心は前を向いている
多くの心理学実験から心の基本設計が見えてきた
三か月児から大人までを対象とした多くの心理学実験が,人の心の基本設計をどう描きだしているのだろうか.信頼,想像,錯覚,がまん,疲労,悲しみなどのキーワードごとに,実験を通して心の向き方を解説していきます.後ろ向きになりやすく,ネガティブな感情にも役立つ機能があることから,前を向くための秘訣は?
■内容紹介
今日はむちゃくちゃポジティブだぞと感じているとき,なぜか大きな失敗をしてしまった――そんな経験をした人は多いと思われます.肝心のことに気づかなかったり,判断を誤ったり,などです.
逆に悲しい気分のとき,冷静にものごとを判断したり,うそを見破れたり,大切なことをしっかり覚えておいたりできた――そんな経験を味わった人も多いでしょう.
そうなんです.悲しい気分はけっこう役に立つことが,心理学の実験からわかっているのです.さらに,喜びと悲しみを同時に感じるミクスト・エモーション(混合感情)も,幸福感を高くするのにつながっているようです.
それらがどんな実験から導けるのかは,この本を読んでいただくとわかります.でも,自分の体験からも「そうだ,こんなことがあったなあ」と実感ができることが,あちこちに書いてあります.気づいたこと(自分の体験)を書いていくのも,本の記述内容を自身の体験と重ねていくことになり,おもしろいかもしれません.
錯覚することも,がまんすることも,前を向く力になっているんだとわかれば,日々を生きていく勇気がわいてきます(ちょっとオーバーかな).ただし,疲労だけはダメそうですから,早く体や頭を休めて,回復させてくださいね.
2 想像する力
3 錯覚する力
4 前を向く脳
5 がまんする力
6 疲労は大敵
7 悲しむ力
8 希望の力
【やってみよう!】 透明性の錯覚/二人の認識のずれ/記憶テスト/潜在連合テスト/ミクスト・エモーション/思いやりのワーク/未来からの手紙
【考えてみよう!】 平均以上効果/気持ちの対処法/あなたのリスクは?/反実思考/先延ばし傾向/自分の好きな物語を見つける
【読んでみよう!】 八木重吉の詩
1970年生まれ.大阪大学大学院博士後期課程修了.人間科学博士.現在,関西大学文学部教授.専門は臨床心理学.著書に『悩みとつきあおう』(岩波ジュニア新書),『共感する心の科学』『協力する心の科学』『セルフケア24のアプローチ』(以上,風間書房),『自分をみつめる心理学』(北樹出版)などがある.