生物とコラボする

バイオプラスチックの未来

もっと地球にやさしい材料がほしい

生物とコラボする
著者 工藤 律子
通し番号 ジュニア新書 759
ジャンル 書籍 > 岩波ジュニア新書 > 生物・化学・環境
刊行日 2013/11/20
ISBN 9784005007592
Cコード 0243
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 222頁
定価 1,012円
在庫 在庫あり

植物で自動車をつくる,クモの糸を人工的につくる,ミドリムシからプラスチックをつくる.そんな夢の実現に向けて研究をつづける科学者たち.大学や企業などで開発が進む地球環境にやさしい技術は,けっして未来のものではなく,すでに実用化されているものも多い.生物と人間が切りひらく新しい材料の現在と未来を紹介する.[カラー口絵8頁]

■内容紹介
 工藤さんが大学生のころ,お父さんがお椀形のモナカの皮のようなものを家に持って帰ってきました.「それ,お皿?」とたずねると,「デンプンでつくったプラスチックのお皿だ.だから,食べられるんだ」と答えてくれました.企業の研究所で新製品の研究開発をしているお父さんが,自分でつくったものでした.植物からつくったプラスチックなので,バイオプラスチックですね.
 再生産が可能な植物や動物からつくるプラスチックなら,資源の面でも環境の面でも文句のつけようがありません.だから,早く実用化と普及が進んでほしい材料なのです.それから30年たったいま,バイオプラスチックの実用化や普及はどこまで進んだのでしょうか?
 気がつかないうちに,身のまわりにたくさんありました.窓つき封筒の窓部分,生ゴミ用袋,クリアホルダー,紅茶や緑茶のティーバッグ,コピー機の部品,携帯電話の部品,…….
 でも,まだまだです.石油からつくられるプラスチックが圧倒的なのです.バイオプラはコスト面や材質面で,まだ主流にはなっていませんから.
 しかし,バイオプラには希望があります.えっ,こんなものからも?と言えるものが,つぎつぎに見つかる可能性があるからです.最近では,樹木の構成物質であるリグニンや,ミドリムシからの合成に成功しています.これまで邪魔者として廃棄・焼却処分されてきたリグニンに目をつけた舩岡正光・三重大学教授は,「相分離系変換システム」という方法を考えだし,木粉からリグニンを分離し,構造変化させ,利用できるものにしたのです.どんなものになったか,何に使えるかは,この本を読んでください.なんと,これをボディーに使った試作車ができていました!
 お父さんのつくったデンプン皿への興味をよみがえらせた工藤さんが,バイオプラスチックを研究・開発している科学者たちを訪ね,話を聞きとり,まとめたのがこの本です.タイトルの「生物とコラボする」社会は,現実性のある夢に満ちています.

1 なぜ,デンプンからプラスチックなの?
2 土に還るプラスチックをつくる
3 トウモロコシとコラボする
4 ミドリムシとコラボする
5 酵素とコラボする
6 樹とコラボする(1)
7 樹とコラボする(2)
8 生物とコラボする未来
工藤律子(くどう・りつこ)
1963年生まれ.ジャーナリスト.NGO「ストリートチルドレンを考える会」代表.スペイン語圏,アジアをフィールドに取材活動をする.著書に『ストリートチルドレン』(岩波ジュニア新書),『仲間と誇りと夢と』『家族と生きる意味』(ともにJURA出版局),『リゴベルタの村』(講談社),『ドン・キホーテの世界をゆく』(論創社)など.
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