世界
臨時増刊  2008年
 第774号

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世界臨時増刊号 沖縄戦と「集団自決」―― 何が起きたか、何を伝えるか
 アジア太平洋戦争末期、約3ヶ月にわたって日米両軍が激突し、住民を巻き込みながら凄惨な戦いを繰り広げたのが「沖縄戦」である。米軍は1500隻の艦艇、54万8000人の兵力を投入、日本の守備軍は、青年義勇隊や学徒兵も入れて約11万人であった。日本軍は壕などに潜んで持久戦の戦法をとり、住民と日本軍合わせて20万人以上の犠牲者を出した (「平和の礎」には日米軍民ほか約24万人の犠牲者の名が刻まれている)。
 沖縄守備軍(第32軍)の戦争方針は、「軍官民共生共死」。住民も陣地構築や救護などに徴用したほか、戦える者は防衛隊として動員、そうでない者も捕虜になることを決して許さなかった。負傷した兵士らには手榴弾や青酸カリが渡され、自決が強要された。戦場を彷徨する住民は、日本軍から壕を追い出され、食料を奪われ、あるいはスパイ容疑で処刑された。軍は、決して住民を守ることはなかった。
 そうした中で起きたのが、住民の「集団自決」である。慶良間列島の渡嘉敷島、座間味島、慶留間島での約600名の他、伊江島、読谷、糸満などで合わせて1000人以上の犠牲者が出た。多くはあらかじめ軍から手渡されていた手榴弾が使われた。女性、子ども、老人の死者が多かった (したがって「自決」ではなく、「強制集団死」といわれる)。
 最近見られるのが、これら住民の「集団自決」は、軍の命令によるものではなかった、軍関与はなかったという主張である。小社と大江健三郎氏が被告となっている「沖縄集団自決」裁判(2005年8月〜)も、文部科学省の検定による歴史教科書修正(2007年3月)も、そうした主張を背景になされた。主張の核心は、「自決」は、むしろ住民自らが国に殉ずる「美しい心」で行った、というものである。
 沖縄県民は、こうした主張に激しく反発した。それは沖縄戦の体験と記憶、教訓を踏みにじるものだからである。その一つの表れが、9月29日の「教科書検定撤回を求める県民大会」への全県民的な結集である。いま問われているのは、無謀な戦争に人びとを巻き込み、人びとの命を道具のように扱い、残虐に殺し、本土防衛の捨石にした、そのような日本軍の行動を是とするのか否とするのか、ということである。

I 沖縄戦とは何だったか

皇軍と沖縄
  安仁屋政昭 (沖縄国際大学名誉教授)

沖縄にとって戦後とは何だったか
  比屋根照夫 (琉球大学名誉教授)

<強姦>と<去勢>をめぐる恐怖の系譜――「集団自決」と戦後の接点
  北村 毅 (早稲田大学)

II <証言>沖縄戦と「集団自決」

証言者が語る「集団自決」
  謝花直美 (沖縄タイムス)

ルポルタージュ 元日本兵は何を語ったか――沖縄戦の空白
  國森康弘 (ジャーナリスト)

島クトゥバで語る戦世――「集団自決」と戦後の接点
  比嘉豊光 (写真家)

III 拡がる怒り――教科書検定から9.29県民大会まで

点火された歴史的記憶――何が島ぐるみの怒りを招いたのか
  新崎盛暉 (沖縄大学名誉教授)

教科書検定撤回の声はどう拡がったか
  山口剛史 (沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会)

「集団自決」歪曲検定意見の構造的矛盾点
  高嶋伸欣 (琉球大学)

政治的な「密室検定」への異議申し立て――沖縄戦検定問題の現段階とこれからの課題
  石山久男 (歴史教育者協議会)

歴史が時の政権に左右されてはならない――9・29県民大会の発言から
  玉寄哲永 (沖縄子ども会育成連絡協議会)

民主主義の原点
  大浜敏夫 (沖縄県教職員組合)

滴る水から大河へ
  城間えり子 (コープおきなわ)

「沖縄戦の教訓」から基地のもたらす痛み・苦しみへ
  赤嶺玲子 (学生、虹の会)

9.29八重山郡民大会の声――9.29県民大会の発言から
  山根頼子 (沖縄県立八重山農林高校)

IV アジアは沖縄の怒りをどう見たか

沖縄抗議事件に見る右翼の「弱さ」
  徐宗懋 (台湾・作家)

沖縄へ送る韓国社会の熱い視線
  権赫泰 (韓国・聖公会大学)

沖縄がわれわれの眼に映るとき
  孫歌 (中国・社会科学院文学研究所)

加油! 沖縄人
  陸培春 (マレーシア・ジャーナリスト)

V いまなぜ沖縄に新基地なのか

沖縄の米軍基地とは何か――変革・再配置のなかの沖縄
  我部政明 (琉球大学)

「基地撤去亡“県”論」という神話
  普久原均 (琉球新報)

VI 沖縄「集団自決」裁判とは何か

沖縄戦「集団自決」裁判で何が証言されたか
  村上有慶 (沖縄平和ネットワーク)

梅澤氏・大江氏は何を語ったか――11月9日公判傍聴記
  普久原均 (琉球新報)

沖縄「集団自決」訴訟の概要
  編集部

VII 沖縄戦と「集団自決」

――私たちはこう考える
新川 明 (ジャーナリスト)、坂本義和 (東京大学名誉教授)、宮内勝典 (作家)、高良 勉 (詩人)、佐喜眞道夫 (佐喜眞美術館館長)、澤地久枝 (評論家)、森口 豁 (ジャーナリスト)、平良夏芽 (牧師)、安里麻里 (映画監督)、大田静男 (地方公務員)、比嘉 慂 (漫画家)、佐高 信 (評論家)、東 琢磨 (文化批評)、小森陽一 (東京大学)、佐藤 学 (沖縄国際大学)、下嶋哲朗 (作家)、米谷匡史 (東京外国語大学)、丸川哲史 (明治大学)、屋嘉比収 (沖縄大学)、西谷 修 (東京外国語大学)、小熊英二 (慶應義塾大学)、仲里 効 (文化批評)、小波津正光 (お笑い芸人)、佐藤 優 (作家・起訴休職外務事務官)、牛島貞満 (小学校教員)、DUTY FREE SHOPP.×カクマクシャカ (ミュージシャン)
資料
教科書検定意見撤回を求める県民大会 大会決議文

中扉・本文カット=上間彩花
デザイン=赤崎正一
表紙写真=沖縄タイムス

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