続 笑いと治癒力

生への意欲

膠原病を「笑って」治した著者が心臓病に!再生の奇蹟は2度起こるか.現代医療に風穴を開ける闘病記.

続 笑いと治癒力
著者 ノーマン・カズンズ , 松田 銑
通し番号 社会104
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 社会
日本十進分類 > 自然科学
刊行日 2004/12/16
ISBN 9784006031046
Cコード 0147
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 316頁
在庫 品切れ
膠原病を「笑って」治した『笑いと治癒力』の著者が,心臓発作で倒れた.からだは再生の奇蹟を2度起こすだろうか.手術を拒み,独自の療養プログラムを実践し,自然治癒力の可能性に再挑戦した結果は?――自らの体験をもとに,生への意欲・情緒・からだの微妙な関係を省察した本書は,単なる闘病記を超え,患者・医療者に新たな視座をもたらした.(解説徳永進)


■訳者より
 1980年12月22日,カズンズは突然に心臓発作に見舞われて,危険状態におちいり,カリフォルニア大学付属病院に救急車で送りこまれ,集中治療病室に収容された.本書の話はそこから始まる.
 実はカズンズは1964年にも膠原病という難病にかかり,医師から回復の可能性は500分の1と宣告されたが,その宣告にもくじけず,固い信念にもとづく積極的闘病を行なって,みごと死の淵から生還してみせたことがある.その闘病記は当時アメリカでベストセラーとなり,私もそれを翻訳して,講談社から1981年に『死の淵からの生還――現代医療の見失っているもの』と題した単行本として出版した(現在は『笑いと治癒力』として岩波現代文庫に収録).
 カズンズはアメリカのオプティミズム,ヒューマニズムの伝統を受けつぐ人であり,人間の能力にゆるぎない確信を持ち,人間の脳の機能を宇宙最大の神秘の一つとみなしている.それは決して神がかりの信仰ではなくて,多年にわたる医学文献の研究に裏づけられている.カズンズはいつも,その独特の思想内容を自分の体験にもとづいて,力強く,説得的に展開し,併せて現代医学の病弊を痛烈に指摘し,批判しているのだが,特にその中核となるのは,明るく,強い積極的情緒(生への意欲,希望,信頼,快活さなど)が現実に体内に,治療的効果を持つ生化学的反応をひき起こすという主張である.
 膠原病の場合にも,カズンズはその主張にもとづいて,明るく,活動的なライフ・スタイルを実行して,不可能を可能にしてみせたのだが,その当時ある医師たちがカズンズに「あなたの一生の内にもう一度,そういう病気への挑戦をくり返すことができると思いますか」という問いを発した.1980年の心臓発作とその後のリハビリの体験は,まさにその質問への回答となった.本書にも詳しく述べられているように,きわめて重症の心筋梗塞にもかかわらず(また主治医の反対意見にもかかわらず),カズンズは再び挑戦に成功した.カズンズは膠原病の場合と同じく,その勝利の主たる理由を,積極的情緒を発揮したライフ・スタイルの実行に帰する.……
 私自身も数年来前立腺癌の治療を受けている一人の病人であるが,カズンズのこの二つの著書を読む度に,切実な共感を覚えるとともに,大きなはげましを受ける.カズンズも人間があらゆる病気に打ち勝てるなどとは言っていない.人間の生命の有限をあるがままに認め,それ故にこそ最後の瞬間まで生きる努力をあきらめるなと説く.その努力が予想外の奇跡を生む可能性を忘れるな,人間自身に宿る神秘を尊重せよとすすめるのだ.私はこの書物をぜひ,できるだけ多くの病人とその家族および医師の方々に読んでもらいたいと願っている.
(1986.6.13)
松田 銑
第1章 数字の意味
第2章 もう一度くり返して
第3章 反撃開始
第4章 手術,イエスかノーか
第5章 心とムードと機械
第6章 冗談とストレス
第7章 再生の冒険
第8章 人生は63歳から
第9章 情報伝達者としての医師
第10章 精神と統計
第11章 「ウィ・キャン・ドゥー」の会
第12章 医学界にも消費者運動
第13章 情緒的欲求の本質
第14章 変わる病気のファッション
第15章 自律意識の強化
第16章 究極の敵,パニック
第17章 病身を超越して
 
要約
エピローグ
訳者のことば
解説(徳永進)
ノーマン・カズンズ(Norman Cousins)
1915-90年.ニュージャージー州生まれ.ジャーナリスト.アメリカ有数の書評・評論誌『サタデー・レビュー』の編集長を30年つとめた後,カリフォルニア大学医学部大脳研究所教授として,医療ジャーナリズムを講義.核兵器廃止・環境汚染反対運動などでも活躍.著書に『笑いと治癒力』『ある編集者のオデッセイ』『生命礼賛』など.

松田 銑(まつだ せん)
1914-2002年.日本語版『リーダーズダイジェスト』編集長を経て,翻訳家.

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