アニメが世界をつなぐ
博物館で世界中のファンを迎え,ユネスコの教育ビデオを作る著者が,少年時代と〈ときわ荘〉,アニメーターの仕事を語ります.
満州での少年時代,〈ときわ荘〉での漫画家たちとの出会い,アニメーターとしてテレビアニメの黄金時代をささえた仕事.いまや博物館の館長として世界中の日本アニメファンを迎え,ユネスコのアジア諸国向け教育ビデオを作り,〈ラーメンの小池さん〉のモデルでもあった著者の世界への挑戦はさらに続きます.
スタジオゼロ=通称スタジオボロ ©鈴木伸一
■内容紹介
みなさんは,チリチリ頭でいつもラーメンを食べている「小池さん」を知っていますか? きっとどこかで見かけたことがある,なんとも忘れられないキャラクターではないでしょうか.
著者の鈴木伸一さんは,藤子不二雄の漫画に登場する,まさにその「小池さん」のモデルとなったアニメーターです.この本では,鈴木さんの満州での少年時代,漫画との出会い,伝説の〈トキワ荘〉での漫画家たちとの楽しく熱い交流,スタジオ・ゼロで昭和のテレビアニメの黄金時代をささえた仕事などを,こまごま思い出しながら楽しく語っています.いまや杉並アニメーションミュージアムの館長として,世界中からやってくる日本アニメのファンを迎え,ユネスコ・アジア文化センターのアジア諸国向け教育アニメーションを作り,G9+1というシニア・アニメ創作グループの活動も楽しみ,〈ラーメンの小池さん〉の新しい世界への挑戦はパワフルに続きます.
ユネスコのアニメ作りは,価値観の違うアジアの国々との共同作業ですが,その体験からも,「アニメはコミュニケーション」という実感が強くなった,と鈴木さん.いろいろな人たちと出会い,「ケンカはしても裏切らない」と,その出会いを大切にしつづけた結果として,「今,ぼくは本当に幸せです」と締めくくっています.
アニメの仕事や,昭和のテレビアニメに興味のある人はもちろん,「仲間は大切」というシンプルで深いメッセージに充ちたこのエッセイは,読めば誰でも前に進む勇気と元気がわいてくることでしょう.
トキワ荘の仲間たち ©鈴木伸一
アジアのためにアニメをつくる/文化のギャップはおもしろい/津波の教訓から/アニメをなにかに役立てたい!/杉並アニメーションミュージアムの館長に/アニメーション教育との出会い/世界からの来館者/アニメユニット結成!/いまが一番忙しい! 他
II アニメと漫画を夢見て
生い立ち/満州の生活/漫画との出会い/終戦の日/引き揚げ/長崎から下関へ/母の看病と漫画投稿/いざ東京へ/居候生活 他
III トキワ荘とおとぎプロの青春
トキワ荘に入る/若手漫画家の生活/おとぎプロというところ/家庭的なプロダクション/アニメ作家としてのスタート/日本で最初のテレビアニメ・シリーズ 他
IV テレビアニメ奮闘記
スタジオ・ゼロ始動/『レインボー戦隊ロビン』で軌道に/『オバケのQ太郎』を生んだ/ラーメンの小池さん登場/みんなの「遊び」/コマーシャルの仕事 他
V アニメの世界を歩き続ける
スタジオ・ゼロの解散/立体アニメに挑戦/手塚治虫先生のこと/憧れのアニメーター,キンボール/横山隆一先生のこと/日本のアニメの変遷を見て/注目の海外作家/日本の作家たち/バカなことをやりたい!/未来のアニメ人へ 他
あとがき