井上清史論集 全4巻


1 明治維新
2 自由民権
3 日本の軍国主義
4 天皇の戦争責任


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編集部だより
内容

 「井上清史論集」全4巻の最終巻である.井上清先生が晩年もっとも力を傾注したテーマは,天皇制,部落問題,日本軍国主義であった.第4巻はこれまでとことなり,1975年の単行本『天皇の戦争責任』を全文収録し,これが書かれたのちに現れた最も大きな史料といえる『昭和天皇独白録』に関する井上先生の見解を付け加えた決定版である.
  「1931年9月18日に開始された日本軍の中国東北地方侵略の戦争(いわゆる満州事変)から,1945年9月2日天皇・政府・統帥部の代表が連合国にたいする正式降伏文書に調印するまでの,一連の侵略戦争を遂行し,指導した.そのことによって裕仁は,アジアの数千万人を殺した.すなわち彼は,『戦争犯罪人』であり,『ファシスト』であり,『5千万人のアジア人を』殺した最大最高の元兇である.このように結論する根拠を以下にのべる」
  これが本書の内容である.これに対して江口圭一氏は,
(1)昭和天皇の戦争責任を,単に太平洋戦争に」ついてのみでなく,十五年戦争の全般にわたって追求することによって,日本国民の被害に関する責任を超えて,加害=侵略への関与の責任追及への道筋をつけた.

(2)昭和天皇の十五年戦争への関わりかたを,信頼できる史料に基づいてリアルに描きだした.

(3)天皇の終戦の「聖断」の実態を明らかにし,「平和の使徒」天皇の虚像を打ち砕いた.
と評価している.

 本書の叙述は,確固とした事実と明快な論理に貫かれ,明快な文章で綴られた歴史に残る名判決といった趣すら感じられる.この問題に関する最も基本的な研究である.第3巻「日本の軍国主義」とあわせ,新しい軍国主義時代の開幕をつげる今日,まず読み直されるべき文献であろう.


著者略歴

井上 清(いのうえ きよし)
1913−2001年.歴史学者.高知県生まれ.東京大学国史学科卒業.辻善之助教授に師事し,卒論は「近代改革史」.1954年京都大学人文科学研究所助教授,61年から77年まで教授をつとめる.著書『日本の歴史』(岩波新書),『日本現代史1 明治維新』『日本女性史』『日本の軍国主義』『西郷隆盛』ほか多数.


目次

天皇の戦争責任(1975)
 1 天皇の権力および権威と戦争責任
 2 国務大臣・内大臣・陸海軍首脳の任免と天皇
 3 内政外交における天皇のイニシアチヴ
 4 天皇裕仁と中国侵略戦争
 5 天皇裕仁が対米英戦を決定した
 6 天皇の戦争指導と降伏における役割
 結び 天皇裕仁の戦争責任は明らかである
『昭和天皇独白録』に見る裕仁(1991)
 1 この記録のねらい
 2 天皇免責の論法
 3 日本の中国侵略の日米関係
 4 天皇は積極的に国政と戦争を指導した
 5 結び――人民に無責任・不誠実きわまる君主
解説 江口圭一(補 松尾尊兌)
井上清年譜
本書は,岩波現代文庫のために新しく編集されたものである.




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