災害支援に女性の視点を!


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編集部だより
編集部からのメッセージ

 「災害支援に女性の視点を!」などと言うと,「災害で大変な時に,男も女もあるか」「男だってしんどいときに女だけ特別扱いするな」などと考える人も少なくないかもしれません.しかし,事情を理解すれば,そう簡単でないことが理解できると思います.
 国際的なデータでみても,日本は先進国の中では,女性の社会進出がダントツに遅れています(詳細は本書や竹信三恵子『女性を活用する国,しない国』岩波ブックレット).なので,女性の声が,そもそも社会的な政策に反映されにくいという事情があります.こうした社会が災害に見舞われると,被災者支援が男性を基準としたものになりがちです.
 本ブックレットでも紹介していますが,たとえば,被災地ではこんな問題が起きています.避難所に衝立がないために,着替えや授乳などに困る.避難所などでの大量の炊き出し当番が,被災者である女性に任せられる.自宅においても,他地域から避難してきた親戚の世話・介護などの負担が重くのしかかる.あるいは,避難所などでのセクハラやDVなども,顕在化しにくい.
 しかも,災害支援において,女性の視点が置き去りにされることで,困るのは女性だけではありません.普段から家事・介護などを任せられ,生活感覚を備えている女性の視点が欠如することで,お年寄りや障害者,子どもなどにもしわ寄せがいくことにもなります.求められているのは,女性の視点を入れることで,誰もが希望のもてる多様な支援のあり方を考えることなのです.
 編者のお二人をはじめとする,本ブックレットの執筆者たちは,東日本大震災を受け,被災地の女性たちの実態を把握し,支援するための組織「東日本大震災女性支援ネットワーク」(http://risetogetherjp.org/)を立ち上げました.その活動を通して見えた被災地の現状,現れてきた具体的な課題,そして未来への教訓などが,本ブックレットには豊富に盛り込まれています.
 ちなみに,編集担当者の私は男性ですが,「女性の声が反映されない社会は男性もしんどい」ということを,本ブックレットの編集を通じて改めて感じました.被災地の実情を知るためにも,また,今後の災害に備えるためにも,女性に限らず多くの方に読んでいただければと思います.
(編集部 田中宏幸)


編者プロフィール

竹信三恵子(たけのぶ・みえこ)
ジャーナリスト,和光大学教授.1953年生まれ.朝日新聞経済部記者,編集委員兼論説委員などを経て,2011年4月から現職.著書に『女性を活用する国,しない国』(岩波ブックレット),『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書),『ミボージン日記』(岩波書店),『しあわせに働ける社会へ』(岩波ジュニア新書),『ルポ賃金差別』(ちくま新書)など.

赤石千衣子(あかいし・ちえこ)
しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長.1955年生まれ.ふぇみん婦人民主新聞編集長を経て現職.著書に『シングルマザーのあなたに』(編著,現代書館),『「ジェンダー」の危機を超える!』(共編著,青弓社)など.


目次

はじめに

I 東日本大震災下の女性たち――何が起きたか
第1章 見えない被害,届かない声
第2章 災害時における女性への暴力
第3章 雇用不安と女性

II 多様な支援の形をもとめて
第4章 「日本的支援」の歪みを問う
第5章 支援の国際基準とは
第6章 地域防災計画を見直す

III 復興政策にも女性の声を
第7章 女性を視野に入れた復興政策
第8章 女性の意思を反映させるために

おわりに

【付録】女性の視点からの避難所づくりマニュアル

コラム 1 被災地の女性の健康
2 災害とセクシャルマイノリティ
3 災害と女性障害者
4 まちづくりにジェンダーの視点を




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