フォト・ルポルタージュ 福島 原発震災のまち


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『フォト・ルポルタージュ 福島 原発震災のまち』

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編集部だより
編集部からのメッセージ

 本書は,震災直後から福島に入り,現地を密着取材してきた著者によるフォト・ルポルタージュです.原発震災という複合災害の実態を,カラー写真(32頁・41枚)とともに伝えます.
 著者の豊田直巳さんは,フォトジャーナリストとして,パレスチナや旧ユーゴなど世界の紛争地を取材してきました.その視線は,紛争にまきこまれ,日常生活を破壊される一般の人びと(特に女性や子どもなど)に向けられてきました.今回のブックレットでも,その視線は変わりません.放射能汚染や行政の対応に翻弄される住民たちの生の声を伝えながら,行政や報道のあり方,原発のもつ危険性や,その差別的な構造などを問います.
 編集担当である私が,震災後,豊田さんに連絡をしたのは3月17日でした.豊田さんの所属する日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)の人たちが,震災直後から福島をはじめ被災地で取材していることを,JVJAのツイッターなどで読んでいました.そして,17日に豊田さんが一時的に東京に戻ってきていることを,やはりツイッターで知り,急ぎ連絡を取り東京でお会いしました.もちろん,私自身,原発事故に関するマスコミ報道に不信感をもっていましたが,この時点で,1週間近く現地を見てきた取材当事者の語る言葉は,テレビや新聞のニュースなどの内容とずいぶんと違っている印象を強く持ちました.現地の実態や,住民たちの本当の声を伝えることの重要性を改めて思い知らされたのが,このブックレットを企画したきっかけの一つです.
 言うまでもなく,福島原発は福島ではなく,東京に電力を送り続けていました.その原発が震災に見舞われて爆発し,制御不能となり,福島の人たちから生活や土地を奪っていく.本書の「はじめに」で浪江町の女性が「見えない戦場で戦っているみたい」と語っています.放射能の被害は目に見えません.その見えない脅威が福島のまちや村を襲う.飯舘村のような,原発から50キロも離れ,原発とは対極の「スローライフ」の村づくりをしてきた自然豊かな村も,放射能汚染のために全村民が避難させられる.酪農家は,何年もかけて育ててきた牛を手放し,実質的な「廃業」に追い込まれる――.
 事態は進行中です.私たちに何ができるのか,というのは,とても難しく,重い課題です.でも,現実を知り,感じること,考えることが第一歩だと思います.ぜひ多くの方に手にとっていただければと思います.
(編集部・田中宏幸)


著者プロフィール

豊田直巳(とよだ・なおみ)
フォトジャーナリスト.日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)会員.1956年静岡県生まれ.83年よりパレスチナ取材を開始.95年以降は中東のみならず,アジア,バルカン半島,アフリカなどの紛争地をめぐり,そこに暮らす人びとの日常を取材している.2003年,平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞受賞.著書に『戦争を止めたい――フォトジャーナリストの見る世界』(岩波ジュニア新書),『難民の世紀 漂流の世紀』(出版文化社),写真集に『イラク 爆撃と占領の日々』(岩波書店),『イラクの子供たち』『パレスチナの子供たち』『大津波アチェの子供たち』(以上,第三書館)など.


目次

はじめに――見えない戦場

第1章 終わりの見えない恐怖へ

第2章 漂流する避難民

第3章 放射能に襲われた「までい」の村

第4章 津波と原発震災

第5章 「原発で 手足ちぎられ 酪農家」

おわりに――命を守るために
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