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2012年は,日本周辺で「領土問題」が噴出した年でした.
日本は,隣国との間で3つの「領土問題」を抱えています.いずれも海を隔てた「島」(あるいは「岩礁」)であり,19世紀末から20世紀前半にかけての日本の拡大――戦争,侵略,植民地支配――と,アジア太平洋戦争の敗北による縮小――1951年,サンフランシスコ講和条約による領土確定――に源を持ちます.これが日本の「領土問題」の特徴です.したがって,日本の「領土問題」には,「歴史問題」が深く絡まざるをえないのです.
領土とは,近代国家にとって「主権」のかかわる問題であり,たやすく妥協することはできないものです.世界の歴史を振り返ってみれば,領土や国境をめぐって,数限りない紛争が起きています.
「領土問題」とは何なのでしょうか.日本政府の「固有の領土」という主張は正しいのでしょうか.平和的な解決はありうるのでしょうか.それは,どのような原則にしたがって,どのように?
いまや日本にとって,「領土問題」を根底から考え,論じることが緊急の課題になってきています.五人の専門家の方々に,「領土」問題を論じるために必要な視点を執筆いただきました.ぜひ多くの読者にお読みいただければと思います.
新崎盛暉(あらさきもりてる)
沖縄大学名誉教授.1936年生まれ.2006年日本平和学会第1回平和賞受賞.著書に『沖縄現代史 新版』(岩波新書),『沖縄同時代史』(凱風社,全10巻),『新崎盛暉が説く 構造的沖縄差別』(高文研)ほか多数.
岡田 充(おかだたかし)
共同通信客員論説委員.1948年生まれ.71年慶應大学法学部卒,共同通信社入社,香港,モスクワ,台北各支局長を経て現職.著書に『中国と台湾――対立と共存の両岸関係』(講談社現代新書),『尖閣諸島問題』(蒼蒼社)ほか.
高原明生(たかはらあきお)
東京大学教授.1958年生まれ.現代中国政治.在香港日本国総領事館専門調査員,桜美林大学助教授,立教大学教授などを経て現職.共編著に『東アジア安全保障の新展開』(明石書店),『日中関係史1972-2012Ⅰ政治』(東京大学出版会)ほか.
東郷和彦(とうごうかずひこ)
京都産業大学世界問題研究所長.1945年生まれ.1968年外務省入省.オランダ大使などを経て2002年退官.ライデン大学,プリンストン大学,ソウル大学などで教鞭をとる.著書に『北方領土交渉秘録』(新潮社)ほか.
最上敏樹(もがみとしき)
早稲田大学教授.1950年生まれ.国際法・国際機構論.国際基督教大学専任講師,助教授,准教授,教授を経て,2011年より現職.著書に『人道的介入』『国連とアメリカ』(以上,岩波新書),『国際立憲主義の時代』(岩波書店)ほか.
はじめに
国家「固有の領土」から,地域住民の「生活圏」へ
――沖縄からの視点 新崎盛暉
国家主権を相対化する契機に
岡田 充
歴史を逆行させてはならない
高原明生
北東アジアの領土問題解決のための三原則
東郷和彦
来るべき和解のために――本旨は紛争の平和的解決である
最上敏樹
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