浪費するアメリカ人


編集部からのメッセージ
著者・監訳者紹介
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『浪費するアメリカ人』

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編集部だより
編集部からのメッセージ

 世界同時不況の端を開いたアメリカの金融危機の勃発から二年あまりが経ちます.日本国内でもデフレの進行と景気の低迷の下で人々の閉塞感は強まっています.私たちの生活と労働はこの先どうなっていくのでしょうか.停滞しているかに見える消費が再び勢いを取り戻すことはあるのでしょうか.
 それらを考えていく上で,本書は貴重な示唆を提供しています.本書は『働きすぎのアメリカ人』で日本でも注目された著者が,「資力以上に金を使う」アメリカ人の浪費行動ににメスを入れて,アメリカ内外で大きな反響を集めました.消費社会論を丹念に検証して議論が組み立てられているので,本書の信頼性は高いものがあります.学者の仕事でありながら,関係者への周到な取材が行われており,実にいきいきとした叙述になっています.
 アメリカの中流階級は長らく,まるで明日はないかのように消費を続けてきました.にもかかわらず,消費が増えるほど,ますます満たされない思いが強まるのでした.現代社会では,商品はある種のシンボルとなっています.人びとは何を持ち,何を身につけているかで自己のアイデンティティと社会的ステータスを表現しようとするのです.なぜアメリカ社会にここまで消費社会が浸透してしまったのでしょうか.本書では「働きすぎと浪費の悪循環」がアメリカ人の浪費の根底に横たわっていることを解明し,どうすれば浪費から抜け出すことができるのかを実例を豊富に紹介しながら具体的に提案しています.
 本書は平明な叙述で書かれた出色のアメリカ社会論であり,堤未果さんの岩波新書『貧困大国アメリカ』とはまた別の角度からアメリカ社会の陰影を浮き彫りにしているといえるでしょう.長らく日本社会は,アメリカ社会を追いかけてきた感があるだけに日本で消費・生活・労働に関わる広範な市民の方に本書のご一読をお薦めする次第です.
 なお本文中に具体的なブランド名が本文中に満載されていますが,巻末には「日本語版のための用語解説・索引」が付されています.この種の情報に疎い方々にとっても全く苦にならないといえます.本書をぜひご一読下さい.


著者・監訳者紹介

ジュリエット・B.ショア(Juliet B.SCHOR)
1955年米国生まれ.マサチューセッツ大学で賃金変動の研究により,博士号を取得.『働きすぎのアメリカ人』で注目を集める.ハーバード大学准教授を経て,現在ボストン大学社会学教授.
2011年,小社より豊かさ概念の転換を問う新著 PLENITUDE:The New Economics of True WEALTH が刊行される.

森岡孝二(もりおか こうじ)
1944年生まれ.関西大学教授.株主オンブズマン代表.


目次

日本語版序文

はしがき

第一章 新しい消費主義の出現
消費と社会的比較/競争的消費の強まり――消費が増えて貧しく感じる/生活の質の圧迫/時流から抜け出す――自発的なダウンシフターたち/消費主義の文化を超えて

第二章 商品によるコミュニケーション――私たちが買うものはいかにして多くを語るのか
消費の社会的なパターン――差異をつくり出す/消費の意味を解読する/最下層の人びと/シンボルの複雑さ

第三章 視覚的なライフスタイル――アメリカのステータスシンボル
ステータス消費のテスト――女性用化粧品/誰が気にしているか/消費とアイデンティティの確立/アイデンティティと新しい消費主義/ステータスの費用

第四章 消費があなたらしさを創る
見ること――モノに接する多くの場所/欲すること――欲求の内面世界/借りること――消費者支出におけるクレジットカードの役割/買うこと――街角のオフィスに目を向ける/フレッシュ・プリンスから目を離すな――消費水準の上昇におけるテレビの役割/否定しながら暮らす/子どもたちのために競い合う/その間,クリスマスツリーの下では何が起こっているのか/競争的消費の心理/消費者のエスカレータ/負けまいとし続ける実際的な理由/見て―欲しくなり―借りて―買い―そして手放す? /消費拡大の社会的不合理性

第五章 隣のダウンシフター
「自由」への道/働きすぎと浪費の悪循環の極端な例/燃え尽きた職場の話/一人の所得でやりくりする/一万八○○○ドルでの奮闘/一万八○○○ドルが贅沢に感じられるとき/自発的簡素化運動/ブルデューを超えて――より少ないことが本当により多いことになりうるか/「幸せは内面に」

第六章 ディドロの教訓に学ぶ――欲望の上昇を止める
原則1 欲望をコントロールする/原則2 新しい消費のシンボルを作り出す――高級品をかっこ悪いものにする/原則3 自分自身をコントロールする――競争消費に対する自発的な抵抗/原則4 共同利用を学ぶ――借り手になったり貸し手になったり/原則5 商業システムを解剖する――賢い消費者になる/原則6 「買い物療法」を避ける――消費は中毒である/原則7 祝い事を脱商業化する/原則8 時間を作る――働きすぎと浪費の悪循環に陥っていないか/原則9  政府介入で消費の歪みを調整する/空白を埋める

エピローグ 消費を減らせば経済は難破するか


訳者あとがき
岩波現代文庫版編訳者あとがき

日本語版のための用語解説・索引




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