岩波ジュニア新書

新・東海道 水の旅

東海道は水の豊かさを感じられる道だ.でも,新幹線が渡る大井川などにほとんど水がないのはなぜ? ダムや河口堰の役割は?

新・東海道 水の旅
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著者 浦瀬 太郎
通し番号 ジュニア新書 806
ジャンル 書籍 > 岩波ジュニア新書 > 趣味・旅行
日本十進分類 > 自然科学
刊行日 2015/05/20
ISBN 9784005008063
Cコード 0244
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 220頁
定価 本体840円+税
在庫 在庫あり

東海道は水の豊かさを感じられる道だ.新幹線は多摩川・天竜川・木曽川はじめ多くの川を渡るが,富士川や大井川にはほとんど水がない.いったいなぜなのだろう? 一方,汚れた廃水を出す工場も少なくなり,水質は確かによくなった.でも,工場がなくなることはいいのだろうか? ダムや河口堰の役割や問題点も考えてみたい.

 

■内容紹介

 歌川広重の描いた『東海道五拾三次』を見ると,水の風景の多さに驚きます.なかでも,多摩川にはじまり,酒匂川,安倍川,大井川,天竜川,矢作川など,川の多いこと.渡り方も,舟,橋,水の中を徒歩と多様で,現在のすべて橋で渡るのとくらべて,なかなかの風情です.
 東海道新幹線は,東京-名古屋間は基本的に海近くを走りながら多くの川を渡り,名古屋-大阪間も木曽三川,琵琶湖,淀川と水を見ながら走ります.しかも,東京,横浜,名古屋,京都,大阪の大都市をはじめ,沿線には都市も工場もたくさんありますから,水道の水をどこから取って,どのように使っているか,下水はどこでどんなふうに処理しているか,川や湖の水質はどうか,など気になる点がいっぱいです.
 気になる話題を2,3点,紹介しておきます.大阪市の淀川が分かれて流れる安治川や木津川の河口付近には,8本の渡船が運航されています.私たちが取材した天保山渡船は,桜の名所・天保山公園からUSJのある対岸に向けて安治川を渡り,10人ほどの外国人が自転車で乗りこみ,おそらくUSJに向けて,さっそうと走っていきました.河口近くの水面と空がつながり,気持ちのいい場所でした.
 一方,東京・渋谷付近を流れる渋谷川.渋谷付近の川には水がまったくありません.そしてその河口付近,ここでは名前を古川と変えていますが,水がなかなか見えません.まわりを鉄製の高い網で囲われ,さらに水面のすぐ上を高速道路が走っているのです.この狭く押しこめられた川は,いったい何のためにあるのだろう?と考えこまざるをえません.大阪の安治川河口とくらべて,なんとかわいそうな川なのでしょう.
 地理の時間に,輪中(わじゅう)という用語を学んだ人も多いと思います.私もこれは歴史上の言葉で,いまは残っていないと思っていましたが,なんと1976年9月の岐阜県豪雨災害のおりに,輪中を囲む堤防(輪中堤)が水の浸入を見事に食い止めたという記録と空撮写真があり,その輪中堤がいまも残っていたのです.これには感激しました.
 昔の人たちの努力や工夫が,いまにも通用するものがたくさんあるし,意外に残っている.そんなことを認識・発見させてもくれる,東海道水の旅です.本書を読んで,興味をもったところがあれば,ぜひ現地へ出かけてみてください.
1 東京から新横浜へ
 1・1 のぞみ号で出発/1・2 芝浦から呑川へ/1・3 多摩川
2 新横浜から富士川へ
 2・1 相模川/2・2 酒匂川から新丹那トンネル/2・3 富士山の湧水と富士川
3 富士川から名古屋へ
 3・1 静岡近郊の川/3・2 天竜川/3・3 浜名湖から三河湾/3・4 名古屋
4 名古屋から京都へ
 4・1 木曽三川/4・2 琵琶湖東岸/4・3 環境規制と環境ビジネス
5 京都から新大阪へ
 5・1 京都の水/5・2 淀川を下る
浦瀬太郎(うらせ たろう)
1967年京都市生まれ.東京工科大学応用生物学部教授.専門分野は,上下水道,環境化学,環境水質学.東京大学工学系研究科都市工学専攻博士課程修了.著書に『明解 環境水質学』などがある.

書評情報

サンデー毎日 2015年7月5日号
週刊新潮 2015年7月2日号
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