フォーラム 共通知をひらく

境界知のダイナミズム

違和感というものを題材に,異分野の3人が激論しながら,そこに新たな知の広がりがあることを示した力作.

境界知のダイナミズム
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著者 瀬名 秀明 , 橋本 敬 , 梅田 聡
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
シリーズ フォーラム 共通知をひらく
刊行日 2006/12/15
ISBN 9784000263443
Cコード 0336
体裁 四六 ・ 上製 ・ カバー ・ 278頁
定価 本体2,200円+税
在庫 在庫僅少
ふだん何気ない光景を目にしたり何かに出くわしたりすとき,ときに言葉では表現できないような違和感を覚えることがある.そうした違和がなぜ生まれるのかを解き明かしながら,感じる・感じないの境界を意識し顕在化させることで,まったく新たな知の広がりがあることを示す.異分野の3人が共感し合うことで創造された力作.

■編集部からのメッセージ

こんな本が出来上がるとは,まったく予想だにしていませんでした.
  瀬名さんのなかに浮かんだアイデアを,橋本さんや梅田さんがそれを引き取り増幅させ,ときには壊しながら別の発想を提案し,それをまた瀬名さんが噛み砕きながら,三人の胸の内にある本当の思いに近いものを編み出していく.そうした作業の連続でした.ここまでくるために用意された記録は,本書の何倍にもなります.費やされた時間も相当なものです.
 そしてたどり着いたのが,本のタイトルにある「境界知」です.これって何だ,とまず思われるでしょう.それは当然です.おそらく本書が初めて活字にした造語ですから,辞書にもありません.「違和感」という言葉はよく使われますが,わたくしたちはここから,より大きな可能性を見出しました.本書を読まれれば,たしかにそのネーミングがぴったりということを確信されると思います.
 一方,本書には,「境界知」を暗示させる数多くのSF作品,あるいは評論が引用の形で登場します.それらに対する瀬名さんの絶妙の解説はみごとです.瀬名さんのファンには見逃せないものでしょう.また言語学者である橋本さんの言語コミュニケーションに関する最新研究は「境界知」を裏付けるのに欠かせないものです.たとえば「昔の歌」が「昔を歌」になっていたら,変だとわれわれは思うでしょう.なぜか.そこから境界知につながる様々なエピソードを知ると,ますます興味が深まるばかりです.わたしたち人間だけがもつ高次の言語機能.いったいなぜこうした能力を人間はもつようになったのか,境界知の立場から明らかにします.
 また,脳神経学者である梅田さんのはなしは不思議です.わたしたちが意識しないうちに,脳はいろんな形で外界からの情報を処理しています.まさに環境と相互作用しながら,人は進化しつづけてきたのでしょう.本書のテーマである「境界知」と脳の関わりは,本書全体を貫く通奏低音として流れています.
     〈境界知〉 この小さな力が世界を変える.
 この言葉を本書を読まれるすべての方に送りたいと思います.
瀬名秀明(せな ひであき)
1968年静岡県生まれ.1996年東北大学大学院薬学研究科博士課程修了.博士(薬学).作家のかたわら,東北大学機械系特任教授(SF機械工学企画担当)を務める.著書は,『パラサイト・イヴ』『デカルトの密室』ほか多数.その他,ロボット学に関する評論などもある.
橋本 敬(はしもと たかし)
1967年大阪生まれ.1996年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了.博士(学術).現在,北陸先端科学技術大学院大学・知識科学研究科・複雑系解析論講座,准教授.言語の起源や進化といったダイナミクスを構成的手法により研究している.
梅田 聡(うめだ さとし)
1968年千葉県生まれ.1998年慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了.博士(心理学).現在,慶應義塾大学文学部心理学専攻助教授.主な研究分野は,認知神経科学.情動や社会性の実現に「脳・心・身体」がどのように関与しているかを探っている.

書評情報

日経サイエンス 2007年5月号
朝日新聞(朝刊) 2007年3月4日
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