過労死は何を告発しているか

現代日本の企業と労働

なぜ日本人は死ぬまで働くのか.働きすぎのメカニズムを分析し,過労死をなくす方策を提言する.

過労死は何を告発しているか
著者 森岡 孝二
通し番号 社会262
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 社会
日本十進分類 > 社会科学
刊行日 2013/08/20
ISBN 9784006032623
Cコード 0136
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 344頁
定価 1,364円
在庫 在庫あり
なぜ日本人は死ぬまで働くのか.過労死が決して減少しない理由はどこにあるのか.株式会社論,労働時間論の視角から,働きすぎのメカニズムを検証する.長時間労働の生み出される要因を解明し,過労死を減らす方策を展望した本書こそ,全勤労者必携の一冊.過労死問題を掘り下げると,日本社会の問題性が見えてくる.


■編集部からのメッセージ
 過労死は近年も減っていません.
 過労死がメディアで報道されて社会問題化してからすでに四半世紀の歳月が流れていますが(「過労死110番」の開始は1988年),決して過去の問題とはなっていません.過労自殺などは若者世代で著しく増え,全体的にも減少していないのです.
 この数年来,雇用と労働をめぐる問題では非正規雇用と貧困の問題に大きな関心が集まってきましたが,過労死問題は後景に退いてはいないというわけです.
 近年では正社員が減少し,雇用環境の悪化の下で簡単に退社できないという環境によって,新卒社員が即戦力として過大に期待され,膨大な仕事を割り振られることが多くなっています.過労自殺がさらに若年化していることは,この環境の下で生み出されてきたと考えられるのではないでしょうか.このような状況を受けて,メディアでの過労死・過労自殺問題をめぐる扱いも,この数年さらに数を増しているそうです.
 本書は『企業中心社会の時間構造――生活摩擦の経済学』(青木書店,1995年)が基になっています.過労死が社会問題化してから,かなり早い時点で著者は過労死の全体像を一冊にまとめていたわけですが,このたび刊行後18年間の状況の推移を受けとめて,全章にわたって全面的に手を入れていただきました.2013年の時点で最新のデータに基づき,過労死問題を学べる一冊として,書き下ろしに準じた内容として,本書は満を持して刊行されるわけです.
 なぜ日本人は死ぬまで働くのか.なぜ過労死は依然として減らないのか.本書は過労死問題の第一人者がこの四半世紀を踏まえて,働きすぎのメカニズムを検証しています.過重労働とストレスがもたらされる要因を解明し,どうすれば過労死・過労自殺をなくせるかを提言しています.その意味で,本書はまさに全勤労者とその家族必携の一冊になりました.
 能動的生活時間のすべてを会社に捧げる生き方を変えていきましょう.そのためにも本書をぜひご一読いただきたいと思います.
序 章  過労死が社会問題になって四半世紀
第一章 企業中心社会はいかにして成立したか
第二章 日本的働きすぎと労働時間の二極分化
第三章 賃金不払残業の手法と実態
第四章 日本的生産システムと過労死
第五章 仕事で命を奪われるホワイトカラー
第六章 多発する若者の過労自殺と大学生の就活自殺
終章  過重労働対策と過労死防止運動

 注
 参考文献
 岩波現代文庫版あとがき
森岡孝二(もりおか こうじ)
1944年大分県生まれ.香川大学経済学部卒業.京都大学大学院経済学研究科博士課程退学.経済学博士.83年より関西大学経済学部教授.企業社会論・労働時間論.株主オンブズマン代表,大阪過労死問題連絡会会長,働き方ネット大阪会長.主著『貧困化するホワイトカラー』(ちくま新書)『働きすぎの時代』 『就職とは何か』(以上,岩波新書)『日本経済の選択』『強欲資本主義の時代とその終焉』(以上,桜井書店).

書評情報

毎日新聞(朝刊) 2014年1月26日
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