宮本常一『忘れられた日本人』を読む


内容紹介
著者紹介
目次


『宮本常一『忘れられた日本人』を読む』

書誌データへ

編集部だより
内容紹介

 宮本常一氏の名著『忘れられた日本人』(岩波文庫)を,網野善彦氏は神奈川大学短期大学教授時代に毎年10年もの間,ゼミで学生と講読していたそうです.本書は岩波市民セミナーで行われた講義を岩波セミナーブックスの一冊として2003年12月に刊行したもので,2カ月後の04年2月に網野氏は亡くなったため,本書が生前最後の著書となりました.
 網野さんは,強力な引力圏をもって自転する大きな天体のような人で,さまざまな学問の成果を自分の引力圏に引き込んで活用することができたのだが,本書でも,『忘れられた日本人』はそうした引力圏に引き込まれて,網野説展開のきっかけになっているともいえそうだ.しかし網野さんは,このようにして宮本さんの学問からえられる拡がりを私たちに訓えているのであり,宮本民俗学の射程距離を大きく拡大して見せているともいえよう.私たちは,宮本さんの活動を等身大に捉えようとした佐野さんの著作も参照しながら,本書を読み,また『忘れられた日本人』を読めば,通念化している日本人と日本社会についてのイメージに,べつの補助線を引いて考えなおすことができるだろう.そしてそれは,今日の私たちの生き方にまで届くメッセージ性をもった読書経験となるに違いない,と私は思う.
――本書,安丸良夫「解説」より
 網野氏は『忘れられた日本人』をどう読み,宮本氏からどんな影響をうけたのか.本書は宮本民俗学への入門であるとともに網野歴史学への誘(いざな)いでもあります.


著者紹介

網野善彦(あみの よしひこ)
1928〜2004年.1950年東京大学文学部卒業.日本常民文化研究所研究員,都立北園高校教諭,名古屋大学文学部助教授,神奈川大学短期大学部教授,同大学経済学部特任教授を歴任.専攻は日本中世史・日本海民史.著著に『日本中世の民衆像』 『日本社会の歴史』(岩波新書),『日本の歴史をよみなおす』(ちくま学芸文庫)ほか多数があり,主なものは『網野善彦著作集』(全18巻・別巻,岩波書店)に収録されている.


目次

第一講 宮本常一との出会い――民俗語彙の再発見
宮本常一との出会い/宮本常一の中世史像――清水三男への高い評価/宮本常一の学問/強烈な人格/宮本常一と渋沢敬三/海から日本社会をみる/東・西日本の文化の差異と「民具」研究の提唱/進歩とは何か? 発展とは何か?/「もののけ姫」とアジ―ル/民俗語彙の再発見/善根宿の役割/狂言「かくしだぬき」の世界

第二講 女の「世間」
老人・女性・子ども・遍歴民への着目/現代に生きている歌垣の世界/中世の参詣は歌垣だった/女性だけの旅/夜這いという習俗/娘の家出/財布のひもを握る女性/年寄りの役割/隠居の役割/子どもと老人/アジ―ルを措く/遍歴民/名作「土佐源氏」

第三講 東日本と西日本
東は父系,西は母系――家父長制と年齢階梯制/先進・後進というのではなく社会構造の差異――戦後歴史学への疑問/民族の差異が感じられるほど大きい言葉のちがい/東と西のちがいの諸相/『束と西の語る日本の歴史』/日本は「孤立した島国」ではない/形質人類学からみた東・西の差異――小浜甚次と埴原和郎/縄文人の形質をよく残すアイヌ人と沖縄人/「倭人」と「日本人」/被差別部落の分布が意味するもの/「えな」の処理についての研究がひらいた世界――木下忠の仕事/西の天皇,東の将軍/海をわたる交流をさぐる

第四講 「百姓」とは何か
郷里・周防大島/大工の出稼ぎ/祖父と父/世間師の世界/「女の世間」/新しい天地を求めて――対馬・朝鮮/ハワイへの海外移民/多様な集落/江戸時代の周防大島――『防長風土注進案』をよむ/「百姓」は農民にかぎらず/林業・木材の役割の見直しを/遍歴民の世界/文字をもたない伝承者/学問とは?

あとがき
解説       安丸良夫




Copyright 2013 Iwanami Shoten, Publishers. All rights reserved. 岩波書店