杜甫詩注 第I期・10冊

編集にあたって/全巻構成/組見本/特色

吉川幸次郎メッセージ/略歴

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■ 編集にあたって

 杜甫は後世の人々から,「詩聖」すなわち古今最高の詩人として敬愛を集めた.それは杜甫の詩が有史以来の詩の成果を集成すると同時に,宋以後に確立する生活に密着した精緻な詩風を開拓したからである.そうした杜詩に対して,宋代このかた膨大な注釈が著わされている.しかし,本書の著者吉川幸次郎は,それらのいずれにも満足せず,自らの思索による新しい見解と,調査による新しい知識を加えて,この偉大な詩人の業績をより正確な形で現代の読者に伝えることを企図した.著者は杜甫の現存する詩一千四百首余りについて,単なる語の説明にとどまらず,杜甫の意識にあったもの,さらには意識の下にあったものを掘り起こし,可能なかぎり平易で明晰な日本語で解き明かすことに意を注いでいる.
 『杜甫詩注』全二十冊は一九七七年に筑摩書房から刊行が始まり,一九八三年までに五冊が出たが,その中途で著者の逝去に遭ったため,続刊は断念された.だが,著者の筐底には相当量の草稿が遺されており,このまま埋もれさせるには忍びないものがある.このたび,できるだけ遺稿を生かしながら,編者の私がいささかの整理と補筆を行なう形で,『杜甫詩注』の再スタートが実現した.今年二〇一二年は,あたかも杜甫生誕一千三百年に当たる.いま編者として,著者がかつて意図したように,この書が多くの読者に迎えられることを願っている.

 こうぜんひろし 一九三六年,福岡県生まれ.京都大学名誉教授.中国文学専攻.著書『杜甫――憂愁の詩人を超えて』『中国名文選』『漢語日暦』『仏教漢語五〇話』など多数.


中国・日本の文学的伝統に重きをなした表現形式の見事な復活として,『杜甫詩注』は戦後日本文学の画期的な作品である ──加藤周一(朝日新聞夕刊「文芸時評」一九七七年九月二七日)

■ 全巻構成

第一冊 総序 書生の歌 上  (第1回/11月28日発売)

第二冊 書生の歌 下

第三冊 乱離の歌

第四冊 行在所の歌 帰省の歌

第五冊 侍従職の歌

第六冊 教育長の歌  (第2回/2013年3月22日発売)

第七冊 甘粛の歌 上

第八冊 甘粛の歌 下

第九冊 成都の歌 上

第十冊 成都の歌 下

* 第II期の刊行予定については,第I期完結時にお知らせいたします.

組見本(第六冊より)
■ 特色

◆ 中国文学史上最高の詩人,杜甫(七一二―七七〇)の全詩を収録.第I期一〇冊は全二〇冊の前半,成都滞在時代までを扱う.

◆ 杜甫は,唐帝国の激動の時代を生きた.各詩を年代ごとに配列して巻編成を行い,その生涯をたどりながら鑑賞する.

◆ 杜甫の作詩は,〈詩史〉(一身で中国詩の歴史を体現する)と称されるほど,多彩で奥行きが深い.詩の原文・よみ下し・訳に加え,すべての句に精細な注釈を施すことで,この詩人の営み全体に迫る.

◆ 中国学の泰斗,吉川幸次郎が生涯をかけて取り組んだ仕事が,新たな編集のもとに甦る.






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