よみがえる緑のシルクロード

環境史学のすすめ

4000年眠りつづけた女性ミイラが多数発掘された.枕元の小麦をDNA鑑定すると….副葬品などから環境の変遷を大胆に推理する.

よみがえる緑のシルクロード
著者 佐藤 洋一郎
通し番号 535
ジャンル 書籍 > 岩波ジュニア新書 > 生物・化学・環境
刊行日 2006/05/25
ISBN 9784005005352
Cコード 0240
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 214頁
在庫 品切れ

楼蘭に近い砂漠から,4000年眠りつづけた女性ミイラが多数発掘された.枕元の布袋に入っていたのは小麦の種子.DNA鑑定すると驚くべきことが…….その昔,そこには,どんな人たちが暮らしていたのか.ヘディンらの踏査を振り返り,木の墓標や副葬品などを手がかりに,ユーラシア大陸の環境変遷をダイナミックに推理する.

■内容紹介
 みなさんは,シルクロードというとどんなイメージをもちますか.ラクダと隊商(キャラバン)をイメージする人が多いのではないでしょうか.たしかに今,シルクロードの大半は砂漠などの乾燥地帯または半乾燥地帯を通っています.しかし,シルクロードの環境は昔からこのようだったのでしょうか.
  『シルクロード』の著書もあるヘディンは,1934年にタクラマカン砂漠の東端を流れるタリム川にそって,楼蘭のちかくにある「さまよえる湖」こと「ロプ・ノール」を探検しました.その探検行に同行したベリマンらは,ヘディンとわかれて,老ガイド・エルデクの案内で舟をこいで小河をさかのぼり小河墓遺跡にたどりつき,ミイラをはじめさまざまなものを発見しました.ところが,その後70年間,その遺跡は人びとの記憶から忘れられていたのです.
 2004年,その遺跡の再調査がおこなわれ,200体をこえるミイラが新たに発見されたことは,NHKの番組「新シルクロード」でも紹介されたのでご存じのかたも多いと思います.ミイラは3800年も前のものとわかり,保存状態がよく,なまなましいすがたの女性ミイラは「小河墓の美女」と呼ばれました.周囲には副葬品も多く,枕元にあった草かごからは小麦の種子数百個がでてきました.また,棺はポプラの仲間の胡楊という木でつくられ,墓標にはウシの頭骨が飾られていたのです.これらの事実はいったい何を物語っているのでしょうか.
 少なくともある時期,広い地域にわたって緑の畑や森におおわれていたのではないかという,シルクロードの新しい姿が浮かび上がってきます.著者の佐藤先生は,農業の発達と環境の変化の関係を解き明かすプロジェクトをたちあげています.今回は,小麦の種子を中心に分析をしていますが,それだけでなくシルクロードをふくむユーラシア全体の環境変遷がどのようにして起こったのか,興味ぶかく語っていきます.
 新しいデータを分析し,積み上げ,想像力を働かせ,その実像に迫っていく,そのおもしろさをみなさんに伝えたいと語っています.

Ⅰ 小河墓遺跡に出かける
Ⅱ ヘディンらの旅再現
Ⅲ 副葬品を分析してわかったこと
Ⅳ 分析をとおしてわかること
Ⅴ シルクロードの環境史
Ⅵ 環境史学のすすめ

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2006年6月18日
しんぶん赤旗 2006年6月11日
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