じゃぱゆきさん

直視せよ 新宿歌舞伎町,全国のピンクゾーン,東南アジアの金と欲望と貧困渦巻く人身売買の実態.

じゃぱゆきさん
著者 山谷 哲夫
通し番号 社会121
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 社会
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2005/10/14
ISBN 9784006031213
Cコード 0136
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 414頁
在庫 品切れ
日本は人身売買大国だ.著者は新宿歌舞伎町などのホテルに泊まりこみ,全国のストリップ小屋を取材,「じゃぱゆきさん」の故国,フィリピン,タイ,ベトナムの人身売買機構に潜入し,どうにもならぬ無知と金と欲望と貧困渦巻く地獄絵を描き出した.この実態を直視して,「自由と民主主義」の下に生きる日本人は何をなすべきか.

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日本はいま人身売買大国の非難を浴びている.しかし,誰がその実態を知っているだろうか.「じゃぱゆきさん」という現在では普通名詞となり,警察その他の公文書でも使われている言葉をつくったのが,ほかでもないこの本の著者である.
 著者は,沖縄従軍慰安婦や「からゆきさん」,フィリピン人花嫁などに関するドキュメンタリー映画を監督していたが,日本人買春観光の取材から,観光あるいは興行目的で来日した東南アジア女性の足跡を追跡するようになる.
 新宿歌舞伎町などのピンクゾーンに泊まりこみ,コンビニに夜間勤務しながら,暴力団に護られて管理売春を続ける業者たちの実態を暴き,全国のストリップ小屋を取材し,おぞましい興行の実態を描きだした.さらに「じゃぱゆきさん」の故国,フィリピン,タイ,ベトナムの人身売買機構に潜入し,どうにもならぬ無知と貧困,金と欲望渦巻くアジアの地獄絵を視た.そして,かつて天草から売りとばされた「からゆきさん」の取材を通して,日本の棄民政策が現代に通底するさまを抉る.
 追章では,90年代後半から現在にいたる歌舞伎町浄化により,何が変ったかを追求する.貧困と「買う側」がある限り,送還や排除だけでは,構造自体が変らないことを明らかにする.

 本書の元になった単行本は,1985年情報センター出版局から刊行,のち改訂して1992年講談社文庫収録.本書は,その2冊より取捨して,さらに増補改訂した決定版である.
山谷哲夫(やまたに てつお)
1947年,富山県高岡市生まれ.72年早稲田大学第一文学部卒業.74年英国映画協会へ留学.主要監督作品『生きる――沖縄渡嘉敷集団自決より25年』(71年)『沖縄のハルモニ――証言・従軍慰安婦』(79年)『バンコク観光売春――買われる側の生活と意見』(82年).製作作品『妻はフィリピーナ』(94年)『ファザーレス』(99年).著書『沖縄のハルモニ~大日本売春史』(晩聲社).翻訳『ノンフィクション映像史』(創樹社)ほか.

書評情報

東京新聞(朝刊) 2005年11月13日
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