フランス革命


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「現代文庫版のためのあとがき」より
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編集部だより
内容紹介

 世界史上の大事件であるフランス革命.明治以来,日本でもこの歴史上の大事件については,様々な議論が闘わされてきました.本書では,フランス史研究の第一人者が,これらの研究史を踏まえ,「フランス革命」を社会史の視点から読み解きます.もとになったのは,一九八八年に行われた「岩波市民セミナー」で,翌年のフランス革命二〇〇周年の年に岩波セミナーブックスとして刊行されました.現代文庫版では,このセミナーブックスに,フランス革命を同時代の世界システムの中で捉え,また近年の文化史の動向にも触れた「補論 フランス革命と明治変革――比較史の枠組」を併せて収録しました.本論の「フランス革命」は,二十年近く前に書かれたとは思えない斬新な歴史学上の問題提起を行っており,しかも初学者にもわかりやすく書かれ,最良の「フランス革命入門」の一つ,といってよいでしょう.補論は,現在の歴史学における「フランス革命」の占める位置,今後の研究の課題を知るのに必須の論文,といえましょう.本論とあわせてお読みになることをお勧めします.また,セミナーブックス版にはなかった「索引」,フランス革命についてもっと知りたい人のための「参考文献」も巻末につけました.ご活用ください.


「現代文庫版のためのあとがき」より

 本論の『フランス革命』の基本的内容を一言でいえば,フランス革命の勢力関係を,特権貴族対ブルジョワの二者対立でなく,旧特権エリート層,新興中間層,都市・農村の民衆という三者の三極構造でとらえ,中間層を主たる母体として出現する変革主体が,流動する三極関係のなかで,どのように民衆の世界を変革,解体,統合して,近代国民国家へ国家構造を再編していったか,である.ここでは,旧特権エリートが中間層をふくめた民衆を統合・支配する旧体制と,この体制のなかで成長しながら,それを弛緩・変質・解体させる中間層が創りだす新しい体制,この二重の関係が重層しており,この中間層が変革主体となることにより,重層関係が三極構造となる.
 この見方は,ジョルジュ・ルフェーヴルの「下からの歴史」の観念を継承している.この歴史観は,民衆の立場から歴史を一方的に解釈するいわゆる「人民史観」ではなく,民衆とエリートとの相互関係として複眼的に歴史を捉える観点だと,私は考えている.
 なお,ルフェーヴルの「ブルジョワ」概念は,特権貴族と民衆との「中間階級」(ミドル・クラス)という社会史的概念であり,アンシァン・レジーム下では体制と癒着しながら成長するため,社会史的事実としては,修正主義の指摘と両立しうる.その階層から変革主体が出現するのは,三者の関係が緊迫する全国三部会選挙という危機状況のためであり,約一〇年の革命のすえ,結局,中間層のブルジョワの運動が政治的収拾に成功した.その成功は,中間層の運動論という意味でも,また,社団原理と産業規制との否定という政治社会構造論という意味でも,二重の意味で「ブルジョワ革命」である.それはまた,経済的対立だけでなく,文化的対立でもある.
 本論が,冒頭で比較史の重要性からはじめたのは,一八世紀後半に政治危機はフランスだけでなく,西欧・中欧の諸国家,さらには北米植民地でも生じているのに,何故に北米植民地を別にすれば,フランスの政治危機が深刻な革命になったかという点を説明するためである.本来ならば,フランス革命は,ヨーロッパ,ないしは大西洋経済圏の地域世界全体が何故に一八世紀後半に再編成期に入ったのか,という世界体制の視野のなかで論じなければならない.まして,明治変革までが比較の視野に入っている.それにもかかわらず,本論の記述はフランスに限定されている.この残された問題に触れるのが,補論である.
 そこでは,今後の比較史の方法として,「世界体制」と「政治文化」の概念に言及している.前者は,日本の戦後歴史学の延長であり,後者は,二〇〇周年以後の欧米のフランス革命研究が注目している分野である.


著者紹介

柴田三千雄(しばた・みちお)
1926年京都府生まれ.東京大学文学部西洋史学科卒業.東京大学教授,フェリス女学院大学教授を経て,現在,東京大学名誉教授.
専攻は,フランス近代史.主な著書に『フランス絶対王政論』
(御茶の水書房)『バブーフの陰謀』『近代世界と民衆運動』(以上,岩波書店)『パリ・コミューン』(中公新書)『フランス史10講』(岩波新書)ほか.


目次

フランス革命
I フランス革命の解釈をめぐって
  1 アプローチの仕方
  2 日本におけるフランス革命観
  3 フランスの主流的解釈
  4 「修正主義」
II 原 因
  1 「ブルジョワ」
  2 「革命的ブルジョワジー」?
  3 革命の発生
III 革命のプロセス(1)
  1 フランス革命の輪郭
  2 革命の勢力配置(一七八九年)
  3 革命の深化(八九年一〇月―九二年八月)
IV 革命のプロセス(2)
  1 ジロンド派と山岳派の抗争(九二年八月―九三年六月=第三局面A)
  2 山岳派独裁の形成(九三年六月―九三年末=第三局面B)
V 革命のプロセス(3)
  1 山岳派独裁の崩壊(九四年初―九四年七月=第三局面C)
  2 安定化の失敗(九四年七月―九七年九月=第四局面A)
  3 軍部独裁への道(九七年九月―九九年一一月=第四局面B)
VI 民衆運動
  1 革命の底辺
  2 フランス革命の意義
  3 比較史の観点
あとがき
補論 フランス革命と明治変革――比較史の枠組
現代文庫版のためのあとがき
参考文献
フランス革命略年表
索引




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