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しあわせに働ける社会へ

長く労働現場を取材してきた著者が,誰もがしあわせに働ける社会にするために,働く者に必要な知識から労働政策までを提言する.

しあわせに働ける社会へ
著者 竹信 三恵子
通し番号 ジュニア新書 715
ジャンル 書籍 > 岩波ジュニア新書 > 社会・倫理
刊行日 2012/06/20
ISBN 9784005007158
Cコード 0236
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 210頁
在庫 品切れ

長引く不況の影響を受け,若者たちの就職が厳しさを増す一方で,働き口があっても過酷な労働に心身の健康を損ねて退職を余儀なくされる者もいる.誰もがしあわせに働ける社会にするために,必要な労働政策や制度とは何か? 働く者に必要な知識や知恵とは? 多くの労働現場を取材してきた著者が,様々な事例をもとに提言する.

■内容紹介
「しあわせな働き方」ときいて,あなたはどんな働き方を想像するでしょう.そんなことを考えている暇があったら,一社でも多くエントリーして,入社試験を勝ち抜き,安定した名のある会社に就職することが大事! そのためには資格をとったり,ボランティアをしたりして自分に付加価値をつけることが重要! 足がかりをつくるためには就職に有利な学校にはいることが大切! そんなふうに考えている人も多いことでしょう.
「みんな,就職することが先で,どう働くかまでなかなかイメージできないようです」とおっしゃったのは,中高生や大学生に,労働法や労働者の権利を紹介する講座を開催する弁護士さんでした.ゆえに本書では,「働く」ことを具体的にイメージし,今の社会のなかで働く仕組みがどうなっているかをみていきます.「大手だから安心!」「正社員だから大丈夫!」とはいえない現実にへこみそうになるかもしれません.が,そんな社会に風穴をあけようとする若者たちの取り組みや生き方に,この世の中がまだまだがすてたものではないことがわかります.しあわせに働ける社会は,みんなでつくっていくもの,そう感じていただける一冊です.巻末には,労働相談窓口を付し,困ったときの駆け込み先を紹介しました.

はじめに

第1章 就職難は若者のせいなのか
それは「ぜいたく」なのか/それは「スキル」のせいなのか/それは「えり好み」のせいなのか/それは「覇気のなさ」のせいなのか/労働の手すりが腐食した/手すりが腐ったわけ/「新時代の『日本的経営』」構想/「自己責任」主義の限界

第2章 正社員,大手企業なら安心なのか
会社は「働く」の足がかりにすぎない/「社畜」といわれた人びと/フリーター人気/名ばかり正社員の広がり/中心的正社員にもリスク/「多様な正社員」で大丈夫か/中小企業の再評価を

第3章 まともな働き方をさぐる
「前期ロスジェネ」からの出発/ブラック企業の連続/「派遣切り」がやってきた/介護労働と「便利屋」にかけた夢/労働相談への関心/サブカルチャーに支えられ/キャバクラ労組の登場/反貧困のたすけあいネット/人間関係で食べていく/長時間労働を押し返す/大人の支え

第4章 落とし穴に備える自分づくり
落とし穴を知っている人,知らない人/働くことの楽しさと苦しさ/労働教育とキャリア教育の両輪を/雪玉型とリセット型/雪玉の核をどうつくるか/自分史年表を書いてみる/方向を定め直す/未来年表で歩き出す方向を考える/時間を生み出すための二四時間手帳/負け癖から抜け出す/自立とは人に助けを求められる力

第5章 しあわせに働ける仕組み作り
それは偉い人が考えればいいこと?/過労死を防ぐ労働時間制度/なぜ長時間労働が騒ぎにならないのか/安定雇用をつくり出す/労働権と派遣法/賃金差別を防ぐ仕組みづくり/安全ネットをつくる/だれが仕組みを変えるのか

おわりに
竹信三恵子(たけのぶ・みえこ)
1953年生まれ.76年朝日新聞社入社.経済部記者,シンガポール特派員,学芸部次長,総合研究センター主任研究員,編集委員兼論説委員などを経て,2011年退社.現在,和光大学現代人間学部教授.著書に『日本株式会社の女たち』(94年,朝日新聞社),『ワークシェアリングの実像』(02年,岩波書店),『ルポ 雇用劣化不況』(09年,岩波新書.日本労働ペンクラブ賞)などのほか,『「家事の値段」とは何か』(共著,99年,岩波ブックレット),『女性を活用する国,しない国』(10年,同前),『ミボージン日記』(10年,岩波書店),『ルポ 賃金差別』(12年,ちくま新書)など多数.09年,貧困ジャーナリズム大賞受賞.

書評情報

毎日新聞(夕刊) 2013年7月23日
あすてらすネットワーク 情報Market〔島根〕   第27号(2012年11月)
若い人に贈る読書のすすめ 2013年版
図書館教育ニュース 2012年9月18日号〔付録〕
毎日新聞(朝刊) 2012年7月22日
朝日新聞(朝刊) 2012年7月15日
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