「平和国家」日本の再検討

戦後日本の平和とは何だったか.憲法と安保条約に対する私たちの認識は正しかったか.光と影を検証する.

「平和国家」日本の再検討
著者 古関 彰一
通し番号 学術303
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 学術
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2013/12/17
ISBN 9784006003036
Cコード 0131
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 402頁
在庫 品切れ
戦後日本の平和主義をどう総括するか.日本国憲法と日米安保条約と安全保障論について,私たちの認識は果たして正しかったか.戦後日本人の平和観には,いかなる光と影が存在していたか.これらの古くて新しい課題について,新憲法の誕生から現在までを視野に収め,グローバルな視点と新資料でその課題に迫った論争的な一冊.

■編集部からのメッセージ

日本国憲法,とりわけその平和主義の有効性については長きにわたって議論が続いています.
 本書は日本国憲法の制定過程に関する実証的研究をはじめとして,憲法の平和主義の軌跡を講和条約,安保条約との関わりで明らかにしてきた著者が,グローバルな視点と新資料でその主題に有益な視座を提示する一冊です.
 そもそも戦後の平和主義の変遷をいかに総括するべきでしょうか.日本での憲法論,安保条約論,安全保障論には欠落した視点があったのではないでしょうか.
 現在,改憲への憂慮が高まっています.9条明文改憲→96条改正→集団的自衛権行使をめぐる内閣法制局の解釈改憲と,突破口は揺れ動いてきたにせよ,先の参院選でも自民党が圧勝し,護憲勢力が文字通り土俵際に追い込まれてきたという状況が存在しています.
 ただそのような状況を考えていく際にも,本書の叙述にご注目いただきたいと思います.平和憲法を守れと主張してきた人たち自身の認識の枠組み自体が,本当に正しかったのかという問題に立ち至るからです.
 本書第一章によれば憲法九条の制定とは,昭和天皇の戦争責任の免責=象徴天皇制の誕生と,沖縄による巨大な米軍基地の建設を条件にして,日本を戦後国際社会の中に再生させるというマッカーサーの戦略であったということが明らかになります.第三章によれば,日米安保体制は日本に再軍備と憲法改正論議をもたらしましたが,日本国内での議論は自国の利害のみを視野に入れた議論であったことが痛烈に批判されています.第六章では,憲法の平和主義をいかに再構築すべきかが問題提起されています.第七章では,「 」を取った本来の意味での平和国家になっていくために,何が求められているかを総括的に論じています.
 以上のような内容を見れば,本書は平和憲法を守れという主張する人たちの認識を鋭く問い直すだけでなく,九条を変えようという人たちの認識をも強く揺さぶる内容であることが明らかです.九条の条文についてアジア諸国を初めとしたより広い国際的文脈との関係で捉えなおし,日本の平和主義を再考することを訴えた本書に,ぜひご注目いただきたいと思います.
 本書は2002年に岩波書店より単行本として刊行されましたが,現代文庫版刊行に際して,まえがきとあとがきを新たに執筆していただきました.
古関彰一(こせき しょういち)
1943年東京都生まれ.早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了.和光大学教授を経て,1991年より獨協大学法学部教授.専攻=憲政史.日本国憲法の制定過程に関する研究で,吉野作造賞を受賞.憲法の平和主義の軌跡を講和条約,安保条約との関わりで解明する仕事を続け,現在は安全保障に関する提言や歴史的変遷を新たな視角から考察している.
主著は『安全保障とは何か――国家から人間へ』(岩波書店)『日本国憲法の誕生』(岩波現代文庫),『憲法九条はなぜ制定されたか』(岩波ブックレット)『日本国憲法 平和的共存権への道』(共著,高文研).
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