就活とブラック企業


著者からのメッセージ
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編集部だより
著者からのメッセージ

 最近若者たちの間で,「就職したらひどい目にあうので避けた方がよい企業」という意味の「ブラック企業」という言葉が広がっています.今回(二〇一〇年一一月一七日,「エルおおさか」にて),「若年労働者の過労死・過労自殺からみるブラック企業の見分けかた」をテーマとしてシンポジウムを行うことにしたのは,就職活動中の学生,就職して間もない新人社員らにスポットを当てて,若年労働者が企業に就職し,過労死・過労自殺に追い込まれていく過程や構造を,次のような点から多角的に明らかにして,参加者みんなで一緒に考えたいという思いからです.

  「ブラック企業」の具体的な例として,どのようなものがあるか.また「ブラック企業」以外は問題がないのか.
  未曾有の就職難の中で,学生たちは早くから必死の思いで「シューカツ」をしているが,そこから見えてくる企業の姿はどのようなものか.
  学生の労働相談NPOや地域ユニオン青年部の取り組みからみて,若者の働きかたのどこが問題か.また職場の法律違反を是正させるには,どうしたらよいのか.

 報告と議論を通じて,若者を過労死・過労自殺に追い込んだり,違法な解雇や賃金不払いなどの違法・不当な働かせかたをしたりしているのは,一部の「ブラック企業」だけではなく,多くの企業にみられるものであること,それゆえ,「ブラック企業」に就職しなければよいという問題ではなく,法令を遵守させていくことが社会全体の課題であることが明らかになったと思います.
 このシンポジウムの内容は,これから就職活動に取り組む学生,既に企業に就職し過酷な労働をしている皆さんに,さまざまな示唆を与えるものと思われたことから,今般,岩波ブックレットとして出版される運びとなりました.これを題材に,若者の就職問題,労働問題の実情と,改善の方策について広く議論していただければ,これに勝る喜びはありません.
(本書冒頭「シンポジウム『ブラック企業の見分けかた』の開催にあたって」より)


編者・執筆者プロフィール

<編者>
森岡孝二(もりおか・こうじ)
1944年生まれ.関西大学経済学部教授.専門は企業社会論.株主オンブズマン代表.大阪過労死問題連絡会会長.著書に『働きすぎの時代』(岩波新書,2005年),『強欲資本主義の時代とその終焉』(桜井書店,2010年)など.

<執筆者・登場順>
岩城穣
1956年生まれ.1988年弁護士登録(大阪弁護士会).過労死弁護団全国連絡会議事務局次長.大阪過労死問題連絡会事務局長.

和田香
1981年生まれ.2009年弁護士登録(大阪弁護士会).大阪過労死問題連絡会・自死遺族支援弁護団所属.

松丸正
1946年生まれ.1973年弁護士登録(大阪弁護士会).過労死弁護団全国連絡会議代表幹事.

吹上了
織物製造会社経営者.大学新卒入社4カ月の息子を「日本海庄や過労死事件」で失った父親.

畑中文(仮名)
1988年京都府生まれ.2007年関西大学経済学部入学.メーカーに就職予定.

川村遼平
1986年生まれ.東京大学大学院総合文化研究科修士1年.NPO法人POSSE(ポッセ)事務局長.季刊誌『POSSE』にて「労働相談ダイアリー」を連載中.

中嶌聡
1983年生まれ.2008年に外資系人材派遣会社を退職と同時に,地域労組おおさか青年部副部長に就任(現書記長).団体交渉権と団体行動権を手に取り,「正しくキレる」を実践中.


目次

シンポジウム
「ブラック企業の見分けかた」の開催にあたって岩城 穣

I部 就活とブラック企業を考える
1 大学生の就職活動と就職後の働きかた森岡孝二
2 「日本海庄や過労死事件」から見たブラック企業松丸 正
3 息子を就職四カ月で失って吹上 了

II部 学生の就活体験と若者の労働実態
1 私のシューカツ体験畑中 文
2 なぜ若者は会社を去るのか――ハローワーク前調査から川村遼平
3 「正しくキレる」手段としてのユニオン中嶌 聡

III部 質疑応答

あとがき森岡孝二




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