| 世界臨時増刊号 沖縄戦と「集団自決」―― 何が起きたか、何を伝えるか |
アジア太平洋戦争末期、約3ヶ月にわたって日米両軍が激突し、住民を巻き込みながら凄惨な戦いを繰り広げたのが「沖縄戦」である。米軍は1500隻の艦艇、54万8000人の兵力を投入、日本の守備軍は、青年義勇隊や学徒兵も入れて約11万人であった。日本軍は壕などに潜んで持久戦の戦法をとり、住民と日本軍合わせて20万人以上の犠牲者を出した
(「平和の礎」には日米軍民ほか約24万人の犠牲者の名が刻まれている)。 沖縄守備軍(第32軍)の戦争方針は、「軍官民共生共死」。住民も陣地構築や救護などに徴用したほか、戦える者は防衛隊として動員、そうでない者も捕虜になることを決して許さなかった。負傷した兵士らには手榴弾や青酸カリが渡され、自決が強要された。戦場を彷徨する住民は、日本軍から壕を追い出され、食料を奪われ、あるいはスパイ容疑で処刑された。軍は、決して住民を守ることはなかった。
そうした中で起きたのが、住民の「集団自決」である。慶良間列島の渡嘉敷島、座間味島、慶留間島での約600名の他、伊江島、読谷、糸満などで合わせて1000人以上の犠牲者が出た。多くはあらかじめ軍から手渡されていた手榴弾が使われた。女性、子ども、老人の死者が多かった
(したがって「自決」ではなく、「強制集団死」といわれる)。 最近見られるのが、これら住民の「集団自決」は、軍の命令によるものではなかった、軍関与はなかったという主張である。小社と大江健三郎氏が被告となっている「沖縄集団自決」裁判(2005年8月〜)も、文部科学省の検定による歴史教科書修正(2007年3月)も、そうした主張を背景になされた。主張の核心は、「自決」は、むしろ住民自らが国に殉ずる「美しい心」で行った、というものである。
沖縄県民は、こうした主張に激しく反発した。それは沖縄戦の体験と記憶、教訓を踏みにじるものだからである。その一つの表れが、9月29日の「教科書検定撤回を求める県民大会」への全県民的な結集である。いま問われているのは、無謀な戦争に人びとを巻き込み、人びとの命を道具のように扱い、残虐に殺し、本土防衛の捨石にした、そのような日本軍の行動を是とするのか否とするのか、ということである。 |
I 沖縄戦とは何だったか |
皇軍と沖縄
安仁屋政昭 (沖縄国際大学名誉教授)
沖縄にとって戦後とは何だったか
比屋根照夫 (琉球大学名誉教授)
<強姦>と<去勢>をめぐる恐怖の系譜――「集団自決」と戦後の接点
北村 毅 (早稲田大学) |
II <証言>沖縄戦と「集団自決」 |
証言者が語る「集団自決」
謝花直美 (沖縄タイムス)
ルポルタージュ 元日本兵は何を語ったか――沖縄戦の空白
國森康弘 (ジャーナリスト)
島クトゥバで語る戦世――「集団自決」と戦後の接点
比嘉豊光 (写真家) |
III 拡がる怒り――教科書検定から9.29県民大会まで |
点火された歴史的記憶――何が島ぐるみの怒りを招いたのか
新崎盛暉 (沖縄大学名誉教授)
教科書検定撤回の声はどう拡がったか
山口剛史 (沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会)
「集団自決」歪曲検定意見の構造的矛盾点
高嶋伸欣 (琉球大学)
政治的な「密室検定」への異議申し立て――沖縄戦検定問題の現段階とこれからの課題
石山久男 (歴史教育者協議会)
歴史が時の政権に左右されてはならない――9・29県民大会の発言から
玉寄哲永 (沖縄子ども会育成連絡協議会)
民主主義の原点
大浜敏夫 (沖縄県教職員組合)
滴る水から大河へ
城間えり子 (コープおきなわ)
「沖縄戦の教訓」から基地のもたらす痛み・苦しみへ
赤嶺玲子 (学生、虹の会)
9.29八重山郡民大会の声――9.29県民大会の発言から
山根頼子 (沖縄県立八重山農林高校) |
IV アジアは沖縄の怒りをどう見たか |
沖縄抗議事件に見る右翼の「弱さ」
徐宗懋 (台湾・作家)
沖縄へ送る韓国社会の熱い視線
権赫泰 (韓国・聖公会大学)
沖縄がわれわれの眼に映るとき
孫歌 (中国・社会科学院文学研究所)
加油! 沖縄人
陸培春 (マレーシア・ジャーナリスト) |
V いまなぜ沖縄に新基地なのか |
沖縄の米軍基地とは何か――変革・再配置のなかの沖縄
我部政明 (琉球大学)
「基地撤去亡“県”論」という神話
普久原均 (琉球新報) |
VI 沖縄「集団自決」裁判とは何か |
沖縄戦「集団自決」裁判で何が証言されたか
村上有慶 (沖縄平和ネットワーク)
梅澤氏・大江氏は何を語ったか――11月9日公判傍聴記
普久原均 (琉球新報)
沖縄「集団自決」訴訟の概要
編集部 |
VII 沖縄戦と「集団自決」――私たちはこう考える |
新川
明 (ジャーナリスト)、坂本義和 (東京大学名誉教授)、宮内勝典 (作家)、高良 勉 (詩人)、佐喜眞道夫 (佐喜眞美術館館長)、澤地久枝 (評論家)、森口
豁 (ジャーナリスト)、平良夏芽 (牧師)、安里麻里 (映画監督)、大田静男 (地方公務員)、比嘉 慂 (漫画家)、佐高 信 (評論家)、東 琢磨
(文化批評)、小森陽一 (東京大学)、佐藤 学 (沖縄国際大学)、下嶋哲朗 (作家)、米谷匡史 (東京外国語大学)、丸川哲史 (明治大学)、屋嘉比収
(沖縄大学)、西谷 修 (東京外国語大学)、小熊英二 (慶應義塾大学)、仲里 効 (文化批評)、小波津正光 (お笑い芸人)、佐藤 優 (作家・起訴休職外務事務官)、牛島貞満
(小学校教員)、DUTY FREE SHOPP.×カクマクシャカ (ミュージシャン) |
| 資料 |
教科書検定意見撤回を求める県民大会 大会決議文
中扉・本文カット=上間彩花
デザイン=赤崎正一
表紙写真=沖縄タイムス
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