何のための秘密保全法か

その本質とねらいを暴く

情報という民主社会の基礎を根底から崩す法律は,何のために作られようとしているのか.

何のための秘密保全法か
著者 海渡 雄一 , 前田 哲男
通し番号 853
ジャンル 書籍 > 岩波ブックレット
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2012/10/05
ISBN 9784002708539
Cコード 0336
体裁 A5 ・ 並製 ・ 64頁
在庫 品切れ
主権者として情報を得るという当たり前の行為が,犯罪にされようとしている.「特別秘密」の名のもと官僚が情報を支配し,政府にとって不都合な事実を知ろうとする者が罰される.情報という民主社会の基礎を根底から崩し,「知る権利」をふみにじる法律が,いまなぜ,準備されているのか.その来歴と内容を徹底検証する.

■著者からのメッセージ

 原発事故やオスプレイの例からもわかるように,政府が重要な情報を市民から隠すことを容易にする秘密保全法制はわれわれ市民の生命と安全を危険にさらす可能性がある.既存の法制にも疑問があるが,加えて新たな秘密保全法制が必要とされる説得力ある根拠は全く示されていない.そして,大切なことが隠されれば,われわれが主権者として民主主義的な意思決定をする上で,正確な判断に失敗する危険がある.そして民主主義的な決定過程が根底から覆され,機能不全を生じてしまう可能性がある.
(6章より.海渡雄一)

 「秘密保全法」ができて「公共の安全及び秩序の維持」を拡張していけば,また,「陸上自衛隊情報保全隊」の活動が“娑婆”や“地方”でも公認されるようになれば,悪夢の時代は,すぐそばの“近未来”でもあるだろう.それは憲法の絞め殺しである.明文改憲なき改正,というより憲法停止.わたしたちは,「秘密保全法」の本質をそのようにとらえ,実現阻止に立ち向かっていかなければならない.いま,「護憲」とは,そのような具体的な課題として眼前にある.
(5章より.前田哲男)
1 いま,なぜ「秘密保全法」か
前田哲男
2 「秘密保全法」にいたる系譜
前田哲男
3 有識者会議報告書に見る
  特別秘密の「三分野」
海渡雄一
4 どんな法律?
  秘密保全法Q&A
海渡雄一
5 秘密保全法のある社会
前田哲男
6 求められるのは情報公開 ――原発事故から考える
海渡雄一
海渡雄一(かいど・ゆういち)
1955年生まれ.弁護士.81年弁護士登録.第二東京弁護士会所属.
著書に『原発訴訟』(岩波新書),『共謀罪とは何か』(共著,岩波ブックレット),『監獄と人権』(明石書店),『憲法の危機をこえて』(共著,明石書店),『刑務所改革――刑務所システム再構築への指針』(共編著,日本評論社)など多数.

前田哲男(まえだ・てつお)
1938年生まれ.長崎放送記者を経て,71年よりフリーの文筆活動を始める.95年から2005年まで東京国際大学国際関係学部教授,2011年まで沖縄大学客員教授を務める.現在,軍事ジャーナリスト.専門は軍縮・安全保障論.
著書に『自衛隊 変容のゆくえ』(岩波新書),『岩波小事典 現代の戦争』(編集,岩波書店),『暮らしの中の日米新ガイドライン――「周辺事態」を発動させないために』(編著,岩波ブックレット),『新訂版 戦略爆撃の思想――ゲルニカ・重慶・広島』(凱風社),『在日米軍基地の収支決算』(ちくま新書)など多数.

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2013年11月10日
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