夏目漱石『こゝろ』刊(1914年9月20日)

著者の自費出版の形で発行されたが,岩波書店の出版活動としては,これが処女出版とみなされる.
書斎の漱石
岩波は『こゝろ』の出版にすっかり感激し,いい材料を使って立派なものを作ろうとしたのを,漱石はその行き過ぎを戒めて,よく小言を言ったという.
『こころ』表1 しかし,漱石自身も出版に興味を持ち,表紙には古代中国の石鼓文から取った模様を描き,表紙の「ひら」に『康熙字典』の「心」の項からの引用,表見返しに ars longa, vita brevis. (芸術は永く,人生は短い)の朱印を配するなど,自ら装幀した.
ars longa, vita brevis
1916年の漱石の死去まで利益分配の方法で精算が行われていたが,その後は普通の印税関係となった.
こころ