飛び交い,また少数言語の保護をめざす運動も現れている.「単一言語・単一民族」といわれ言語問題とは無縁であると思われてきた日本でも,歴史上「日本語」が政治的に生み出される過程で,方言やアイヌ語という言語の多様性が無視され,圧殺されてきたことを論ずる研究が増えている.
 今,国内でも再び多くの外(国)語が行き交うようになった.さまざまな渡日の経緯を背景にしながら,労働者,地域住民,帰国児童などとして急増しはじめた外国人は,当初から役所,住民摩擦,教育問題など,ことばゆえのトラブルに直面してきた.しかし,多文化共生のうごきのなかで,NGO・NPOや行政は,彼らと住民として共存する観点から,言語的障壁をとりのぞくさまざまな試みを打ち出してきている.また,一方では,欧米の運動と呼応するような,方言や地域語を再評価する現象,そして手話をふくめあらゆる人々の表現と情報アクセスへの権利を認めようとする運動が,日本の市民グループなどでも育ちつつある.
 このような状況を背景に,自らのことばによって伝達する権利と,[日本/地域]社会にアクセスする権利という両面から,移住民言語と日本語の相互理解にかかわる問題を取り上げたのが本事典である.また,言語と方言とのあいだには厳密な境界は存在せず,話者にとって方言もかけがえのない表現手段であり,自己の表象でありうるという観点から,日本土着の言語(方言,アイヌ語,日本手話)をも同等な問題意識でとらえている.基本的な言語権を考えるために,また偏狭なナショナリズムや少数派の切り捨てに対峙するために,現代日本の多言語状況の見取り図を提供し,それに関連したキーワードの解説をまとめた.
1 基本概念
多言語国家/少数言語/言語イデオロギー/言語権/多文化・多言語主義/多言語政策/多文化教育/移民言語政策/バイリンガル教育/外国人言語支援/第2言語教育/母語教育/情報のバリアフリー/言語差別/多言語社会と英語支配

2 日本の状況・政策
日本の外国人/日本の外国人政策/日本の多言語化/日本の多言語景観/日本の外国人言語政策/行政の多言語情報サービス/外国語表示/コミュニティ通訳/外国語相談/外国語医療支援/外国語福祉支援/外国語緊急情報/司法通訳翻訳/外国語ハンドブック/図書館サービスと多文化社会/企業の多言語発信/企業内活動の多言語化/定住外国人への日本語教育/外国人児童・生徒と学校/外国人家庭と学校/ 中国帰国児童・生徒/ブラジル人児童・生徒/日本語学習指導・補助/外国人入試特別枠/日本語教育と日本語支援/日本語教室/日本語学校/日本語教育と文化理解/夜間中学校/日本語能力試験/外国人学校/外国人民族教育/外国人名/外国語産業/日本の外国語教育/日本人の外国語能力/日本での英語使用/外国語入学試験/海外帰国児童・生徒/点字/手話通訳

3 エスニック・コミュニティ
日本手話・日本手話話者/アイヌ・アイヌ語/エスニック・メディア/エスニック放送/エスニック・ホームページ/エスニック・ビジネス/イスラーム教徒/カトリック教会/韓国・朝鮮人/中国人/ブラジル人/スペイン語系南米出身者/フィリピン人/ベトナム人/ラオス人・カンボジア人/ビルマ人/タイ人/インドネシア人・マレーシア人/南アジア出身者/ロシア人/英語コミュニティ/在日韓国・朝鮮人の言語使用/在日中国人の言語使用/在日ブラジル人の言語使用/在日スペイン語系南米出身者の言語使用/在日フィリピン人の言語使用/在日ベトナム人の言語使用/在日タイ人の言語使用/在日インドネシア人・マレーシア人の言語使用/在日南アジア出身者の言語使用

4 日本語の多様性
ピジン日本語/日本語への外国語の影響/日本における対外国人言語行動/やさしい日本語/小笠原の多言語社会/沖縄の多言語社会/東京の多言語状況/琉球語の地位/東北方言の地位/ネオ方言/ウチナーヤマトゥグチ/集団語/業界用語/専門語・術語/若者語・キャンパスことば/隠語・スラング・卑罵語/ジェンダーと日本語/役割語/言語行動の職業差

5 日本語施策
国語・日本語/戦後の日本語政策/標準語・共通語/方言運動/テレビ放送用語の現在/演劇と方言指導/言語習得と方言/国語教育と方言/日本語教育と方言/医療・福祉と方言/方言産業/方言変換ソフト

6 海外社会の日本語
台湾の日本語と植民地/現代台湾における日本語事情/韓国の日本語と植民地/現代韓国における日本語事情/ミクロネシアの日本語/サハリンの日本語/北米・ハワイの日本語/南米の日本語/海外駐在員の生活と言語/外国の日本人学校

7 社会言語学関連用語
民族語・国際語・国際公用語/言語と方言/言語意識/ことばと帰属意識(アイデンティティ)/母語・第1言語/言語学習臨界期/セミリンガル/言語接触/言語同化/言語干渉/言語交替・維持・喪失/ダイグロシア/コード切り替え/ドメイン/スピーチ・アコモデーション/フォリナー・トーク/レジスター/ことばのゆれ/ドリフト/ことばのプレステージ/ピジンとクレオール/中間言語/コミュニティ言語/移民・移住者

書評情報

學燈 2006年春号
月刊言語 2006年4月号
百楽 2006年1月号
いくお~る 2005年12月号
日本語学 2005年12月号
日本語教育新聞 2005年11月1日号
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