キャッシュ・フォー・ワーク

震災復興の新しいしくみ

いま被災地のために本当に必要な復興政策とは何か? 注目を集めるキャッシュ・フォー・ワークのしくみ.

キャッシュ・フォー・ワーク
著者 永松 伸吾
通し番号 817
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2011/09/07
ISBN 9784002708171
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 88頁
在庫 品切れ
被災者に仕事と収入を確保し,生きがいを見いだせる生活を守るためには何が必要なのか? 被災地のために本当に必要な復興政策とは何か? 国際的に注目を集めるキャッシュ・フォー・ワーク(CFW)の考え方としくみを,東日本大震災直後からCFWを提案してきた著者が,被災地での取り組みもまじえ紹介する.

■著者からのメッセージ


私が本書で取り上げたいのは,しごとの問題です.本稿執筆時点において,岩手・宮城・福島の三県だけでも,地震発生以降,約一二万人の方が離職しています.(略)
かつてのような右肩上がりの経済においては,災害はむしろ経済活動を活発化させ,経済成長を加速することすら期待されました.しかし,今日のように経済は停滞し,産業構造も変化した我が国にとっては,災害を経済成長の起爆剤にすることはそれほど容易なことではありません.災害後にしごとを確保し,被災者の収入と生きがいを維持するためには,新しいしくみが必要だと思います.
本書は,そのためのしくみとして「キャッシュ・フォー・ワーク」を紹介することを目的として執筆されました.この震災以前はほとんど知られることの無かったことばですが,最近では災害ボランティアや自治体職員の方もよく口にされる言葉になってきました.マスコミでも頻繁に取り上げられ,すでに本書を手に取った方も,どこかでこの言葉を耳にされた方がほとんどではないかと思います.
ただ,キャッシュ・フォー・ワークについてまとまった文献は,これまでまったく存在しませんでした.私も震災直後からキャッシュ・フォー・ワークを提案してきた者の一人として,それがいったいどのようなしくみなのか,わかりやすくまとめておく必要性を感じていたところです.それと同時に,現在東日本大震災の被災地で生まれつつあるキャッシュ・フォー・ワークの動きについても紹介し,今後の復興を展望することと,加えて将来の災害に適用する際の議論の土台を提供することも,本書の目的としています.
(本書「はじめに」より)

■編集部からのメッセージ

東日本大震災直後の2011年3月13日,Web上に「被災地にCash for Workを」という文章がアップされました.本書の著者である永松伸吾氏のブログ「減災雑感」の1記事です.そこでは,「キャッシュ・フォー・ワーク(Cash for Work; CFW)」という聞きなれい災害対策が提案されていました.
この提案はインターネット,特にtwitter上で大きな話題を呼びました.専門家と一般市民,被災者とそうでない人たちとの間で,震災から間もない時期に,本当に必要な対策はどんなものか,盛んに議論されたのです.3月23日には,永松氏を中心に,「CFW-Japan」という団体が結成されました.CFWは,これまでの社会運動とは異なる広がり方を示したといえます.その後はネット上の話題にとどまることなく,具体的な支援として現実化の動きをみせています.
CFWとはどのようなものなのか,震災後どのように活用されているのか,詳しくは本書をご覧ください.
(編集部・中山永基)

永松伸吾(ながまつ・しんご)
1972年生まれ.関西大学社会安全学部・大学院社会安全研究科准教授.「CFW-Japan」代表.専門は防災・減災・危機管理政策,災害経済学.大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程退学.博士(国際公共政策).
著書に『減災政策論入門――巨大災害リスクのガバナンスと市場経済』(弘文堂,2008年.2009年度日本公共政策学会著作賞)など.

書評情報

読売新聞(朝刊) 2011年11月20日
神戸新聞(夕刊) 2011年9月26日
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