いま、象徴天皇制は、どこにあるのか。この問に対して、二つのアプローチで答えるのが従前の方法であった。ひとつは、憲法や皇室祭祀という制度を論じるやり方。もう一つは、天皇と皇族という人に焦点をあて、その人を中心に論じるやり方。
だが、そんな旧来の方法では、平成の、いや、ポストモダンの世の中の、皇室は描ききれないのではないか。「昭和は遠くなりにけり」と感慨に浸っている場合ではない。私たちは、いま、ここにある天皇制と、この国に生きる人々の関係の劇的な変化を描かなくてはならない。問題意識は、実は、象徴天皇制が終っているのではないかということだ。
読者に注目してもらいたいことは、天皇制が、サブカルチャー的に受容される具体的な現象である。
ひとつは、吉田親司著の『女皇の帝国――内親王那子様の聖戦』という架空戦記物のライトノベルである。物語は、天皇家の長女、桃 園 宮 那 子 という主人公が、ソ連軍に占領された日本を奪還するという破天荒なものだ。海軍元帥である内親王に、読者は「萌え」る。
もうひとつは、動画共有サイト「ニコニコ動画」上にある「ひれ伏せ平民どもっ!」という投稿作品。眞子内親王をモチーフにしたセーラー服やスクール水着のティーンエージ女性の萌えイラスト、「いいこと? 愚民ども、私のことは姫様とお呼びなさい」という「眞子様」の呼びかけに、男たちが「ひーめっ、ひーめっ……」と応じるコミカルな内容……。現在までに110万回以上も再生されているのをご存じだろうか。
天皇制は明らかに変容している。それもインターネットや、ライトノベルといったサブカルチャーの分野でこそ、それが見える。そうした現象を考えることなしでは、もはや、天皇制を考えることはできないのだ。森 暢平 (成城大学)